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Amazonが公共の図書館に及ぼしている悪影響とは?


世界中で電子書籍を取り扱う図書館が増えており、中には紙の本を1冊も置いていない図書館も存在します。しかし、ワシントン・ポストのテクノロジー関連コラムニストであるジェフリー・ファウラー氏は、「Amazonが出版する電子書籍は図書館で扱えない」と指摘。Amazonが図書館に及ぼしている影響について解説しています。

Amazon’s monopoly is squeezing your public library, too - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2021/03/10/amazon-library-ebook-monopoly/

近年、図書館に電子書籍やオーディオブックなどのデジタルコレクションが収蔵されるようになっています。ファウラー氏によると、アメリカでは、都市部と農村部の両方でデジタルコンテンツを提供する図書館が増加し、2018年の時点で、アメリカの約90%の図書館がオンラインコンテンツを提供していたとのこと。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、実際に図書館に赴く機会が減少した結果、2020年の電子書籍やオーディオブックの貸出件数は40%以上増加しています。


ファウラー氏は、アメリカの人気女優ミンディ・カリング氏が書いた電子書籍を借りるべく、多くの図書館が採用する電子書籍貸出しアプリ「Libby」を用いてタイトルを検索しましたが、目当ての書籍は検索結果に表示されませんでした。ファウラー氏は、カリング氏が出版元をAmazonに切り替えた事が原因だと考え、他のAmazonが出版する書籍も検索してみたところ、Amazonから出版されている書籍は、Libbyでは扱われていないことが判明しました。

Amazonは書籍出版部門「Amazon Publishing」を保有しており、ミステリー小説を扱う「Thomas & Mercer」やロマンス小説を扱う「Montlake」、SF小説を扱う「47North」など、多くのレーベルを展開しています。

しかし、これらのレーベルから出版された電子書籍は全て図書館では提供されていません。この状況についてファウラー氏は「パンデミックにより、図書館に通う機会は失われているため、電子書籍貸出サービスは非常に重要です。しかし、Amazonは子どもや好奇心旺盛な人、貧しい人々が読書する機会を奪っています」と述べ、Amazonを強く批判しています。


Amazonは2020年12月に、図書館での電子書籍の利用に関する技術を開発する非営利団体「米国デジタル公共図書館(DPLA)」に対して、電子書籍を販売する交渉を行っていることを発表しました。しかし、ファウラー氏は「アメリカの多くの図書館が利用するLibbyの開発元『OverDrive』との交渉は行われていません。今回の交渉は、ほとんどの図書館では役に立たないでしょう」と述べています。

さらに、ファウラー氏がOverDriveのスティーブ・ポタッシュCEOにコメントを求めたところ、ポタッシュCEOは「私たちは、Amazon Publishingと継続的な対話を行っています。しかし、DPLAのように運用の詳細まで話し合うことはできていません」と回答したとのこと。


ファウラー氏は、Amazonが出版する電子書籍が図書館で提供されない状況は、テクノロジー企業の独占が市民の権利を損なっていることを示している例だと指摘しています。ファウラー氏によると、独占による害の指標として「消費者が支払う価格が上昇しているかどうか」という視点がよく用いられるとのこと。GoogleやApple、Facebook、Amazonといった巨大テクノロジー企業は、サービスを低価格または無料で提供することで、独占による害はない主張しています

しかし、ファウラー氏は「私たちは、価格に敏感な消費者であると同時に、公平に製造され、流通する製品を求める市民でもあります」と指摘。2020年後半に、司法当局が「Googleが検索及び検索広告市場において独占状態を違法に維持している」としてGoogleを提訴したことを例に挙げ、市場には公平性が求められると主張しています。

Googleが「独占禁止法違反」で司法省から提訴される - GIGAZINE


ファウラー氏がAmazonに対してコメントを求めたところ、Amazon Publishingに所属するMikyla Bruder氏から「現在の図書館の電子書籍貸出モデルでは、書籍の著者と図書館利用者の利益のバランスを保つことができません」「この状況は、図書館のユーザーにサービスを提供するのと同時に、著者の利益を確保するためのアプローチを考えるいい機会だと考えています」という内容の電子メールを受け取ったとのこと。ファウラー氏は「Amazonは図書カードに代わりにクレジットカードを求めています」と締めくくっています。

コミュニティサイトSlashdotには、自らが執筆した紙の書籍、電子書籍、オーディオブックがAmazonから出版されていると語る人物が、ファウラー氏の主張を受けて、「自分の執筆した電子書籍が図書館で扱われていないなんて知りませんでした。Amazonとの付き合い方を考える必要があります」と投稿しています。

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in ネットサービス, Posted by log1o_hf

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