地球の環境に最も優しいペットボトルの容量とは?
プラスチックの一種であるポリエチレンテレフタラート(PET)を原料として製造されるペットボトルは、ジュース・お茶・炭酸飲料・調味料・お酒などさまざまな液体の容器に使用されています。PETは自然の力で分解することが難しく、プラスチック容器の消費によって発生する膨大なプラスチックゴミが問題視されていますが、そんな中で「最も環境に優しいペットボトルの容量」を調査した研究結果が科学誌のScientific Reportsに掲載されています。
Beverage bottle capacity, packaging efficiency, and the potential for plastic waste reduction | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-021-82983-x
Plastic bottles holding 2.3 litres are least harmful to the planet | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2269358-plastic-bottles-holding-2-3-litres-are-least-harmful-to-the-planet/
Which plastic bottle size is worst for the environment? Study reveals a surprising answer
https://www.inverse.com/science/which-bottle-size-to-choose
ペットボトルはリサイクル可能な材料として知られているものの、実際に廃棄された全てのペットボトルがリサイクルされるわけではなく、毎年かなりの量が埋め立て地に送られています。アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)の推定によると、アメリカにおけるペットボトルのリサイクル率は29.1%に過ぎず、残りの70%近くが埋め立てられているとのこと。
ペットボトルを含めたプラスチック廃棄物は地球環境に重大な影響を与えているため、多くの科学者らがプラスチック廃棄物の問題に取り組んでいます。そこでアメリカ・サウスカロライナ大学でマーケティングを研究するRafael Becerril-Arreola助教授は、PET廃棄量の削減はPETの使用量当たりのペットボトルの内容量を最大化することで実現できると考え、「さまざまなサイズのペットボトルの重量を測定して、最も重量当たりの内容量が大きいサイズを割り出す」という研究を行いました。
Becerril-Arreola氏の研究チームは、主流の飲料ブランドが販売する多様な容量のペットボトルを187本集め、特定のボトルが使用するPETの重量を測定しました。測定の結果、16オンス(約473ml)未満の小型ボトルは、16~100オンス(約473~2957ml)の中型ボトルや100オンス以上の大型ボトルと比較して、明らかに容量当たりのPET重量が重いことが判明。さらに、最も容量当たりのPET重量が軽いボトルの容量は「2.3リットル」であることもわかったと研究チームは述べています。
この結果についてBecerril-Arreola氏は、ペットボトルの基本的なデザインが関係していると指摘。全てのペットボトルはキャップ周りの機構が共通しており、この部分の重量は全体の容量に関係なくほぼ一定です。この部分には飲料自体も含まれていないため、一般的に大きなボトルよりも小さなボトルの方が容量当たりの重量が大きくなってしまうとBecerril-Arreola氏は説明しています。また、大型のボトルになるとペットボトルの形状も重量に耐えうるように変化するため、中型ボトルの方が大型ボトルよりも効率的であることも判明しました。
なお、ペットボトルの重量を決定する要因としては、容量が80%、製品カテゴリー(炭酸飲料・非炭酸飲料・ジュースなどの飲料)が16%ほど関わっており、容量当たりのPET使用量はジュース>炭酸飲料>非炭酸飲料の順で多いそうです。
また、研究チームは州政府がPET廃棄物の量を収集・公開し、ペットボトル飲料の消費量がアメリカ平均と近いミネソタ州のデータを分析し、ペットボトル飲料の売上とPET廃棄量の比較を実施。すると、中型ボトルの売上が多い時期はPET廃棄量が少なく、小型ボトルの売上が多い時期はPET廃棄量が多い傾向も確認されたとのこと。
次に研究チームはPET廃棄量に関する全国的なデータを使用して、「小型ボトルの売り上げの20%が中型ボトルにシフトした」というシナリオで、1年間でどれほどのPET廃棄量が削減できるのかをシミュレーションしました。その結果、小型ボトルの売上が中型ボトルの売上に替わっただけで、年間およそ9000トン近くのPET廃棄物が削減される可能性があると示されました。
近年では「砂糖の過剰摂取が人々の健康をむしばんでいる」との考えから、公衆衛生当局はペットボトルの大きさを小さくすることを検討しています。しかし、今回の研究結果は小さなペットボトルの消費量が増えると地球環境への悪影響が増すことを示唆しており、将来的な地球環境も見据えた解決策が求められるとのことです。
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