中国がWHOの新型コロナ調査団に対して未編集データの引き渡しを拒否
新型コロナウイルスの起源を探るために武漢市を訪れていた世界保健機関(WHO)の調査団に対し、中国当局が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に最も早期に感染した患者の生データの提供を拒否しました。
China refused to provide WHO team with raw data on early COVID cases, team member says | Reuters
https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-who-china/china-refused-to-provide-who-team-with-raw-data-on-early-covid-cases-team-member-says-idUSKBN2AD090
White House cites 'deep concerns' about WHO COVID report, demands early data from China | Reuters
https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-usa/white-house-cites-deep-concerns-about-who-covid-report-demands-early-data-from-china-idINKBN2AD0FX
China refused to hand over key data to WHO team probing pandemic’s origin | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/02/china-refused-to-hand-over-key-data-to-who-team-probing-pandemics-origin/
複数の調査団メンバーによると、調査団は武漢市で感染が拡大し始めた2019年12月に確認された症例174件に関する生データを要求しましたが、中国当局はこれを拒否し、問題の症例に関する分析結果のみを提供したとのこと。
中国が提供を拒否した生データは「ラインリスト」と呼ばれるもので、個々の患者に医師がどのような質問を行ったか、それに対して患者がどのように返答したか、その回答を医師がどのように分析したかといった詳細を含むもので、アウトブレイク調査の際にはこのラインリストの引き渡しが標準的な慣行となっています。
最初期の症例174件はおよそ半数が新型コロナウイルスの感染源とされる武漢華南海鮮卸売市場で確認されたものですが、残り半数は同市場以外で確認されたものでした。調査団のドミニック・ドワイヤー氏は「問題の市場以外のデータこそ我々が求めているものです。なぜ中国当局が引き渡しを拒否したのか、私には理解できません。政治的な理由なのか、時間的な理由なのか、単に困難という理由なのか、そのほかに理由があるのか……、いずれにせよ憶測です」とコメントしています。
また、調査自体の経緯も改めて問題視されています。調査団は調査期間を4週間と定めて2021年1月に中国入りしましたが、最初の2週間は隔離措置としてホテルにとどまることを強制されました。調査がスタートしてからも、訪問を許されたのは中国当局が許可した施設のみといった状況でした。
これについてドワイヤー氏は「生データを提供しなかった問題は最終報告書に記載するものの、中国側が前年よりもはるかに多くのデータを引き渡した点は事実であり、それ自体は進歩といえます」とコメントしています。
今回の経緯について、アメリカのサリバン国家安全保障担当大統領補佐官は「WHOの報告書は中国政府からの干渉や改変が及ばない独立した調査であるべきです。新型コロナウイルスの流行について理解を深め、次の危機に備えられるよう、中国は流行初期のデータを提供すべきです」と述べ、今回のWHO調査について深い懸念を表明。これに対し中国大使館は「アメリカは近年、多国間協力を拒否してWHOに損害を与えており、COVID-19の世界的流行に際してWHOを支援した中国やその他の国を名指しで非難すべきではありません」と強く反発しました。
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