2021年01月05日 17時00分ハードウェア

18兆円超の資金を半導体製造に投入する共同宣言にEU加盟国が署名

半導体設計および製造エコシステムにおけるヨーロッパの地位を確立するための大きな推進力として、17のEU加盟国が「次世代の信頼できる低電力組み込みプロセッサ」および「高度なプロセス技術の開発」に協力することを約束する共同宣言に署名しました。この共同宣言は、半導体製造におけるプロセスルールが「2nm」に到達するまで続くこととなり、署名したEU加盟国は今後2～3年で最大1450億ユーロ(約18兆円)の資金を半導体製造に投入することとなります。

EU Signs €145bn Declaration to Develop Next Gen Processors and 2nm Technology - EE Times Europe
https://www.eetimes.eu/eu-signs-e145bn-declaration-to-develop-next-gen-processors-and-2nm-technology/

EUの政策執行機関である欧州委員会は、自動車や医療機器、携帯電話、スマートデバイスなどに搭載されるプロセッサを開発する最先端の半導体技術が非常に重要なテクノロジーであることを理解していると述べ、この分野においてヨーロッパが高い競争力を維持できるように、半導体製造に関する共同宣言を発表しました。

この共同宣言には17のEU加盟国が署名しており、これにより半導体のバリューチェーンに沿って機器や材料、設計、製造、パッケージングへの協力を強化し、同分野への投資を増やしていくことを目的としているとのこと。EU加盟国による共同宣言では最大1450億ユーロの投資が検討されており、投資資金はEUが新型コロナウイルスからの復興支援を行うために設立した「Recovery and Resilience Facility」から支払われることとなる予定です。

なお、共同宣言から資金援助を受けるにはEU加盟国が産業関係者を導入し、「Important Project of Common European Interest(IPCEI：欧州共通利益に適合する重要プロジェクト)」に基づいて野心的なプロジェクトを提案する必要があります。

IPCEI経由で半導体製造に関するプロジェクトを立案する場合、2nmプロセスの製造技術が確立するまでの高度なロードマップを立案する必要があります。欧州委員会でインターネット市場のコミッショナーを務めるティエリー・ブルトン氏は、「ヨーロッパの産業戦略とデジタル主権において、高度なプロセッサチップがこれまで以上に重要な役割を担うこととなるため、今回の共同宣言は既存の強みを活用し、新しい機会を受け入れることに役立ちます」と語りました。

共同宣言では「ヨーロッパのチップメーカーは、自動車や工業用の組み込みシステムなどの垂直市場で強力な存在感を示しています。また、ヨーロッパは5Gとその次の6G関連技術を含むモバイルネットワークにおける強力な技術的地位を持っています」と、ヨーロッパがデジタル市場において確かな地位を確立していることがアピールされています。一方で、世界の半導体市場は4400億ユーロ(約56兆円)の規模を誇っているにもかかわらず、ヨーロッパのシェアはわずか10％程度と、想像以上に少ない点も挙げられました。「ヨーロッパは電子通信やデータ処理分野におけるプロセッサや、計算タスクに使用されるチップにおいて、世界の他の地域で生産されたチップにますます依存しています」と共同宣言には記されており、ヨーロッパの半導体市場に欠けている点が指摘しています。

そのため、共同宣言では「ヨーロッパでネットワークの高速接続や自動運転車、航空宇宙、健康および農業食品向けアプリケーションなどに提供される『次世代の信頼できる低電力プロセッサ』を設計し、最終的に製造する能力を強化することに協力します。人工知能やデータセンター、シリコンフォトニクス、スーパーコンピューター、量子コンピューティング、その他のイニシアチブの中においても先進的なプロセッサはバリューチェーン全体を強化するのに役立ちます」と記されています。