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「.org」ドメインはなぜ管理会社ごと身売りされずに済んだのか?


非営利団体を対象とする「.org」ドメインは、 Internet Society(ISOC)傘下のレジストリであるPublic Interest Registry(PIR)によって管理されており。2019年になって唐突にレジストリごと投資会社に身売りされそうになる騒動が起きました。この騒動は2020年5月にドメインデータベースの維持管理を行うInternet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)が売却を拒否したことでひとまず落ち着いたといえる状況となりました。PIRと「.org」ドメイン売却に反対していた非営利団体の電子フロンティア財団(EFF)が、一連の騒動が沈静するまでを振り返っています。

How We Saved .ORG: 2020 in Review | Electronic Frontier Foundation
https://www.eff.org/deeplinks/2020/12/how-we-saved-org-2020-review


2019年7月に、ICANNと「.org」ドメインのレジストリだったPIRが契約更新を行った際に、「.org」ドメイン登録価格の上限撤廃が盛り込まれたことが事の発端となりました。「.org」ドメインの登録料が値上がりすると、多くの非営利団体に大きな影響を与えるため、この判断を批判する声が多く挙がりました。

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そして、2019年11月にPIRが「.org」ドメインの管理権ごと投資会社のEthos Capitalに売却されることが判明。PIRがなぜ売却されることになったのかについては、「PIRの母体だったISOCの収益の安定化のため」と説明されました。

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この売却計画に対して反対署名活動がスタート。EFFやウィキメディア財団、クリエイティブ・コモンズ、インターネット・アーカイブなどの800以上の非営利団体や2万7000人以上のコミュニティ有志が署名しました。

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そしてICANNの財務状況が精査された結果、Ethos CapitalがPIRを購入するために11億3500万ドル(約1200億円)を支払い、その3分の1近くはローンで賄われていることをつきとめました。PIRの価格があまりにも安すぎることから、このPIR売却取引には不審な点があると指摘されていました。

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コミュニティからの反対意見やさまざまな指摘を受けて、2019年12月にICANNが売却取引を30日保留すると発表。さらに事態を重く見たカリフォルニア州検事総長が2020年1月にICANNへ情報照会令状を送り、この手続きの都合により、売却交渉の期限が2020年4月下旬までずれ込みました。

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その後、2020年4月30日に、ICANNは「PIRをISOCからEthos Capitalに売却することへの同意に拒否することは合理的で、正しいことであると判断しました」「3番目に大きいgTLDレジストリの将来に許容できないレベルの不確実性をもたらすさまざまな要素があり、公共の利益を守るためには売却に同意しない方がいいと判断しました」と述べ、売却を却下したしたことを明らかにしました。EFFは再度同じことが起こらないように、ICANNに対して交易のコミットメントに関するポリシーを再検討するように要求しています。

EFFは、PIRの売却を阻止したのは、Ethos CapitalとPIRが何か契約を進めようとするたびに、非営利団体が大きな声を挙げて反応し、阻止しようと努めたからだと述べました。また、ICANNへ公開書簡を書いた検事総長や議会議員の働きかけも大きかったと述べています。EFFのシニア・アクティビストであるエリオット・ハーモン氏は「私は成人してから人生のほとんどを非営利団体の中で働いてきましたが、非営利団体で何に対しても満場一致で反応するのを見たことがありませんでした」と述べ、これまでにないレベルで非営利団体やコミュニティの有志が一体となってPIR売却反対活動に努めたことを高く評価しました。

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in ネットサービス, Posted by log1i_yk

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