アメリカで制定される「重罪ストリーミング法」と「CASE法」は一体何がヤバいのか?
アメリカの連邦議会が2020年12月21日に、9000億ドル(約93兆円)規模の新型コロナウイルス対策の追加経済刺激策と1.4兆ドル(約144兆6690億円)規模の包括的歳出法案の草案を打ち出しました。この草案に含まれている、著作権保護を主な目的とした2つの法律に対し、複数のニュースメディアから懸念の声が上がっています。
Congress (Once Again) Sells Out To Hollywood: Sneaks CASE Act And Felony Streaming Bill Into Government Funding Omnibus | Techdirt
https://www.techdirt.com/articles/20201221/09573745928/congress-once-again-sells-out-to-hollywood-sneaks-case-act-felony-streaming-bill-into-government-funding-omnibus.shtml
Sweeping new copyright measures poised to pass in spending bill - The Verge
https://www.theverge.com/2020/12/21/22193976/covid-relief-spending-congress-copyright-case-act-felony-streaming
The COVID-19 Stimulus Bill Would Make Illegal Streaming a Felony | Hollywood Reporter
https://www.hollywoodreporter.com/thr-esq/the-covid-19-stimulus-bill-would-make-illegal-streaming-a-felony
アメリカ下院が12月21日に、新型コロナウイルス感染症対策の救済措置などを含む総額2.3兆ドル(約237兆6797億円)規模の(PDFファイル)法案を発表しました。この法案について、ニュースサイトのAxiosは「下院が発表した法案は、ホリデーシーズン前に議会を通過させるべく22日には決議に付されるため、資料が合計5593ページに及び金額の上でもアメリカ史上最大級の経済政策パッケージを議員らが検討するための時間は、わずか数時間しかありません」と述べて、議論の拙速さを指摘しました。
また、法案の内容も物議を醸しています。法案の中に含まれている「適法ストリーミング配信保護法(Protecting Lawful Streaming Act)」には最大10年の懲役刑が規定されており、批判的な立場の人は法案を「重罪ストリーミング法案(Felony Streaming Bill)」との通称で呼んでいます。
IT系ブログTechdirtは、この法案の問題点について「これには『なぜ刑事罰が科されるのか』という大きな問題があります。ハリウッドのような著作権者は、著作権侵害に対して民事問題として訴えを起こすのに十分な権利と資金力をすでに持っています。しかし、この法律によりアメリカの納税者のお金で違法ストリーミングに対処しなければならなくなります」と指摘。実質的にハリウッドに対する巨額の補助金であると非難しています。
また、適法ストリーミング配信保護法にはTwitchなどで行われるゲーム配信にも大きな影響を与えることが危惧されているとのことです。
もう1つの法案である「少額執行法における著作権代替措置(Copyright Alternative in Small-Claims Enforcement:CASE法)」にも注目が集まっています。CASE法は、個人のアーティストなどが簡便な手続きで著作権侵害の訴えを行えるようにする法律ですが、訴訟の敷居が低くなることで権利が乱用されるおそれがあるとの見方もあります。
非営利のデジタル著作権擁護団体であるFight for the Futureのエバン・グリア氏は、IT系ニュースサイトThe Vergeに対して「CASE法は、インターネットミームのような日常的なオンライン活動に多額の罰金が科されることにつながる、恐ろしい法律です。このような条項を、議会の通過が決まっている法案に盛り込むのは不条理と言えます」とコメントして、懸念を表明しました。
こうした批判を踏まえて、Techdirtは「法律の小さな変更は時に大きな影響を及ぼし、その影響は人々の表現能力にも波及します。そのような結果を招きかねない2つの法案が、こんな形で制定されようとしているのはまったくの茶番であり、国民を犠牲にしてハリウッドに尻尾を振っているものだと言えます。人々はこのことに抗議し、法案に同意した与野党の指導者に責任を問うべきでしょう」と述べました。
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