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熱気球で世界中にインターネットを提供するGoogle発の「Loon」プロジェクトが大きく飛躍、その勝因とは?


世界にはインターネット接続が行えない場所が多く残されており、そんな場所にもインターネット環境を提供すべくSpaceXが「Starlink計画」で人工衛星を打ち上げたり、Facebookが「2Africa」で海底ケーブルを設置しようとしたりしています。Googleは「熱気球」でインターネット環境を提供する「Project Loon」を2015年から続けていますが、強化学習を利用したAIの開発により、プロジェクトが大きく前進したと発表されました。

Autonomous navigation of stratospheric balloons using reinforcement learning | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2939-8

Drifting Efficiently Through the Stratosphere Using Deep Reinforcement Learning | by Salvatore Candido | Loon Blog | Dec, 2020 | Medium
https://medium.com/loon-for-all/drifting-efficiently-through-the-stratosphere-using-deep-reinforcement-learning-c38723ee2e90

Googleは熱気球を飛ばしてインターネット環境を提供しようという試みを2015年から続けていますが、熱気球は気候の変化や起伏の多い地形の影響を受けて進路が変わりやすく、地上の基地局から一定の距離内に熱気球を飛ばし続けることは至難の業でした。


そこで、Loonの開発チームは気球の進路を一定に保つのに役立つ「StationSeeker」というアルゴリズムを開発。チームはシミュレーションを使用して熱気球を操作する方法を飛行制御システムに教えたとのこと。

StationSeekerは深層強化学習を利用していますが、「当初、成層圏を長期にわたって自律的に漂流する高高度プラットフォームに対して、深層強化学習が実用レベルで利用可能かはわかりませんでした」とLoonの最高技術責任者であるSal Candido氏は述べています。強化学習は試行錯誤を通してコンピューターに学習させる手法であり、Loonでは「どのような意志決定を行うか」という部分に焦点を当てています。

その後、実験を繰り返したところ、StationSeekerはさまざまな高度での風速と風向を正しく予測し、予測に応じて気球の高度を調整可能であることが判明しました。


「インターネットを必要とする人々の上空に熱気球のネットワークをとどまらせることは本当に困難なことです。強化学習は、『気球がどのような状況にあるか』『とどまるためにはどのくらいのエネルギーが必要か』『手に携帯電話を持った人の上で熱気球が行う最善の選択は何か』ということを私たちのために決断してくれました」とCandido氏はコメントしています。

確実な信号の送受信を行うためには、熱気球から地上の基地局から30マイル(約48km)以内にとどまる必要がありますが、新たなアルゴリズムにより、熱気球は以前より長く接続を保ちながら、正しい座標に戻れるようになったとのこと。


2020年10月にLoonは過去最高の312日にわたる連続飛行を行いましたが、これはStationSeekerのおかげだそうです。

あらゆる場所にネット環境を提供する気球を飛ばすプロジェクト「Loon」が連続飛行312日で新記録樹立 - GIGAZINE


これまでLoonのチームは手動でアルゴリズムを設計していましたが、StationSeekerはそれをしのぐパフォーマンスだとCandido氏は述べています。StationSeekerはこの種のAIシステムとしては商用航空宇宙システムで初めて展開されたものであり、「強化学習が継続的・動的な活動を行う複雑な現実世界のシステムをコントロールするために有益であることを示す証拠になる」と考えられています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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