ハードウェア

日本のスパコン「富岳」が4つの世界ランキングで2期連続1位に輝く


日本のスーパーコンピューター「富岳」が、スーパーコンピューターの性能を競う世界ランキング「TOP500」「HPCG」「HPL-AI」「Graph500」の4つでトップの座を獲得しました。富岳は、前回開催された同じランキングでも首位を総なめしていますが、今回はハードウェア・ソフトウェア両面での強化を武器に、2位に大差を付けてのランクインを果たしたとのことです。

スーパーコンピュータ「富岳」TOP500、HPCG、HPL-AI、Graph500にて2期連続世界第1位を獲得 : 富士通
https://pr.fujitsu.com/jp/news/2020/11/17.html

スーパーコンピュータ「富岳」TOP500、HPCG、HPL-AIにおいて2期連続の世界第1位を獲得 | 理化学研究所
https://www.riken.jp/pr/news/2020/20201117_2/index.html

The Many Facets Of Hybrid Supercomputing As Exascale Dawns
https://www.nextplatform.com/2020/11/16/the-many-facets-of-hybrid-supercomputing-as-exascale-dawns/

Top500: Fugaku Keeps Crown, Nvidia's Selene Climbs to #5
https://www.hpcwire.com/2020/11/16/top500-fugaku-keeps-crown-nvidias-selene-moves-up-to-5/

理化学研究所(理研)富士通が共同で開発した日本のスーパーコンピューター「富岳」は、2020年6月に4つの世界ランキングで1位を獲得。前任の「」が2011年に首位を獲得して以来、およそ8年半ぶりに世界でもっとも優れたスーパーコンピューターの座に躍り出ました。

日本のスーパーコンピューター「富岳」が4つの世界ランキングで1位を獲得 - GIGAZINE


そして新たに、11月17日にオンラインで開催された国際会議「SC20」で、「富岳」が前回と同様に「TOP500」「HPCG」「HPL-AI」で首位を維持したことが発表されました。また、同時期にGraph500 Committeeから、富岳が「Graph500」で1位になったことが報じられました。

「富岳」は、今回発表された世界のスーパーコンピュータの性能ランキング「TOP500」に挑むにあたり、CPU数を前回の729万9072コアから763万848コアに増設。さらに、システム上のソフトウェアスタックも調整され、より効率的に演算が行えるようになりました。その結果、LINPACKスコアは前回の415PFLOPSを上回る442PFLOPSを記録し、前回に引き続きトップの成績を示しました。これは、第2位にランクインしたアメリカのスーパーコンピューター「Summit」のスコアである148PFLOPSを大きく引き離しており、約3倍の性能差をつけたことになります。


「富岳」はまた、産業利用など実際のアプリケーションでの処理速度を計測する「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」や人工知能(AI)の深層学習に関する性能を測る「HPL-AI」でも、それぞれ2位に比べて5.5倍と3.6倍の差をつけて優勝しました。さらに、大規模グラフ解析に関するスーパーコンピュータの国際的な性能ランキングである「Graph500」でも首位でした。これにより、「富岳」は主要なスーパーコンピューターの性能ランキング4つすべてで2期連続1位の獲得を果たしました。


また、「富岳」は「TOP500」のベンチマーク値を消費電力で割った結果のランキングであるGreen500でも10位に入賞し、効率面でも健闘を果たしています。

この結果について、理研の計算科学研究センターの松岡聡センター長は、「『富岳』が全ての主要なスパコンの諸元で突出して世界最高性能である事を、6月の前回のランキングの時点から更に性能を向上させる形で、再び示す事ができました。今後『富岳』は、スパコンとしてのそれ自身の利用と共に、開発された「富岳」のITテクノロジが世界をリードする形で広く普及し、新型コロナに代表される多くの困難な社会問題を解決し、我が国のイノベーションを先導していくでしょう」と述べました。

なお、今回発表された「TOP500」におけるシステム数別のシェア率を表したグラフが以下。トップとなったメーカーは、全体の36%に当たる180機を入選させたLenovoで、HP(ヒューレット・パッカード)を前身とするHPEとその子会社・Crayや、中国の情報技術企業であるInspurがその後に続きました。「富岳」を開発した富士通からは、15機が入選しました。


一方、性能別のシェア率では、富士通が全体の16%を占めてトップとなりました。


また、今回の「TOP500」では、スーパーコンピューターの性能の向上は頭打ちを迎えつつあることも鮮明になりました。以下は「TOP500」のスーパーコンピューターのパフォーマンスの上昇率(青色の線)と「TOP500」の平均パフォーマンスの上昇率(黄色の線)を、「半導体の集積率は18か月で2倍になる(1年では1.6倍)」とするムーアの法則(茶色の線)と比較したグラフです。2014年以降から、「TOP500」のスーパーコンピューターの性能の上昇率がムーアの法則に遅れがちなことが分かります。


こうした現状ですが、Top500の作成者であるErich Strohmaier氏は「2020年代後半には、スーパーコンピューターの性能が1ExaFLOPS(1PFLOPSの1000倍)の大台に乗り上げるだろう」と楽観視しているとのことです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
日本のスーパーコンピューター「富岳」が4つの世界ランキングで1位を獲得 - GIGAZINE

700ペタFLOPSのAIスーパーコンピュータをNVIDIAとフロリダ大学が共同開発すると発表 - GIGAZINE

Googleが1万年かかる計算問題を3分20秒で解き終える量子コンピューターを完成させる - GIGAZINE

日本のスーパーコンピュータ「京」がついに世界第1位を奪還 - GIGAZINE

スーパーコンピューターで新型コロナウイルスが人体を襲う仕組みが判明したとの研究結果 - GIGAZINE

in ハードウェア, Posted by log1l_ks