映画のネタバレレビューには「ポジティブなネタバレ効果」が存在する
映画の展開を最後まで語る、いわゆる「ネタバレ」をすると、わざわざお金を払って見に行く人がいなくなるのではないかと懸念する声があります。このことが本当なのかを調べたウエスタン大学とヒューストン大学の研究者による論文が、Journal of Marketing誌に掲載されました。
Do Spoilers Really Spoil? Using Topic Modeling to Measure the Effect of Spoiler Reviews on Box Office Revenue - Jun Hyun (Joseph) Ryoo, Xin (Shane) Wang, Shijie Lu, 2020
https://doi.org/10.1177/0022242920937703
Press Release from the Journal of Marketing: Do Spoilers Harm Movie Box-Office Revenue?
https://www.ama.org/2020/09/23/press-release-from-the-journal-of-marketing-do-spoilers-harm-movie-box-office-revenue/
研究チームが調査対象としたのは、2013年1月から2017年12月までの期間にアメリカで公開された映画で、レビューは、映画レビュープラットフォーム・IMDbに投稿されたものを利用。レビューにおいてストーリーがどれぐらいネタバレされているかの測定法を考案し、相関トピックモデルで測定を行いました。
調査の結果、ネタバレされている度合いと興行収入との間には正の有意な関係がみられたことがわかりました。これは、「ネタバレレビューによりストーリーのわからない部分が補足される映画は、興行収入が高くなる傾向があった」ことを示します。
研究チームの一員であるJun Hyun Roo氏は、「ポジティブなネタバレ効果の背後にあるのは『不確実性の低減です』」と述べ、潜在的に映画を見ようと思っているファンが作品の質に確信が持てないとき、ネタバレレビューによってはっきりしない部分を補っていることを説明しました。
研究では、こうした「ポジティブなネタバレ効果」は、極端に高評価・低評価に偏る作品よりも、中程度の評価・賛否が分かれる映画に対して影響が大きかったこともわかりました。
また、広告展開が少ないと、事前に得られる情報が少なくなるため、「ポジティブなネタバレ効果」が得られやすくなることもわかりました。
研究チームのXin Wang氏はこのほか、映画は公開されてから時間が経過するとだんだん不確実性が下がっていく(わからない部分が語られて減っていく)ため、「ポジティブなネタバレ効果」の影響が減少していくと説明しています。
こうした結果から研究チームでは、ストーリーに言及したレビューは映画のストーリーのよくわからない部分を補足するのに役立っており、結果的に、映画館に足を運ばせる効果があると結論づけています。
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