燃え尽き症候群になると仕事のストレスがさらに悪化する悪循環に陥ってしまうとの研究結果
慢性的なストレスや徒労感を覚えることでさまざまな意欲や社会的機能が失われる燃え尽き症候群は、主に仕事のストレスなどが原因だといわれています。ドイツの研究チームが発表した新たな論文で、仕事のストレスが単に燃え尽き症候群を引き起こすだけでなく、燃え尽き症候群によってさらに仕事のストレスが悪化し、負のスパイラルに陥ってしまうことが指摘されました。
Reciprocal effects between job stressors and burnout: A continuous time meta-analysis of longitudinal studies. - PsycNET
https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fbul0000304
Burnout can exacerbate work stress, further promoting a vicious circle
https://www.uni-mainz.de/presse/aktuell/12451_ENG_HTML.php
燃え尽き症候群の主な症状には、「感情の喪失やエネルギーの枯渇、疲労感」「仕事から心が遠く離れてしまっている、仕事に対して否定的・冷笑的感情を持つ」「専門家としての労働効率が低下する」といったものが挙げられます。
ヨハネス・グーテンベルク大学マインツのChristian Dormann教授によると、燃え尽き症候群の最も重要な症状は強い倦怠(けんたい)感だとのこと。この倦怠感は通常の仕事による疲れとは違い、夕方や週末、バカンスによる休息といった回復段階だけでは改善できないほど強いものだそうです。
また、Dormann教授のもとで研究を行うChristina Guthier博士は、「自分自身をさらなる倦怠感から守るために、自分の仕事から心理的な距離を築こうとする人もいます。これにより、仕事やそれに関連する人から自分自身を遠ざけ、より冷笑的になります」とコメント。燃え尽き症候群に関連する多くの症状も、倦怠感に端を発している可能性があると指摘しました。
Guthier博士はDormann教授らとの共同研究で、燃え尽き症候群と仕事のストレスの間にある相互作用について調べるため、燃え尽き症候群と仕事のストレスに関する48件の縦断研究についてメタアナリシスを実施しました。
研究の被験者は合計で2万6319人に及び、全体の44%が男性で平均年齢は42歳でした。研究が行われたのはヨーロッパ諸国だけでなく、イスラエルやアメリカ、カナダ、メキシコ、南アメリカ、オーストラリア、中国、台湾などの国や地域を含んでいたとのこと。
分析の結果、「燃え尽き症候群になると時間の経過と共に症状がゆっくりと進行し、さらに仕事で感じるストレスを増大させる」ことが判明。つまり、燃え尽き症候群になると仕事におけるストレスが増え、さらに燃え尽き症候群が悪化する悪循環に陥ってしまうそうです。燃え尽き症候群が仕事のストレスに与える影響は、仕事のストレスが燃え尽き症候群に及ぼす影響よりも大きかったと研究チームは報告しています。
Guthier博士は、「疲れ果てている時、一般的にストレスに対処する能力が低下します。その結果、より小さなタスクでさえ大変なものだと知覚する可能性があります」「私たちは仕事のストレスに対する燃え尽き症候群の影響を予想していましたが、その影響の強さは非常に驚くべきものでした」と述べています。
これまでは、「仕事のストレスが燃え尽き症候群を引き起こし、悪化させる原動力である」と考えられてきましたが、今回の研究結果はこの見解を相対化するものです。研究チームは燃え尽き症候群とストレスの悪循環を断ち切るため、経営者が従業員からストレスに関するフィードバックを受ける機会を設け、従業員に感謝するなど、適切なサポートを提供することが重要だと主張しました。
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