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ゲーム実況配信者はゲーム開発会社に「利用料」を払うべきなのか?


ゲームをプレイする様子を配信する「ゲーム実況」は、世界的に人気のある動画ジャンルの1つであり、近年はゲーム実況を職業とする人も増えてきています。そんなゲーム実況について、あるゲーム開発者が「ゲーム実況配信者はライセンス料金を支払うべき」という意見を表明して、大きな波紋を呼んでいます。

Should streamers pay game developers to stream their games? | PC Gamer
https://www.pcgamer.com/do-streamers-owe-game-developers-money/

Stadia creative director says streamers should pay publishers - 9to5Google
https://9to5google.com/2020/10/22/gamers-condemn-stadia-creative-director-streamers-should-pay-publishers/

この意見を表明したのは、Google Stadia傘下のゲーム開発会社Typhoon Studiosのクリエイティブディレクターを務めるAlex Hutchinson氏。Hutchinson氏は自身のTwitterアカウントで「利用料を支払っていない音楽を配信に載せたことでコンテンツが撤回されることを危惧している配信者は、自身が配信に用いているゲームにも利用料を支払っていないことを自覚するべきです」「ゲーム実況配信者は他のビジネスと同様に、ライセンスを購入してゲームの開発会社とパブリッシャーにコンテンツ利用料を支払うべきです」と指摘したところ、記事作成時点で1万8000件の引用リツイートされるほどの大きな注目を集めました。

The real truth is the streamers should be paying the developers and publishers of the games they stream. They should be buying a license like any real business and paying for the content they use.

— Alex Hutchinson (@BangBangClick)


Hutchinson氏の指摘の通り、例えばゲーム実況専門サービスのTwitchは、楽曲に関する知的財産権を保護する取り組みを行っており、著作権で守られている楽曲を含むコンテンツの配信・アップロードを規約違反としています。これと同様に、著作権法においては、書面によるライセンス契約がなければ他人の開発したビデオゲームを配信する法的権限は存在しません。

ゲームを何時間もプレイして視聴者を楽しませるというのはフェアユースの範囲からも外れているといえますが、ゲーム開発会社とパブリッシャーの多くは「配信されるメリットのほうが大きい」と考えているため、ゲーム配信を認めています。一例では、Blizzardは「視聴料を請求しない限りは問題ない」というポリシーを設けており、任天堂は「ガイドラインに従う限りは著作権侵害を主張しない」と明言しています。

ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン|任天堂
https://www.nintendo.co.jp/networkservice_guideline/ja/index.html


一方で、ノベルゲームのようなシナリオを重視するゲームは「ネタバレ」につながるため、配信されることが不利益となります。こうしたゲームが配信されてしまった場合、開発元が削除申請を提出できるのは「配信後」のことで、配信自体を止めることは不可能。その上、削除申請を提出することで配信者や視聴者からの評判が下がるという懸念もあります。

こうした不利益を実際に被ったと主張しているのが、3Dアドベンチャーゲーム「That Dragon, Cancer」を開発したRyan Green氏。「That Dragon, Cancer」は、息子が1歳の誕生日直後に侵襲性の珍しいタイプのがんだと診断されたというGrene氏自らの経験を元にした、「がんに侵された幼い息子とその家族の生活」を描いたタイトルです。ゲームエキスポでデモ版を発表したところ、プレイした人が耐えきれず泣き出すという事態が続発し、ストーリー面で高い評価を得ました。

That Dragon, Cancer - Official Release Trailer - YouTube


Green氏によると、「That Dragon, Cancer」の実況ムービーを見た視聴者は何百万人もいるものの、売上には一切つながらなかったとのこと。Green氏は「開発者の著作権を侵害しているものの、ゲーム実況は対戦型ゲームやサンドボックス系のゲームにとっては有益です。しかし、『That Dragon, Cancer』のような短く、比較的一本道のゲームの場合は、何百万人もの視聴者がムービーだけで満足してしまい、我々が意図した個人的な方法でゲームを楽しんでくれませんでした」と語っています。

こうした状況について、ゲーム系ニュースサイトのPC Gamerは「実況ムービーがなかったとしても視聴者分の売上が増えるわけではないだろうが、自分のゲームを見た人は何百万人もいるのに実際に購入してプレイした人がほとんどいなかったという事態を経験したGreen氏を責めるのは難しいだろう」と言及。しかし一方で、ゲーム配信が有料化された場合には「料金を支払えるのは、ゲーム配信から十分な利益を得ている大物配信者のみになる」と指摘して、新規配信者に対する参入障壁が形成されるという懸念を示しました。

今回の議論を呼び起こしたHutchinson氏の発言について、Googleは「Google自身やGoogle Stadia、YouTubeの方針を反映したものではない」という見解を示しています。

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in ネットサービス,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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