古いシステムを「今は動いているから」といってそのまま放置してはいけない理由
by Taryn Domingos
2019年になっても3分の1の企業がWindows XPを使い続けていたり、飛行機ではいまなお「フロッピーディスク」が使われていたりと、レガシーシステムが使われ続けている事例は数多く存在します。そんなレガシーシステムの弊害について、セキュリティの専門家であるRobert N. Charette氏が技術標準化機関・IEEEのポッドキャストで語っています。
The Problem of Old Code and Older Coders - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/podcast/computing/it/the-problem-of-old-code-and-older-coders
システムの置き換えが進まずレガシーシステムと化してしまう理由として、新しいシステムの開発時には潤沢にあった予算が、メンテナンスの段階では枯渇しておりシステム更新に資金が充てられなくなることや、システムが他のシステムと密に結合しており、単体のシステムをメンテナンスするよりもコストがかかることがあげられるとCharette氏は説明しています。
また、システムが持つ「データ」を他のシステムに移行できないがために、システムそのものの更新ができないという事例もあるとのこと。例えばアメリカの国税庁は60年前のシステムを運用していますが、これは「60年前から蓄積された何億人もの納税者データ」があるからだとCharette氏は語っており、長期間システムが稼働すればするほど置き換えが困難になる「システムのパラドックス」の存在が指摘されています。
by born1945
こうしたレガシーシステムをなんとか置き換えるために、2000年から2010年までの10年間で、全世界で少なくとも2.5兆ドル(約263兆円)の支出が行われましたが、7200億ドル(約75兆8000億円)が置き換え失敗によって無駄になってしまったとのこと。この現状について「問題の規模は計り知れず、世界に残っているレガシーシステムの規模は不明瞭だ」とCharette氏は指摘。こうしたレガシーシステムによる問題は政府のみならず民間企業でも発生しており、情報を公開しない民間企業の方がレガシーシステムの状況を外部から把握するのが難しいと語られています。
また、レガシーシステムは運用コストだけでなく、サイバーセキュリティ上の問題も抱えています。2019年にはアメリカ国内の100の行政システムでランサムウェア被害が報告されており、標的となったものの多くがレガシーシステムでした。また、古いレガシーシステムには十分なセキュリティを実現するだけの機能がないことも問題視されています。
しかし、レガシーシステムを取り巻く環境は「DevOps」の登場によって変化を見せているとのこと。DevOpsはソフトウェア開発と運用を一体として捉える考え方で、開発と運用が断絶していたために起こっていたレガシーシステムの問題を解決に近づける可能性を持っています。システムの置き換えについては引き続き考慮が必要ですが、DevOpsによって運用段階での故障やコストが下がるはずだとCharette氏は語っています。
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