メモ

14年前に「汎用性の高いデバイスが主流になる」と予測した科学者が根拠にしていたものとは?


2020年において、スマートフォンやタブレットなど1台でさまざまなことができるデバイスが広く普及しています。この「汎用性の高いデバイス」の需要が高くなることを14年前に予測していたのが、コンピュータ科学者のダン・ブリックリン氏です。ブリックリン氏は「ロングテール」と呼ばれる販売手法から未来を予測していました。

When The Long Tail Wags The Dog
http://www.bricklin.com/tailwagsdog.htm

多くの店舗は、売り上げが高い品目の上位20%が全体の売上げの80%を占めるというパレートの法則に基づいて業績を上げています。商品の品目(Items)と、販売数(Units Sold)の関係をグラフで表すと以下の曲線のようになります。縦軸が販売数、横軸が品目を意味し、一部のわずかな品目に多くの販売数が集中していることが見てとれます。「上位商品の売り上げは、下位の売り上げを補って余りある」という状態です。


本来であれば、店頭のスペースが限られていることや、物流・人件費といった問題があるため、売り上げの少ない商品は多く取りそろえられないのが実情です。しかし、AmazonのようなECサイトの場合、店舗のスペースなどの制約がほとんどないため売り上げの少ない商品でも多く取りそろえることが可能。

グラフの右側、売り上げの少ない商品を充実させることで、1つ1つの売り上げは低くても合算すれば大きな売り上げとなります。ロングテールというのは、実店舗では実現できないニーズの低い商品を取りそろえて売り上げを伸ばすビジネスモデルのことを指します。


この、ロングテールの考えを携帯情報端末に当てはめ、2006年に「ユーザーの好みのアプリケーションを自由にダウンロードできる汎用性の高いデバイスが成功する」と主張したのがブルックリン氏。ブリックリン氏は、世界初のPC向け表計算ソフト「VisiCalc」を考案したことでも知られている人物です。

ブリックリン氏は2006年に、ロングテールがニーズの低い商品を豊富にして売り上げを伸ばすように、携帯情報端末でもニーズの低い多種多様なアプリを多くインストールできるデバイスの方が需要が高くなると予測。つまり、必要最低限のアプリだけをインストールできるデバイスよりも、さまざまなアプリをカスタマイズできるデバイスの方が消費者にとって魅力的となるということです。


ブルックリン氏は「人気のあるアプリそのものだけでなく、潜在的なニーズのある『アプリの数』にも価値があると考えられます。需要の少ないニッチなアプリが複数入手可能であることが、デバイスの売り上げを後押しすると言えます」と語っていました。

以下のグラフの横軸ではアプリが需要の高さ順(Range of item Available)で並んでおり、縦軸は任意の購入者にとってのアプリごとの価値(Value to Particular Purchaser)を表していると仮定します。例えば、多くの人がインストールしているカレンダー・通話アプリ・インターネットブラウザのようなアプリがグラフの左側を占めているということ。縦線はユーザーにとって必要なアプリ(Must Have items)です。ここから、たとえ需要そのものは低くても、ユーザーにとって特定のアプリが「絶対に必要」であるほど価値が高くなるとみることができます。


ブルックリン氏はグラフに今後登場すると思われる未知のアプリ(May Have In The Future Must Have Items)も追加。未知のアプリは破線で示されているもので、需要の高いアプリよりも需要の低いアプリの方が多く存在すると考えられています。


人気のあるアプリだけを提供する専門性の高いデバイス(Restricted, Special Purpose System)と、ニッチなアプリも提供できる汎用性の高いデバイス(General Purpose System)の価値をグラフ化したものが以下。汎用性の高いデバイスの方が全体の価値が高く、専門性の高いデバイスはグラフ左側、需要の高いアプリ分の価値しか持たないということになるようです。


汎用性の高いデバイスでは、需要の高いアプリの価値が下がったとしても、ニッチなアプリを多くダウンロードできることから、アプリの汎用性で全体の価値をカバーすることが可能になるとブリックリン氏は述べました。つまり、低需要の商品をそろえることで全体の売り上げを伸ばすロングテールのように、低需要のアプリを多くダウンロードできるようにすることでデバイスの価値を上げることができるとのこと。


実際、2020年においてはiPhoneのようなさまざまなアプリを自由にインストールできるデバイスが主流となっています。ブルックリン氏は自身の予測について「多くの分野で、グラフの左側と右側の両方にサービスを提供できる製品だけが長期的に成功すると思います。この予測方法は、今日私たちが当たり前と思っている他の多くのシステムの出現を説明するのに役立ち、将来のシステムやビジネスモデルを評価するのに役立つでしょう」とコメントしています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
パンデミックを予言したビル・ゲイツに「いま何をすべきで、今後どうするべきか」を聞いてみたムービーが登場 - GIGAZINE

50年前の理論モデルですら現在の温暖化を正確に予測していた - GIGAZINE

何世代も先の未来を守る「長期的思考」を行うための6つのポイント - GIGAZINE

1966年の少年少女が「西暦2000年」という未来の予想を語るムービーが驚異的 - GIGAZINE

in メモ, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.