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パンデミックを予言したビル・ゲイツに「いま何をすべきで、今後どうするべきか」を聞いてみたムービーが登場


2019年末に新型コロナウイルスが発見されるはるか以前の2015年に、ビル・ゲイツ氏は「もし次の疫病大流行が来たら」をテーマにしたTEDカンファレンスでの講演を行い、大規模な感染症のまん延に警鐘を鳴らしていました。そんなゲイツ氏に、コメディアンのトレバー・ノア氏が真剣な質問をぶつけたムービーが公開されています。

Bill Gates on Fighting Coronavirus | The Daily Social Distancing Show - YouTube


アメリカのニュース風コメディ番組「ザ・デイリー・ショー」で司会を務めるノア氏(左)が「ザ・デイリー・ソーシャル・ディスタンシング・ショーにようこそ」と切り出すと、ビル・ゲイツ氏(右)は「ご一緒できて光栄です」とほほ笑みました。なお、「ソーシャル・ディスタンシング」とは、外出を控えることなどを意味する「社会距離拡大戦略」のことです。


ノア氏の最初の質問は、「あなたはTEDに出演し、今回の事態をかなり正確に予測したことで、多くの陰謀論が噴出しています」というもの。

「ちまたでは『ゲイツが新型コロナウイルスを発明した』だとか、『彼は今回の事態を秘密裏に知っていた』だとかいわれていますが、TEDでの発言は新型コロナウイルスについてのものだったのでしょうか?それとも、当時はただの仮説でしたか?」とのノア氏の問いに、ゲイツ氏は「もちろん、具体的に新型コロナウイルスだとは知りませんでしたし、それが2019年末に襲来することも知りませんでした」と回答。


2015年に大規模な疫病について語ったゲイツ氏の狙いは、各国の政府に「感染症に速やかに対応し、感染者数を低く抑えることが可能な体制づくりに注力するよう促す」ことでした。しかしゲイツ氏の思いとは裏腹に、新型コロナウイルスが非常に大きな脅威だということが明らかになっても、有効なワクチンは特定されておらず、検査体制もとても十分とはいえません。

その様子を、ゲイツ氏は「残念ながら『言ったでしょ?』という感じになってしまいました」と話しています。


そこでノア氏は、個人的な質問だと前置きしつつ「人々を守ることをが使命であるはずの世界保健機関(WHO)アメリカ疾病管理予防センター(CDC)といった機関は、一体どんな間違いをおかしたと思いますか?彼らはあなたが持っていたような知識を持っていなかったのか、それとも持っていたのに無視したのでしょうか」と尋ねました。


ゲイツ氏によると、ゲイツ氏のような懸念を抱いている人は多くいたとのこと。例えば、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ氏もその1人。しかし、そういう人たちの警告がありながら、今回の事態が発生してしまったのは、大きく分けて2つの要因があるとゲイツ氏は考えています。

1つ目は、「新型コロナウイルスが非常に簡単に感染拡大してしまう」という点です。例えば、新型コロナウイルスと同様にWHOから「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に指定されているエボラ出血熱は、毒性や致死率があまりにも高く患者が遠出する前に死亡してしまうため、世界的流行には至っていません。一方、新型コロナウイルスは比較的症状が軽いため患者が活発に行動してしまい、結果としてウイルスが拡散されてしまいます。

もう1つの要因は、「準備不足」です。2015年のスピーチでゲイツ氏が指摘したように、世界各国は戦争にはかなりの備えをしており、無数のシミュレーションを行ったり有事の際の計画を策定したりしていますが、パンデミックに対しては「どんな検疫を行えばよいのか」「どう市民や民間企業に伝えればいいのか」などの議論がなされてきませんでした。そのため、あらかじめ訓練や後方支援の配置などが行われる戦争とは異なり、各国は場当たり的な対応をせざるを得ない状況に陥ってしまいました。


ノア氏が「それでは、今後世界各国の指導者や国民、民間企業は一体どうすればいいと思いますか?」と尋ねると、ゲイツ氏は「私たち個人が今できることは、行動を変えること、すなわち社会的距離を保ち、家にとどまることです」と回答。また、政府などに対しては、「症状が出てしまった人や、その人と接触した人を検査できるような体制を整えること」を求めました。

ゲイツ氏は続けて、「究極の解決策はワクチンを作り、私たちの国だけでなく世界中の人々に提供して接種させることです」と話しました。そうすることで、多くの人がウイルスに免疫を持つことができるようになり、世界的な感染拡大を食い止めることができるようになるとのことです。

ノア氏は次に、「どんな国の対応に注目すればいいと思いますか?例えばイタリアや韓国では多くの感染者数を出す経験をしていますが、そういった国の対応策をアメリカのような大きな国に適用することはできません」と尋ねました。

この点については、ゲイツ氏は「確かに、国ごとに様相は異なります」と認めています。その上で、「例えば韓国では中規模の感染が発生しました。一時期はかなり重大な事態に陥ったものの、検査や検疫の強化、接触者の追跡などを行うことで、感染者の増加を緩やかにすることができました」とゲイツ氏はコメント。一方、アメリカでは韓国よりも広範に感染が拡大してしまっており、状況はどちらかといえば中国の湖北省に近いとのこと。

アメリカは中国のような強引な対応を行うことはできませんが、中国で行われた都市封鎖などの対策の結果、工場を再稼働させたり、学校を再開させたりしても再流行が起きていないのは「とても明るいニュースです」とゲイツ氏は指摘。かなりの経済的な負担は生じるものの、都市封鎖などの努力を続けることでアメリカでも感染率を数%に抑えることは不可能ではないと、ゲイツ氏は述べています。

経済的負担よりも感染を抑えることを優先すべきだと話すゲイツ氏に、ノア氏は「経済と人命のバランスはどうとればいいと思いますか?人命第一だという人もいますが、もし経済的な負担が長引けば結局は多くの人が犠牲になることは避けられないように思えます」との質問をぶつけました。


これに対してゲイツ氏は「多くの人に年配の家族がいて、その人が病気にならないよう願っています。そこにきて、経済を優先するという選択肢はありません」と回答。経済的な痛みを伴っても、アメリカ国民が一丸となって取り組めば、早ければ初夏ごろには終息に向かうため、そのころには職場や学校も順次再開できるだろうとの見通しを述べました。

また、その実現には「新型コロナウイルス検査の強化が必要」になるとゲイツ氏は指摘しています。一度に検査できる人数には限りがあるため、まずは「症状がある人・親しい人が検査で陽性と診断された人・医療従事者・食料やインフラを支えている人」を優先させる必要があります。そのため、より大規模な検査体制が整うまでは、「無症状だが心配な人」は待つ必要があるとのこと。また、混乱を最小限にするには、検査数だけでなく検査の迅速さも求められます。例えば、アメリカでは検査をしてから結果が出るまでに24時間以上かかってしまいますが、韓国では検査から24時間以内に結果を出していたとのことです。

また、ゲイツ氏は「先進国で積極的に新型コロナウイルス検査を実施し、可能な限り早期にパンデミックを終息させることは、大規模な検査や高度な医療体制の整備が困難な発展途上国で新型コロナウイルスがまん延するのを防ぐことにもつながります」と述べました。

ゲイツ氏がアメリカ国民や世界の国々の連帯を唱える一方で、ノア氏は「アメリカの各州でさえ新型コロナウイルス対策の努力には開きがあります」と指摘。「夫婦でキスする時にまでアルコール消毒をするのか?」とWHOが勧告する新型コロナウイルス対策に異を唱えるブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領や、「ウオッカを飲めば消毒できる」と豪語するベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領のような政治的リーダーがいる中で新型コロナウイルス対策の取り組みを行っても、効果が薄いのではないかとの疑問を投げかけました。


これに対しゲイツ氏は「悲しいことですが、どんなに努力しても新型コロナウイルスがまん延する地域は出るでしょう。そのため、完全なワクチン接種が実現するまでの数年間はそうした国からの入国を大幅に制限する必要があります」と述べて、一部の地域での感染拡大や、そうした国との出入国の制限は避けられないとの見通しを示しました。

一方、州境を閉鎖するわけにはいかないアメリカなどの国については「確かに、経済的な負担が大きいため抵抗する人もいますが、そうした人も巻き込んで取り組んでいく必要があります。これは荒療治ではありますが、きちんと治しておけば治療が長引くこともありません」と述べて、改めて経済より新型コロナウイルス対策が優先されることを強調しました。

また、ノア氏は「あなたやメリンダさんが新型コロナウイルスとの戦いのために大金を寄付したのは知っていますが、この問題は金銭では解決できません。どうすればいいと思いますか?」とやや意地悪な問いを投げかけました。

しかし、ゲイツ氏が「資金があれば初期の取り組みを加速させることは可能です。例えば、我々は既に、新型コロナウイルスへの効果が有望視されている7種類のワクチンの製造を開始しています。そのうち効果があるのはせいぜい2つだと思いますが、たとえ数十億ドル(数千億円)が無駄になろうとも、少しでも早くワクチンが作れればそれだけの価値はあります」と話すとノア氏は感心した様子で「おお、すごい」と漏らしました。


最後に、「今回のパンデミックをほぼ完璧に予測していたあなたにお伺いしますが、他に何か警告したいことはありますか?」とノア氏が尋ねると、ゲイツ氏は少し笑いながら「今回は自然が引き起こしたものですが、バイオテロなど人為的な事態も考えられます。とにかく、次のパンデミックに備えることです」と答えました。

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in 動画, Posted by log1l_ks

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