陰謀論を広めたTwitterユーザーの身元を開示するよう裁判所命令が下る
偽のFBI文書を作成し、ウソの情報をニュースメディアに提供したTwitterアカウントに関するアカウントの登録情報とIPアドレスを公開するよう、Twitterに対して裁判所命令が下されました。
ORDER RICH
https://www.documentcloud.org/documents/7223134-ORDER-RICH.html
Judge Orders Twitter To Unmask FBI Impersonator Who Set Off Seth Rich Conspiracy : NPR
https://www.npr.org/2020/10/07/921285470/judge-orders-twitter-to-unmask-fbi-impersonator-who-set-off-seth-rich-conspiracy
2016年7月10日、アメリカのワシントンD.C.で民主党全国委員会(DNC)職員だったセス・リッチ氏が背後から撃たれて死亡しました。このリッチ氏の死に関して、FoxNews.comは2017年5月に「アメリカ史上最大のスキャンダルになる可能性がある」と報じました。FoxNewsによると、リッチ氏はWikiLeaksによって暴露されたDNCのメールの情報源であり、「非常に疑わしい状況で殺害された」とのこと。
2018年にはワシントン・タイムズが「リッチ氏の兄であるアーロン・リッチ氏がWikiLeaksから金銭を受け取るのと引き替えにメールを盗み出す手助けをした」という記事を掲載しました。「リッチ氏がWikiLeaksに情報提供した」という情報に基づき、アメリカ連邦捜査局長官のロバート・モラー氏がロシアのハッキングについてレポートを作成するなど、ニュースは当時のアメリカ社会と政治に大きな影響を与えました。
しかし、このニュースはその後「適切なレビューの結果、基準を満たしていないと判断された」として削除されました。FoxNewsはこの件に関して弁明も謝罪も行っていません。
Statement on coverage of Seth Rich murder investigation | Fox News
https://www.foxnews.com/politics/statement-on-coverage-of-seth-rich-murder-investigation
ニュースがウソとわかった後でも根拠のない話による弊害を受けているとして、リッチ氏の遺族はFoxNewsの解説者だったエド・ブトフスキー氏と活動家のマット・カウチ氏、そしてワシントン・タイムズを提訴しました。なお、ワシントン・タイムズはその後、記事を撤回し謝罪を行っています。
この事件において、リッチ氏の殺害に関する陰謀論を広めるために「@whyspertech」というTwitterユーザーが偽のFBI文書を作成し、FoxNewsに提供したと遺族側の弁護士は主張。「@whyspertech」というアカウントは記事作成時点で既に削除されていますが、アカウントに関する情報が公開されることで事件の真相が明らかになると弁護士は述べています。Twitterはプライバシーの観点からユーザーの身元情報を秘匿し続けてきましたが、2020年10月7日付けで、Twitterに対して「@whyspertech」の身元を明らかにするよう命じる裁判所命令が下されたことが判明しました。
裁判所命令で開示が求められているのは、「限定的なアカウント登録情報」と「IPアドレス」の2つで、アカウントから送られた私的なメッセージは含みません。Twitterの弁護士であるジュリー・シュワルツ氏はこのような開示がアメリカ合衆国憲法修正第1条の権利を侵害すると裁判で主張しましたが、裁判所は「開示の範囲は限定的であり、Twitterの過度の負担にはならない」としてTwitter側の主張を却下しました。
なお、シュワルツ氏はこの判決に対してコメントしておらず、Twitterが上訴するかどうかは記事作成時点では不明です。
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