「宇宙空間のサイバーセキュリティ向上を目指す」とアメリカが発表、危険なサイバー攻撃からシステムを守るため
by NASA Johnson
アメリカ政府は2020年9月4日、この宇宙船や衛星などのシステムのサイバーセキュリティを向上し、サイバー攻撃からシステムを保護するための推奨事項やベストプラクティスについてまとめた「宇宙政策指令第5号」を発表しました。アメリカ政府は宇宙空間におけるサイバー攻撃を危険視しており、官民一体となってサイバーセキュリティ向上を目指しているとのことです。
Memorandum on Space Policy Directive-5—Cybersecurity Principles for Space Systems | The White House
https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/memorandum-space-policy-directive-5-cybersecurity-principles-space-systems/
Trump administration issues directive aimed at enhancing cybersecurity in space - The Verge
https://www.theverge.com/2020/9/4/21423087/space-policy-directive-5-cybersecurity-threats-satellites
White House publishes a cyber-security rulebook for space systems | ZDNet
https://www.zdnet.com/article/white-house-publishes-a-cyber-security-rulebook-for-space-systems/
近年では衛星通信やGPS、気象観測などのさまざまな分野において、宇宙に打ち上げられたハードウェアが国家の重要なインフラストラクチャーとなっています。その一方で、宇宙船や衛星自体に加えて地上の制御システムなどは、概念設計から打ち上げ、飛行中の操作に至るまでが情報システムやネットワークに依存しているため、サイバー攻撃にさらされる危険があるとのこと。
新たに発表された宇宙政策指令第5号は、アメリカの政府機関および民間の宇宙企業によって構築・運用されている全ての宇宙船や衛星、ネットワーク、通信チャネルにおけるサイバーセキュリティの基準を確立するためのルールについて記したもの。宇宙政策指令第5号の目標は、政府当局と宇宙産業が連携してサイバーセキュリティ計画に基づいて衛星や宇宙船を開発し、暗号化ソフトウェアやその他の保護ツールを設計・構築・運用時に組み込むように奨励することだそうです。
軌道上に打ち上げられている衛星や宇宙船には物理的にアクセスすることが困難なため、リモートでセキュリティ対策の更新に対応する機能を宇宙船に組み込むことが重要だと宇宙政策指令第5号は指摘。また、サイバーセキュリティのトレーニングを受けたエンジニアが、宇宙システムやそれを支えるインフラストラクチャーの開発・運用に携わり、衛星や宇宙船だけでなく地上のシステムまで保護することが重要だと述べられています。
宇宙政策指令第5号を発表した背景について話した上級行政当局者は、外国の敵対組織による宇宙ハードウェアへの脅威が高まっているため、宇宙のサイバーセキュリティに焦点を当てることが重要だと主張。「これらの脅威は多様かつ複雑であり、宇宙インフラストラクチャーのセキュリティと回復力を強化するための強力な官民協力が、私たちの取り組みの鍵となっています」とコメントしました。
宇宙政策指令第5号の中では、宇宙運用に有害な悪意のあるサイバー活動の例として、「センサーデータのなりすまし」「センサーシステムの破損」「誘導や制御の妨害および不正コマンドの送信」「悪意のあるコードの挿入」「サービス拒否攻撃の実行」などが挙げられています。一方、実際にどの種類の脅威が懸念されているのかについて、上級行政当局者は「これらは実際に発生すると言うだけで十分です」とだけ話し、詳細については語りませんでした。
また、国防総省が2020年に発表した、中国の軍事・安全保障の進展についてまとめた(PDFファイル)レポートによると、中国は宇宙開発計画を進展させると共に、衛生妨害装置や「攻撃的なサイバー機能」を持つ武器を開発しているとのこと。
宇宙政策指令第5号では、政府機関が民間企業と協力してサイバーセキュリティのベストプラクティスを改善する必要があることが示されていますが、すでに民間の宇宙産業の多くはシステムの構築やリリース時にサイバーセキュリティ戦略を実施しています。このような現状について、「私たちは政府主導の新しいトップダウン要件や基準を課そうとしているのではなく、実際には民間セクターと協力しようとしている点を強調することが重要だと思っています」と、行政当局者は述べました。
by NASA's Marshall Space Flight Center
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