上空から市民を秘密裏に監視するFBIの飛行機を見つける「SkyCircl.es」はなぜ生まれたのか？

どこかに向かうわけでもなく、都市上空をただグルグルと旋回する飛行機を捕捉し、Twitterにその飛行機の飛行ログや登録情報を自動で投稿するボットが「SkyCircl.es」です。このSkyCircl.esは、「FBIが市民活動を上空から監視している」という事実が発覚したことで開発されました。

SkyCircl.es Donations
https://skycircl.es/donate/

2015年4月12日、アメリカ・メリーランド州ボルティモア市で、25歳の黒人男性であるフレディ・グレイ氏が警官による尋問中に死亡するという事件が起こりました。この数日前にボルティモア市の警官が黒人のウォルター・スコット氏を射殺する動画が流出し、市民の間で警察に対する不信感が高まっていたため、グレイ氏の死をきっかけにボルティモア市で大規模なデモが行われ、暴動に発展しました。

米ボルティモアで暴動、黒人死亡に抗議 州知事が非常事態宣言　写真17枚　国際ニュース：AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3046707

ボルティモア市警の無線を傍受するサイト「Scan Baltimore」を運営していたベンジャミン・シェイン氏は、暴動が起こるボルティモア市の上空で繰り返し旋回を続ける飛行機の存在に気づきました。

シェイン氏が疑問をつぶやいた直後にフォロワーの1人が、セスナ 182の飛行ログと登録情報を投稿。さらなる調査の結果、この飛行機の登録情報にあった「NG Research」という企業がFBIの関係組織である可能性が浮上しました。

日刊紙のワシントン・ポストが、FBIの広報担当官であるエリック・コワルチク大尉に確認したところ、コワルチク大尉は「ボルティモア市での騒動に対し、FBIは犯罪行為の可能性を示す航空写真を提供する目的で、ボルチモア警察に航空機を提供しました。この航空機は、地上の警察官が迅速に対応できるよう、犯罪行為の可能性を高高度で監視するために使用されました」と述べ、上空からの監視があったことを認めました。

そして2020年5月25日に、ミネソタ州ミネアポリス市で黒人男性のジョージ・フロイド氏が警官に取り抑えられて亡くなる「ジョージ・フロイドの死」事件が発生しました。これをきっかけにミネアポリス市で反人種差別デモが起こり、ボルティモア市と同じように一部のデモ参加者が暴徒化し、大規模な暴動に発展。反人種差別運動の波はアメリカ中の都市に広がりました。

ウォルト・ディズニー・イマジニアリングに務めるエンジニアのジョン・ワイズマン氏は2015年にFBIの秘密監視プログラムに言及していた1人で、「2020年の反人種差別デモにおいても、2015年のボルティモア暴動の時と同じように上空からの監視が行われるのではないか」と考え、FBIの秘密監視プログラムに関与する飛行機を発見するシステムを構築しました。

さらにワイズマン氏は、各都市の上空を周回する航空機を発見して航空ログや情報をTwitterに投稿する「SkyCircl.es」を立ち上げました。SkyCircl.esは、ボルティモア市やミネアポリス市、ニューヨーク市、ロサンゼルス市、サンフランシスコ市、ポートランド市、シカゴ市などの上空を旋回する飛行機をチェックし、その飛行ログやコールサイン、登録情報を自動でつぶやきます。

ワイズマン氏によれば、SkyCircl.es自体は「低労力で高いインパクトのあるプロジェクト」で、技術的には非常に簡単なものだとのこと。ただし、「SkyCircl.esで報告される飛行機は上空からの監視を行うFBIの飛行機に限らず、電力線やパイプラインの検査、森林の監視、試験飛行なども含まれます」とワイズマン氏は述べています。

なお、SkyCircl.esはオープンソースで開発されており、ソースコードがGitLabで公開されています。

John Wiseman / whatsoverhead · GitLab
https://gitlab.com/jjwiseman/whatsoverhead

John Wiseman / Advisory Circular · GitLab
https://gitlab.com/jjwiseman/advisory-circular/