ネットサービス

研究者が「Googleマップ」の渋滞情報からロシアによるウクライナ侵攻を事前に察知していた


現地時間の2022年2月24日早朝に始まったロシアのウクライナ侵攻は、世界中の人々に大きな衝撃を与えました。ところが、ロシアやウクライナから数千km以上も離れたアメリカ・カルフォルニア州の研究者が、「Googleマップ」を使用して公式発表の数時間前にロシアの侵攻を察知していたことが報じられています。

I have spent my entire career doing #OSINT and even I think it’s weird that we were able to see the first signs of the invasion using @googlemaps’s traffic layer. https://t.co/XdAnVQfFdp

— Dr. Jeffrey Lewis (@ArmsControlWonk)


How Google Maps is tracking the Russian invasion of Ukraine - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2022/02/25/google-maps-ukraine-invasion/

カリフォルニア州のミドルベリー国際問題研究所に所属するジェフリー・ルイス教授は、軍備の管理・不拡散の専門家であり、人工衛星が撮影した写真から軍事的な動きを分析するプロジェクトを学生と共同で行っています。そんなルイス氏らは2月23日、地球の衛星写真を撮影する企業・Capella Spaceが撮影した、ウクライナとの国境沿いにあるロシアのベルゴロドの衛星写真に、ロシア軍の戦車やその他の車両が映り込んでいることを発見しました。

実際にCapella Spaceが撮影していた写真がこれ。車両が列となって並んでおり、移動する準備を整えていたことから、ルイス氏らはベルゴロド付近の動向をGoogleマップで監視し始めたとのこと。

The only reason we were looking at the traffic near Belgorod is because yesterday @capellaspace captured a SAR image of a newly arrived Russian unit with tanks and other vehicles. What struck us about this image is that the vehicles were lined up in columns, ready to move. pic.twitter.com/bZii0CZcaN

— Dr. Jeffrey Lewis (@ArmsControlWonk)


そしてベルゴロドの現地時間で24日3時15分頃、ベルゴロドからウクライナへ向かう道路付近で「渋滞」が発生していることが、Googleマップ上で確認されました。渋滞の発生地点は衛星写真でロシア軍が並んでいた場所だったことから、ルイス氏は「何かが移動中です」と記しています。

According @googlemaps, there is a "traffic jam" at 3:15 in the morning on the road from Belgorod, Russia to the Ukrainian border. It starts *exactly* where we saw a Russian formation of armor and IFV/APCs show up yesterday.
Someone's on the move. pic.twitter.com/BYyc5YZsWL

— Dr. Jeffrey Lewis (@ArmsControlWonk)


深夜の3時15分はどう考えても朝の通勤ラッシュには早すぎる時間帯であり、ルイス氏らはこの渋滞がロシア軍の移動によって引き起こされたものだと推測することができました。ルイス氏によると、ロシア軍の車列自体はスムーズに動いていたと考えられるため、Googleマップに表示された渋滞情報はロシア兵が持っていたスマートフォンではなく、ロシア軍の移動に巻き込まれた民間人のスマートフォンに基づいていた可能性が高いとのこと。

To clear up a misconception: The traffic data is most likely NOT from soldiers carrying smartphones. Instead, civilians are probably getting stuck at roadblocks and @googlemaps is recording that.

— Dr. Jeffrey Lewis (@ArmsControlWonk)


今回、ロシアのウクライナ侵攻が公になる前にGoogleマップの情報から進軍を察知できたという事実は、Googleマップを利用して、遠く離れた場所で何が起きているのかをリアルタイムで知ることができると実証するものです。ワシントン・ポストは、ロシアのウクライナ侵攻が始まってから数時間後、ウクライナ北東部のハリコフ付近で道路が閉鎖されたことや、首都のキーウ(キエフ)付近で交通渋滞が起きたことがGoogleマップで確認できたとも報じています。


ルイス氏はワシントン・ポストに対し、「私たちは通常の生活パターンがどのようなものかを示す多くのデータを持っているため、データの偏りを見ることで地上で何が起こっているかを知ることができます」「昔は現場で何が起こっているのかを知るために、記者に頼っていたでしょう。今日では、私たちはGoogleマップを開き、キエフから逃げる人々を見ることができます」と述べています。

国家安全保障について研究するスタンフォード大学のGordian Knot Center for National Security Innovationを創設したスティーブ・ブランク氏は、人々が持ち運ぶスマートフォンで閲覧できるマップが、高品質の写真やビデオを共有できるSNSと同様に、かつては政府しか知らなかった地上の状況を民間人が把握することを可能にしたとコメント。しかし、依然として政府はSNSへのアクセスを阻害したり、インターネットそのものを遮断したりできるほか、「軍が次に何をするのか」といった意図は民間人が知ることができないと指摘しました。

なお、ウクライナに進軍したロシア軍の動きはGoogleマップの交通情報だけでなく、道に設置された監視カメラによって確認されたケースも報告されています。以下のムービーでは、移動中のロシア軍が監視カメラの存在に気付き、カメラの向きを変えて車列が写らないようにする様子が確認できます。

Russian soldiers captured on CCTV disabling surveillance cameras - YouTube

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ロシアのウクライナ侵攻に関する現地からのツイートを地図上に表示する「Russia-Ukraine Monitor Map」 - GIGAZINE

「ロシアがウクライナ侵攻のために衛星を攻撃する可能性がある」とアメリカ国家偵察局の長官が警告 - GIGAZINE

ウクライナ侵攻のロシアが使っている「偽旗作戦」とは? - GIGAZINE

ロシアのウクライナ侵攻でセキュリティ最強の暗号化メッセンジャーアプリ「Signal」の需要が急増 - GIGAZINE

ロシア機6機を撃墜したというウクライナ軍のエース「キエフの幽霊」の撃墜映像はシミュレーション - GIGAZINE

in モバイル,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.