IBMがクラウド向け次世代プロセッサ「POWER10」を発表、2021年末までに市場投入される見込み
IBMが2020年8月17日に、データセンター向けのプロセッサ「POWER10」を発表しました。14nmプロセスだった「POWER9」から大幅な進歩を遂げた7nmプロセスの「POWER10」は、人工知能(AI)のパフォーマンスを従来の20倍まで向上させる専用モジュールなどを搭載しています。
IBM Reveals Next-Generation IBM POWER10 Processor - Aug 17, 2020
https://newsroom.ibm.com/2020-08-17-IBM-Reveals-Next-Generation-IBM-POWER10-Processor#assets_117
IBM: Power10 CPU’s ‘Memory Inception’ Is Industry’s ‘Holy Grail’
https://www.crn.com/news/components-peripherals/ibm-power10-cpu-s-memory-inception-is-industry-s-holy-grail-
IBM takes Power10 processors down to 7nm with Samsung, due to ship by end of 2021 • The Register
https://www.theregister.com/2020/08/17/ibm_t7nm_power10/
2020年8月16日からオンラインで開催されている半導体チップのカンファレンス「Hot Chips 32」に出席したIBMは17日に、同社初となる7nmプロセスのSamsung製サーバー向けCPU「POWER10」を発表しました。
発表によると、POWER10はパワーエンベロープ(消費電力枠)比の容量とエネルギー効率がPOWER9から最大3倍に向上しているほか、「Memory Inception」と呼ばれる新技術も導入されているとのこと。これにより、複数のPOWER10がペタバイトサイズのメモリを共有できるようになるため、大容量のメモリを必要とする大規模AIモデルの稼働が可能になるほか、クラウドサービスの容量や経済性の向上にもつながると期待されています。
また、組み込み式のハードウェアモジュールである「Matrix Math Accelerator」を搭載することで、ソケット当たりのFP32(単精度浮動小数点演算)、、BFloat16(16ビット浮動小数点演算)、INT8(8ビット整数演算)でのAI処理能力がそれぞれPOWER9の10倍、15倍、20倍に向上しているとのことです。
セキュリティ面でも、ソフトウェアではなくハードウェア側でメモリ内のデータを暗号化することにより、パフォーマンスを低下させることなく高レベルのセキュリティが維持されるとIBMは説明しています。
IBM Cognitive Systemsでゼネラルマネージャーを務めるスティーブン・レナード氏は、イギリスのニュースサイトThe Registerに対し「コンテナ化ソフトウェアのRed Hat OpenShiftがハイブリッドクラウド業界の標準的な選択肢として浮上しつつある中、Red Hat OpenShiftに最適化されたPOWER10により、ハードウェアベースの大容量化とコンテナのセキュリティ強化をインフラレベルで実現することができます」と述べました。
また、IBMのPower Systems担当ヴァイスプレジデントのSteve Sibley氏は、IT系ニュースサイトCRNの取材に対し「7nmに移行することで、チップデザインの効率と機能が大幅に向上しました。特に、Memory Inceptionにより、ハイパースケーラーと呼ばれる大規模クラウド事業者は信じられないほどのコストを圧縮できるようになるため、この業界を一新させると期待されています」とコメントしています。
Sibley氏によると、Power10は2021年第4四半期末までに顧客に届けられる予定とのことです。
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