テロ組織「ISIL」が新型コロナに乗じたマスクの通販サイトを運営していたことが判明

「イスラミック・ステート(IS)」を自称するテロ組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに乗じて、マスクをはじめとするPPE(個人用防護具)を扱う詐欺サイトを運営していたと、アメリカ司法省が発表しました。

Global Disruption of Three Terror Finance Cyber-Enabled Campaigns | OPA | Department of Justice
https://www.justice.gov/opa/pr/global-disruption-three-terror-finance-cyber-enabled-campaigns

ISIS Allegedly Ran a Covid-19 PPE Scam Site | WIRED
https://www.wired.com/story/isis-allegedly-ran-a-covid-19-ppe-scam-site/

アメリカ司法省は2020年8月13日に、国土安全保障省や連邦捜査局(FBI)らと共同で複数の過激派組織の資金源だった暗号資産アカウント300件以上を押収したことを発表。これにより資金を没収された過激派組織の中には、過激派組織「アルカイダ」やイスラム原理主義組織ハマスの軍事部門「イッズッディーン・アル＝カッサーム旅団」のほか、ISILも含まれていました。

過激派組織の所有する300以上の暗号資産アカウントを司法省が押収 - GIGAZINE

アメリカ司法省はさらに、ISILが資金調達のためのフロント組織として、「FaceMaskCenter.com」というサイトを運営していたことを発表しました。FaceMaskCenter.comは、ISILでハッキングなどを専門としているMurat Cakarによって運営され、N95マスクやTyvek(タイベック)の防護服などを含む医療向けのPPEを豊富に取り扱っていると主張していたとのこと。

発表の中でアメリカ司法省は「我々の訴状により、Cakarのサイトとそれに関連する4つのFacebookページが押収されました。これらの取り組みにより、アメリカはCOVID-19対策のPPEを求める人々のさらなる犠牲を回避し、ISIS(ISIL)の継続的な資金調達を混乱させました」と述べました。

アメリカ司法省が公開した、FaceMaskCenter.comのスクリーンショットが以下。

by DEPARTMENT OF JUSTICE

記事作成時点では、FaceMaskCenter.comのサイトにアクセスしても、以下のようにドメインが押収済みであることを示す案内が表示されるだけです。

FaceMaskCenter.comは、アメリカ司法省によって閉鎖される前は、公衆衛生の専門家によって運営され、1996年からPPEを手がけてきたことを主張していました。しかし、実際のドメイン登録は2020年2月と、COVID-19が世界的に流行しはじめた時期に開設されたサイトだったことが分かっています。また、サイト上では、マスクがアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を受けた製品であることをうたっていましたが、当然ながらそのような事実もありませんでした。

アメリカ司法省の発表によると、アメリカ人の顧客がFaceMaskCenter.comを通じてPPEの購入を打診したところ、トルコを拠点とするシリア人から「最大で10万枚のマスクを販売可能」という連絡が入ったとのことですが、実際に取引が行われたかどうかは明らかになっていません。

COVID-19関連の詐欺サイト問題に詳しいセキュリティ会社DarkOwlのマーク・ターネージCEOは、海外メディアWIREDの取材に対し「PPE詐欺のような違法な売買が行われているのを多く見てきましたが、実際にPPEが納品されたことはありませんでした。ISILが、このようなCOVID-19に乗じたPPE詐欺に参入したのは、それほど意外なことではないといえます。彼らもパンデミックを利用しようとした者の一員だということです」とコメントしました。