通信を暗号化する機能を搭載した高セキュリティの「セキュアフォン」を販売した会社のCEOが逮捕される

by brian.ch

世の中には高い安全性と機密性を誇る携帯電話「セキュアフォン」を販売する会社が存在していますが、いくつかのセキュアフォン販売会社が暗号化した通信機能を搭載した「カスタムスマホ」を、麻薬カルテルやギャングに販売していることが報じられています。

Feds Bust CEO Allegedly Selling Custom BlackBerry Phones to Sinaloa Drug Cartel - Motherboard
https://motherboard.vice.com/amp/en_us/article/a34b7b/phantom-secure-sinaloa-drug-cartel-encrypted-blackberry

ここ数年の間に、セキュアフォンを販売してきた会社のいくつかは、ギャングや麻薬カルテルの支援によって設立され、違法行為に使うためにセキュアフォンを製造していると考えられてきました。違法行為に加担するセキュアフォン販売会社に捜査の手を伸ばしていたアメリカの連邦捜査局(FBI)は、カナダに本社を置くPhantom Secureというセキュアフォン販売会社のCEO、ビンセント・ラモス氏を逮捕したとのこと。

FBIの特別代理人ニコラス・チェフロウ氏によると、メキシコの巨大麻薬カルテル「シナロア・カルテル」のメンバーや国際犯罪組織の上級幹部もメッセージのやり取りにPhantom Secureのスマートフォンを使用しているそうで、Motherboardの情報源からは「メキシコ・キューバ・ベネズエラのギャングや、アメリカのモーターサイクルギャング『ヘルズ・エンジェルス』のメンバーにもPhantom Secureのスマートフォンは販売されている」という情報も入っています。カナダとオーストラリアの関係者によって運営されているPhantom Secureは、カスタムスマートフォンを犯罪組織に販売することにより数千万ドル(数十億円)の利益を得ていたそうです。

by Eneas De Troya

Phantom Secureのカスタムスマートフォンは、BlackBerryのスマートフォンからマイクとカメラなど証拠を残す危険性のあるデバイスを取り外し、さらにGPS機能やインターネットブラウジング機能、通常のメッセージ機能も除去してあるとのこと。代わりに暗号化ソフトウェアのPretty Good Privacy(PGP)をインストールしてあり、PGPで暗号化したメッセージを海外のサーバーを経由して送信することが可能になっています。また、スマートフォンが捜査機関に差し押さえられた場合、遠隔操作でスマートフォン内のデータを消去する機能も搭載してあるそうです。

Phantom Secureを逮捕するために、カナダの国家警察機関の王立カナダ騎馬警察がPhantom Secureのスマートフォンを購入し、麻薬密売人のふりをして「『MDMAをモントリオールに送る』というメッセージを送信しても、捜査機関にばれる危険はないか」などとPhantom Secureに尋ねました。Phantom Secureはこの質問に対し、「まったく問題ない」と答えたとのこと。

FBIは麻薬取引に関して逮捕していたシナロア・カルテルのメンバーから、「Phantom Secureのスマートフォンを使用して、国際間におけるコカイン5キロの輸送に関する連絡を取った」という証言を得ており、逮捕されたラモス氏も「Phantom Secureのスマートフォンは犯罪組織向けに作った」と認めているそうです。2016年にはオランダの捜査機関が「顧客にヒットマン・麻薬密売人その他の犯罪者が含まれている」とされたセキュアフォン販売会社Ennetcom社長を逮捕するなど、他のセキュアフォン販売会社にも捜査の手が伸びつつあるとMotherboardは報じています。

by Francois Marcotte