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中国は台湾の半導体メーカーから年間100人以上の技術者を引き抜いている


中国の半導体メーカーが、台湾の大手半導体メーカーであるTSMCから、年間100人以上ものペースで技術者などを引き抜いていると報じられています。

China hires over 100 TSMC engineers in push for chip leadership - Nikkei Asian Review
https://asia.nikkei.com/Business/China-tech/China-hires-over-100-TSMC-engineers-in-push-for-chip-leadership

Nikkei Asian Reviewは2020年8月12日に、「中国政府の支援を受けた2つのチップメーカーQuanxin Integrated Circuit Manufacturing(QXIC)と、Wuhan Hongxin Semiconductor Manufacturing Co.(HSMC)が、TSMCで働いていたベテランのエンジニアやマネージャーを、1年の間にそれぞれ50人以上雇い入れました」と報じました。


台湾を拠点とするTSMCは、次世代通信規格「5G」対応スマートフォンの登場や、新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークが活発化したことに伴うサーバーの需要増を背景に、2020年4~6月期の純利益が過去最高の1208億台湾ドル(約4400億円)に達するなど、世界最大の半導体製造ファウンドリです。

TSMCの顧客にはApple、Huawei、Qualcomm、Googleなどの大企業が名を連ねており、同社の生産能力はアメリカの半導体最大手であるIntelをも上回っているとされています。

一方、それぞれ2017年と2019年に設立された中国の半導体メーカーであるQXICとHSMCは、業界外ではほとんど名前が知られていない企業。Nikkei Asian Reviewは両社について「中国では最先端のメーカーですが、TSMCに比べると2~3世代は遅れをとっています」と評しています。


そこで中国の半導体メーカーは、台湾の半導体メーカーとの間にある遅れを埋めようと、TSMCの技術者らに元の2~2.5倍以上の給料やボーナスを与えて、人材と技術の吸収を進めているとのこと。

Nikkei Asian Reviewに情報を寄せた関係者は、「ベテランスタッフが多少引き抜かれても、TSMCの業界トップの座はすぐには揺らぎませんが、同社は人材の喪失を強く警戒しています。TSMCが特に問題視しているのが技術流出で、その危機感の強さは『自社向けに開発した製造機器を中国に売らないこと』を誓約する署名を関連会社に迫ったほどです」と話しています。

特に、TSMCの最も先進的な5nmプロセスの製造プラントの目と鼻の先に、QXICが新しい研究拠点を構えた際には、TSMCは非常に強い不快感を示したとのこと。


Nikkei Asian Reviewは、中国の半導体メーカーの人材戦略について、「QXICやHSMCのような中国の新興半導体メーカーは、国家の半導体プロジェクトに貢献していることを中央政府に証明するため、地方自治体の支援のもとで激しい競争と優秀な人材獲得にまい進しています」と指摘しました。

TSMCはNikkei Asian Reviewの取材に対し、「従業員はTSMCの最も重要な資産です。その人材を守るため、当社は従業員にやりがいがある前向きな職場環境と、長期的なキャリア開発を提供することを約束しています。また、企業として法律の範囲内で最大限の競争をしますが、もし他社がTSMCの知的財産権を尊重しなければ、適切な保護措置をとることになるでしょう」と述べました。

一方、HSMCとQXIC両社はいずれもコメントの要求に応じなかったとのことです。

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in ハードウェア, Posted by log1l_ks

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