NVIDIAによる半導体設計・Armの買収は「非常に悪いアイデア」
ソフトバンクグループが傘下の半導体設計企業・Armの売却について、グラフィックカードなどを製造するNVIDIAと協議を続けていると報じられました。これについてAndroid関連メディアのAndroid Centralが、「NVIDIAによるArm買収は非常に悪いアイデア」と指摘しています。
Talks between NVIDIA and SoftBank over the sale of Arm Holdings may have advanced, but this is still a very bad idea | Android Central
https://www.androidcentral.com/nvidia-buying-arm-really-bad-idea-buying-arm-really-bad-idea
2020年7月14日、ソフトバンクグループが傘下にあるArmの売却を検討していると報じられました。
ソフトバンクがArmの売却を検討 - GIGAZINE
by MIKI Yoshihito
その後、Armの買収に興味を持っているのではとウワサされていたAppleは買収に興味を示しておらず、NVIDIAが買収に関心を示しているとBloombergが報じました。
Appleに「Arm買収の意思はない」という報道 - GIGAZINE
そして新たにBloombergは、「NVIDIAとソフトバンクグループの間で買収に関する交渉が進められており、今後数週間で合意に達する可能性がある」と報じています。
NVIDIAはほぼ独力でゲーム業界をけん引するほど強力なグラフィックカードを開発しています。NVIDIAのグラフィックカードはゲーミングPCだけでなく、機械学習向けのサーバーや自動運転車、ロボット、Android TVなどにも採用されています。NVIDIAはグラフィックカードだけでなくコンピューティング用の高速CPUとGPUを組み合わせた非常に優れたARMアーキテクチャベースのチップも製造しており、そのうちのひとつである「Jetson Xavier NX」は、記事作成時点で購入可能なもののうち最も強力なARMベースのチップの1つであるとのこと。
NVIDIAがArmを買収する上で問題となるのは、Armが複数の企業にARMアーキテクチャをライセンスしているという点だとAndroid Centralは指摘。ARMアーキテクチャはAndroid端末やiPhoneといったスマートフォンだけでなく、何百万台ものサーバーやRaspberry Piなどのシングルボードコンピューター、Google Nest MiniなどのIoTデバイスのチップにも広く採用されています。
Armは多くの企業にARMアーキテクチャをライセンスしているため、アメリカやイギリスの規制当局が独占禁止法に基づき「ライセンスを継続すること」を買収の条件にすることは間違いないと見られています。しかし、NVIDIAを含むARMアーキテクチャベースのチップを製造する企業は、将来的なARMアーキテクチャの設計が、自社の開発に有利に働くことを望んでいます。そのため、ARMアーキテクチャの設計がNVIDIAのチップ開発を優先するようなものとなれば、QualcommやSamsungといった企業によりもたらされてきたイノベーションがすべて阻害される可能性があり、これは業界全体を停滞させることにつながるとAndroid Centralは指摘。
Android Centralは「規制当局がNVIDIAによるArmの買収を許可しない必要があります」と述べ、Armの買収先として最も理想的な企業として「チップ開発を行っていない中立的な企業」を挙げています。
「NVIDIAは素晴らしいグラフィックカードと伝説的なAndroid TV端末を開発し続ける必要がありますが、世界中の多くのテクノロジー企業が依存するARMアーキテクチャの設計には関わらないでください」とAndroid Centralは記しました。
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