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環境破壊がなぜパンデミックを生み出すのか?


世界中で新型コロナウイルス感染症の流行が拡大しており、「パンデミック」についての研究が盛んに行われています。このパンデミックの引き金となる「動物から人間への感染」が発生するメカニズムについて、アメリカのニュースメディアVoxがムービーで解説しています。

How humans are making pandemics more likely - YouTube


我々の体内にはあらゆる種類の細菌やウイルスが生息しており、その一部は病気を引き起こします。


この状況は、動物の体内でも同様です。


病原体がある動物から全く異なる種の動物にうつる場合、免疫を悪用することがあります。


動物から人間にうつる病原体によって発生する病気は「人獣共通感染症(ズーノーシス)」と呼ばれます。ウエストナイル熱エボラ出血熱も人獣共通感染症の一種です。


新型コロナウイルス感染症も、人獣共通感染症ではないかといわれています。


新型コロナウイルス感染症が人獣共通感染症と疑われる理由は、アウトブレイクを引き起こすウイルスの大半は人獣共通感染症であるため。1980年以降、人獣共通感染症のアウトブレイクは増え続けています。


アウトブレイクを増やしている原因は何なのでしょうか。


コレラやエボラ出血熱などのパンデミックの歴史を調べ上げた著作「Pandemic」で知られるソニア・シャー氏によると、パンデミックの発生確率を引き上げる人類の行動はいくつか考えられるとのこと。


その1つが、「土地利用」です。1700年以降、人類が利用している土地の面積は年々増加しており、特に1900年以降は爆発的に利用面積が拡大しました。


我々は何も存在しなかった砂漠にすら都市を拡大し……


森林を伐採し……


農業のために土地自体を作り替えています。


時には戦争の結果として森林伐採などが生じることもあります。1990年代に生じたリベリア内戦によって、ギニア共和国シエラレオネ共和国リベリア共和国の3カ国が接していた森に多数の難民が逃げ込みました。


難民たちは家を作るために森林を伐採し、木炭の作成や農業などに使いました。


森林が伐採されてしまったことは、衛星写真でも確認できます。この地域は1973年には一面緑色でしたが……


1999年には、写真はやや茶色がかって見えます。これは、森林が伐採されてしまったことが原因です。


この地域の中には、2013年にエボラ出血熱のアウトブレイクが始まったと考えられているMeliandou村がありました。


Meliandou村もまた森林を切り開いてできた村です。そして、この付近は野生のコウモリの生息域だったことが問題を生みました。


最初のエボラ出血熱の犠牲者と考えられているのは、エミールという名前の少年です。エミールはエボラウイルスを有していたコウモリの体液に接触した後に亡くなりました。


エボラ出血熱はエミールの家族からMeliandou村に急激に広まり、近隣の村に拡散したとされています。


このように野生動物の生息域に人間が侵出した場合、野生動物からの感染確率が増え、アウトブレイクの発生確率は高くなります。


しかし、ほとんどの場合は、人間が生息域に侵出してきた場合、野生動物は生き残ることはできません。絶滅にひんしている鳥類の49%、哺乳類の45%、爬虫類と両生類の48%において、生息域の減少こそが個体数減少の原因だとされています。


このような人間の侵出によって野生動物が絶滅し、種の多様性が低下した場合にも、間接的に人獣共通感染症が流行してしまうことがあります。


ウエストナイル熱を例にとれば、この病気はアフリカ大陸からアメリカ大陸北部まで夏季に移動する渡り鳥から、渡り鳥の血を吸った蚊を経由して人類に感染が広がります。


ウエストナイル熱がアメリカで初めて流行したのは1999年のことで、1999年以前にはアメリカでウエストナイル熱が広まることはありませんでした。


アメリカでウエストナイル熱が広まらなかったのは、「多様な種の鳥が生息していた」ことが原因だと考えられます。鳥の種が多様であれば、特定の種がウエストナイル熱を広めたとしても、ウエストナイル熱に感染しない種の存在によって、鳥類全体にウエストナイル熱が拡散することは避けられます。


しかし、アメリカでは近年鳥の多様性が低下しており、ウエストナイル熱に感染しないキツツキクイナはかなり珍しいものになる一方で、ウエストナイル熱に感染するカラスやコマツグミが増えています。こういった状況が、ウエストナイル熱の流行を生み出したとのこと。


1999年以前では、アメリカ国内でウエストナイル熱による死者が出たことはありませんでした。しかし、1999年に国内初となる死者が出て以降は毎年死者が出ており、2002年には死者数が300人近くにまで達しました。


人間と野生動物が共生しているような地域は、次代のパンデミックを生み出しかねない状況にあります。このような地域でパンデミックが発生しないようにできることは、注意深く監視することです。


しかし同時に、将来のパンデミックを阻止するという取り組みは、人間と自然との共存を考え直させるきっかけでもあります。人類が生存圏を拡大するにつれて、野生動物の命が失われてしまいます。


そしてそれは、人類の命にも跳ね返ってくるというわけです。

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in 生き物,   動画, Posted by darkhorse_log

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