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寒い日には「怒っているツイート」が多くなるという研究結果


人間の行動や感情には「気温」が大きな影響を与えることがこれまでの研究から知られており、気温が上昇するとメンタルヘルスの問題が起きやすくなるとの研究結果や、気温の高い日には交通事故や暴力事件による死亡者数が増加するという研究結果も発表されています。ところが、「Twitter上のツイート」と気温の関係について調査した新たな研究からは、「気温が低い日の方が怒っているツイートが多くなる」ことが判明したとのことです。

In Cold Weather We Bark, But in Hot Weather We Bite: Patterns in Social Media Anger, Aggressive Behavior, and Temperature - Heather R. Stevens, Petra L. Graham, Paul J. Beggs, Ivan C. Hanigan,
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0013916520937455

Anger is all the rage on Twitter when it's cold outside (and on Mondays)
https://theconversation.com/anger-is-all-the-rage-on-twitter-when-its-cold-outside-and-on-mondays-141589


人口およそ2500万人のオーストラリアでは、全人口の70%以上に当たる1800万人が何らかのソーシャルメディアを利用しており、人口の20%近くに当たる470万人ほどがTwitterのユーザーです。Twitterは研究者らにとって非常に分析がしやすいソーシャルメディアだそうで、マッコーリー大学シドニー大学の研究チームは、ソーシャルメディアの投稿内容を感情に基づいて分析する「We Feel」というツールを使って研究を行いました。

Twitter上のツイートは投稿された日付や時刻、場所、年齢や性別と関連付けることが可能であるため、それぞれの都市や国といった枠組みにおける「ユーザーの全体的な感情の傾向」を読み取ることが可能です。研究チームは、2015年から2017年にかけてオーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州でつぶやかれた7420万件の英語のツイートについて、We Feelを用いて感情の分析を実施したとのこと。

分析対象となった7420万件のツイートのうち、全体の3.87%に当たる287万件のツイートには「hated(嫌い)」「disgusted(うんざり)」「f*cked(クソ)」といった、怒りと結び付くワードが用いられていました。研究チームは怒りの感情を含んだツイートの数と、ニューサウスウェールズ州における気温の変化を照合しました。


研究チームによると、怒ったツイートの数が最も多かったのは最高気温が15度以下の寒い日であり、最高気温が25度~30度の範囲だと怒ったツイートが最も少なかったそうです。最高気温が35度を超えるとわずかに怒ったツイートの数が増加したそうですが、最高気温が35度を超えた日のサンプル数が少なかったことから、この傾向はそれほど確実ではないと研究チームは指摘しています。

怒ったツイートの数は、調査期間中で最高気温が最も低かった10日間の平均で1日当たり3354件、最高気温が最も高い10日間の平均で1日当たり2482件と、最高気温の違いが怒ったツイートの数と大きく関係していることが判明。気温が高くなると人々の身体的な攻撃性が増すという結果が明らかになっている一方で、Twitter上の攻撃性は寒い日の方が増しているとのこと。


身体的な攻撃性とTwitter上の攻撃性に違いが表れた理由について、研究チームは2つの仮説を提案しています。1つは「暑い日と寒い日に引き起こされる心拍数、脳の酸素量、テストステロンなどのホルモン分泌量、睡眠の量といった生理的反応の違いにより、一部の人は寒い日にTwitter上での攻撃性が増す」というもの。

もう1つは、「天候の違いが人々の行動に影響を与え、結果として気温が低い日の方が攻撃的なツイートが増す」というもの。暖かい日に暴力的な犯罪が増えるのは「人々が屋外で過ごす時間が長くなり、人と関わる頻度も増え、飲酒量が増えることが原因だ」と示唆する研究があることから、長時間屋外で他の人と一緒にいるとツイートをする機会やモチベーションを失う可能性があると研究チームは指摘しています。

また、アルコールの摂取によって細かいスマートフォンの操作が面倒になり、ツイートの作成が減ることも考えられます。この仮説は、暑い日や週末に怒っているツイートおよび全体的なツイートの数が減少している事実とも合致します。


また、今回の結果はTwitterユーザーと攻撃的な犯罪を実行する人との人口統計的な違いによるものだとの指摘もあります。暴力的な犯罪者は社会経済的に恵まれない若い男性の可能性が高い一方で、Twitterユーザーの約半数は女性であり、他のソーシャルメディアと比較して中年層が多く、収入の高いユーザーが多いとのこと。こうした社会的および人口統計的な違いが、気温に対する反応にどのような違いをもたらすのかについて、研究チームは調査を進めているそうです。

今回の研究は主に気温と怒ったツイートの関係に焦点を当てたものでしたが、研究チームは「怒ったツイートの平均数は月曜日に最も多い」「政治的なイベントや銃乱射などの悲惨な事件、大きなスポーツイベントの後に怒ったツイートが増える」といった傾向も発見しています。

研究チームは、「私たちの研究は、Twitterユーザーが必ずしも幅広い人口を代表しているわけではないという点で制限されていました。たとえばTwitterは政治家や学者、ジャーナリストといった人々に好まれるメディアであり、これらのユーザーは他のソーシャルメディアユーザーと異なる感情表現をしたり、感情表現をしなかったりするケースもあります」と認めています。それでも、「ソーシャルメディアで最も影響力を持つ感情は『怒り』」との研究結果もあることから、気温の変化に伴って増加するソーシャルメディア上の怒りが、より広い人口に影響を与える可能性があるとのことです。

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in モバイル,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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