メモ

「政治的二極化」はなぜ生じるのか?


政治的な言論は「右翼的」「左翼的」とひとまとめにされる傾向があり、実際に右翼や左翼という人々は似通った意見を有しています。このような政治的二極化がなぜ生じるのか、複雑系に関する研究を行っているオーストリアの機関Complexity Science Hub Vienna(CSH)の研究チームが解説しています。

A Weighted Balance Model of Opinion Hyperpolarization
http://jasss.soc.surrey.ac.uk/23/3/5.html

A Weighted Balance Model of Opinion Hyperpolarization – David Garcia
https://dgarcia.eu/2020/04/22/a-weighted-balance-model-of-opinion-hyperpolarization/

A new theory about political polarization
https://phys.org/news/2020-06-theory-political-polarization.html

アメリカに代表される二大政党制のように、政治に関する「ある程度の二極化」は民主主義にとって正常で、有益だと考えられています。しかし近年、右翼と左翼はこれまで以上にかけ離れた政治的見解を持つようになっています。また、ひとくちに「右翼」「左翼」といっても、これまでは多種多様な主張が存在してきましたが、近年は「右翼といえばこういう意見」「左翼といえばこういう意見」と主張の多様性がなくなり、似通った意見が増えてきたと指摘されています。

CSHの研究チームは、このような政治的二極化の原因は「バランス理論」にあると説明します。バランス理論はアメリカの心理学者であるフリッツ・ハイダーによって提唱された「人間は対人関係において認知関係のバランスを保持しようとする」という心理学理論です。

バランス理論では、「人間は『他人に対する好意』と『意見に対する好意』のバランスが保たれている状態を求める」とされます。例えば「『自分が好きな人』が『自分が好む政治的見解を持っている』」という場合は、他人に対する好意と意見に対する好意が一致しているため、認知関係のバランスが保持され、心理的な状態は安定します。同様に、「『自分が嫌いな人』が『自分が嫌う政治的見解を持っている』」という場合にも、他人に対する好意と意見に対する好意が一致しているため、心理的に安定します。

しかし、「『自分が好きな人』が『自分の嫌う政治的見解を持っている』」または「『自分が嫌いな人』が『自分の好きな政治的見解を持っている』」という場合には、認知関係のバランスが崩れ、心理的に安定しない状態となってしまいます。このような状況では、人は自分の感情のバランスを回復するために、相手に自分の意見を合わせるとのこと。


研究チームはシミュレーションによって、バランス理論が成立している状況では、同じ好意を持つグループ内で意見が徐々にまとまり、まとまったグループ同士が敵対。徐々にグループ同士の対立が深まることを示したとのこと。以下はそのシミュレーションを視覚化したもので、X軸Y軸Z軸はそれぞれ異なる政治的問題に対する賛成の度合いを表しています。バランス理論を前提とした状況下では、3つの政治的問題に対する異なる見解を持つ各点がまとまって2つのグループとなり、最終的に対立が深まることが視覚的に理解できます。

Emergence of Hyperpolarization from Weighted Balance - YouTube


研究チームの1人であるデヴィッド・ガルシア氏は、「プロチョイス(中絶権利擁護派)だという人は、同性婚に賛成で、なおかつ原子力エネルギーやマリファナには反対している可能性が非常に高いといえます。それぞれは別個の政治的問題であるため、それぞれの問題に対する賛成・反対の組み合わせは複数考えられるはずですが、政治的二極化によって実際の組み合わせの数はより少数です」と述べています。

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in メモ,   動画, Posted by darkhorse_log

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