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ドイツ政府が新型コロナウイルス接触追跡アプリをリリース


ドイツ政府が現地時間の2020年6月16日(火)に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した人と接触した可能性のある人を追跡・通知するための「新型コロナウイルス警告アプリ」をリリースしました。ドイツ政府は「政府の大臣も使用できるほどとても安全」と主張していますが、同時に「アプリは万能薬ではない」として、マスクの着用などの必要性を説いています。

Bundesregierung | Coronavirus warning app | Helps us in the fight against corona
https://www.bundesregierung.de/breg-de/themen/corona-warn-app/corona-warn-app-englisch/helps-us-in-the-fight-against-corona-1759110

Coronavirus tracing app a test for privacy-minded Germany
https://apnews.com/fd6cc8a04ae77185110cf8d70cf585a1

Germany launches coronavirus app as EU eyes travel revival - Reuters
https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-germany-app/german-coronavirus-smartphone-tracing-app-goes-live-idUSKBN23N160

Coronavirus Contact-Tracing Apps Launch Across Europe Amid Hopes for Broad Adoption - WSJ
https://www.wsj.com/articles/coronavirus-contact-tracing-apps-launch-across-europe-amid-hopes-for-broad-adoption-11592319612

ドイツ政府による新型コロナウイルス警告アプリは、App StoreおよびGoogle Playからインストールすることが可能です。


世界中の国々が都市封鎖(ロックダウン)や社会的距離(ソーシャルディスタンス)を保つ戦略により、新型コロナウイルスの脅威を鎮火しようとしています。しかし、ロックダウンを長く続けると経済が大きなダメージを受けるという指摘もあり、人々が生きていくには再び経済を再開する必要があります。日本でも長く続いた緊急事態宣言が解除されましたが、新型コロナウイルスの第2波は常に警戒されており、再び大規模な感染爆発が起こらないように、新規感染者を素早く発見しクラスターの発生を防ぐことが重要となります。

そんな新型コロナウイルスの第2波を防ぐための重要なツールとして期待されているのが、ドイツ政府のリリースした新型コロナウイルス警告アプリです。機能としては他の接触追跡アプリと同じように、新型コロナウイルスに感染した可能性のある人と接触した人に、「新型コロナウイルスに感染している可能性がある」と通知することで、感染者の拡大を防ぐことを目的としたアプリです。


しかし、欧州連合(EU)は個人情報の保護を強化するための強力な法律であるEU一般データ保護規則(GDPR)を持っているため、「ドイツの新型コロナウイルス警告アプリは法的および文化的な障害に直面している」と、AP通信は報じています。

ドイツでは死後も個人情報に対する権利が法律により保護されているため、新型コロナウイルス警告アプリは「ドイツの特別な挑戦である」とAP通信は表現しています。実際、ドイツ政府が新型コロナウイルス警告アプリでスマートフォンの利用する基地局情報およびGPS情報を使用すると提案した際、すぐに大きな反発が生まれました。独立データ保護財団の長であるフレデリック・リヒター氏は「人がどこにいるのかをリアルタイムで追跡するという案は、中国の監視システムを想起させます」と述べ、ドイツでなぜ反発が起きたかを説明しました。また、AP通信は「政府による個人情報の収集は、ナチス・ドイツドイツ民主共和国(東ドイツ)時代に反体制派を迫害するために政府が大量の個人情報を収集していたという過去を思い出させる」とも指摘しています。

そのため、ドイツ政府による新型コロナウイルス警告アプリは、位置情報を使用せずにBluetoothで近くに存在する端末同士を検知し、「感染者と接触した可能性のある人物」を特定するという手法が取られています。これはAppleとGoogleが共同開発した新型コロナウイルス接触追跡システムと同様の手法です。なお、ドイツ政府の新型コロナウイルス警告アプリでは、新型コロナウイルスに感染した人物と少なくとも15分以上接触した可能性のある人物に「感染している可能性がある」と警告する仕様となっています。


アプリの開発者は最新のテストで、80%の精度で感染者と濃厚接触した可能性のある人物を識別したと主張していますが、感染者と接触していたものの通知されなかった人物や、社会的距離の目安とされている2メートル以上離れていたにもかかわらず「感染している可能性がある」と通知された人もいるそうです。そのため、ドイツのイェンス・スパーン保健大臣は「このアプリは万能薬ではありません。しかし、パンデミックを抑えるための重要なツールとなります」と語り、フェイスマスクの着用や手動での接触追跡も引き続き必要になると主張しています。

ドイツ政府によると新型コロナウイルス警告アプリの開発には2000万ユーロ(約24億円)が投じられており、システムの維持には毎月250万~350万ユーロ(約3億~4億2000万円)が必要になるそうです。ドイツ政府が「政府の大臣も使用できるほどとても安全」と主張するように、ドイツの新型コロナウイルス警告アプリはアプリが収集した情報をサーバー上で一元管理するのはなく、端末上にのみ保存します。そのため、プライバシーの保護がなされておりフランク=ヴァルター・シュタインマイアー大統領も新型コロナウイルス警告アプリを使用していることを公表しています。一方、フランス政府による新型コロナウイルス接触追跡アプリは情報をサーバー上で管理しているため、プライバシー面でリスクがあるという指摘があります。

なお、ドイツでは新型コロナウイルス対策が近隣他国よりも成功しており、新型コロナウイルスによる死者数はイギリスの5分の1、イタリアの4分の1程度に抑えられています。ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、2020年6月時点でのドイツにおける新型コロナウイルス感染症の症例数は約19万件で、死亡者数は8800人です。

また、ドイツ公共放送連盟による世論調査によると、国民の42%が政府による新型コロナウイルス警告アプリを「使用する」と回答しており、「使用しない」と回答した人(39%)よりも多いことが明らかになっています。


なお、EUも国境をまたいで機能する新型コロナウイルス接触追跡アプリを開発しており、同アプリではドイツ政府の開発した新型コロナウイルス警告アプリなどとの連携も行われる予定です。ただし、フランス政府による新型コロナウイルス接触追跡アプリはデータがサーバー上で一元管理されているため、EUの新型コロナウイルス接触追跡アプリとは連携できない可能性があります。

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in モバイル,   ソフトウェア, Posted by logu_ii

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