メモ

劇的に組織内の「過負荷」状態を改善し生産性を向上させたハーバード大学とMITの手法とは?


仕事における生産性向上は重要課題ですが、1980年以前の「従業員を忙しくしておくことで生産性が上がる」という考えは、技術化が進んだ現代では既に時代遅れになっています。実際には人に過大な負荷をかけると創造性や生産性が低下し、締め切りや目標が達成しづらくなると研究で示されているということで、現代において生産性を上げるアプローチを、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学が共同で運営する研究機関「ブロード研究所」のシェイラ・ダッジ氏らがつづっています。

Breaking Logjams in Knowledge Work
https://sloanreview.mit.edu/article/breaking-logjams-in-knowledge-work/


ブロード研究所は、大きく分けて、「がんや糖尿病の起源について解き明かすカギとなる遺伝情報を研究するプログラム」と「血液や組織のサンプルを解析しDNAシーケンスを特定することで研究をサポートするテクノロジープラットフォーム」という、2つの組織構造を持ちます。

このうち後者のテクノロジープラットフォームでは、DNAシーケンシングの技術が発達したことで、2012年には1日にさばくサンプルの数が120件以上に増加。ラボでは業界の需要に応えてサンプル解析を行うことが不可能になり、協力して作業している他機関の研究者は、サンプルの解析を行うために他の研究所を利用せざるを得なくなりました。


この問題を解決するためにブロード研究所の取った解決策が、DNAシーケンシング作業のスケジューリングにおいて「プッシュ型」システムではなく、「プル型」システムを採用することでした。

タスク管理やマネージメントにおいて、プッシュ型は「使う人が何もしなくてもこっちから勝手に何かをするやり方」、プル型は「使う人からのアクションがあって、はじめてこちらも動き出すやり方」と説明されます。プッシュ型は進行管理において「次のステップにいる人」が準備できているかどうかにかかわらず「作業を押して渡す」ことになるので過負荷を起こしがち。一方で、プル型はシステム内の仕事量が慎重にコントロールされ、透明性が高められるため、生産性を向上させることが可能とのこと。


プル型が導入される前のブロード研究所では、サンプルが到着するとまず、誰かが取りかかれるまで「待機」の状態に置かれました。その後、サンプルは次のステップに移行することになりますが、ここでもDNAシーケンシングや解析を行う機械に向かうまで「待機」する必要があります。

このステップの中で、サンプルは仕掛品在庫(WIP)として積み上がっていきました。各ステップは理論的には作業をスムーズに進めるはずなのですが、実際には在庫があふれ、サンプルの特定に2日かかるといった弊害が生じ、全体のパフォーマンスが悪化。混乱を管理するために指示を行う人々は多くの時間を必要としました。

プッシュ型の場合、各ステップで作業を行う人は、毎日積み上がったタスクの中から最優先タスクを決定し取り掛かることになります。しかし、各ステップでの「最優先タスク」が全体で共有されていないと、1つのステップで最優先タスクとして処理されたものが別のステップで「優先度の低いタスク」として扱われ、次のステップに向かうまでに数週間から数カ月かかることになり、全体としての循環が悪くなるという点が問題でした。

また、あるステップで最重要タスクとして処理したものが次のステップで「優先度が低いタスク」として扱われたくないと考えた人は、タスクを「特別扱い」として次に渡すことも。しかし、これにあわせ他のサンプルを「優先度の低いもの」として扱った結果、後回しにされた在庫は時間的な余裕がなくなり、次の「最重要タスク」となってしまうという、負のサイクルを生み出していました。


そこで、「プッシュ型は各ステップの進行速度と生産性にばらつきがあり、管理者が効率化のために知るべき情報を把握できない」という問題を改善するため、ブロード研究所では「プル型」が採用されることになりました。

プッシュ型では、各ステップのオペレーターは周囲を気にせず自分のタスクだけに集中しますが、プル型では他のステップにおける在庫状況を気にする必要があります。そして各ステップのオペレーターの報告を受けて管理者が「短期的な生産性」と「長期的に得られるもの」をてんびんにかけて在庫の最大量の調整を行います。

ブロード研究所におけるプル型の実装は、各ステップにおいて「生産作業全体と自分たちの作業の進行状態の関係」を可視化することから始まりました。全てのオペレーターが緑・黄・赤に色分けされた「仕掛品在庫ボックス」を持ち、ボックスの状態で「サンプルを受け入れていいのか」「受け入れをストップさせるべきなのか」を明確に示しました。各オペレーターは1日の作業が終わると、他の人の作業の進捗を確認し、助けを必要としている人がいるかどうかを特定することで、システム全体の状態を評価可能なっているとのこと。

このようなシステムの中で「過負荷」が起こることは、プロセスの上流あるいは下流に「作業が速すぎる/遅すぎる」という問題があることを意味します。各ステップにおける可視化することで、全体を管理する人が問題を解決しやすくなるのも、プル型の利点の1つです。


プル型の導入により、DNAシーケンシングを行うためのマシンの使用率が即座に、ほぼ倍にまで上がったとのこと。2018年時点でマシンの利用率が90%を下るのはまれで、多くの日は95%以上となっています。より速く、予測可能で、透明性の高いプロセスによって安定性とともに競争上の優位制も生まれたそうです。

MITで上記の例を語ると、ダッジ氏は必ず「あなたはこの方法でうまくいきましたね。でもそれは私の組織では機能するでしょうか?」という質問を受けるそうですが、それに対してダッジ氏は「私たちが教える内容は人がいる組織であれば機能します」と回答しています。

トヨタを始めとするアジアの企業はMITが開発したリーン生産方式を利用していますが、多くは製造やサプライチェーンのオペレーション能力の最大化を目的にしています。リーン生産方式やそのほかの品質管理の手法が機能するのは、「製造活動を組織するよい手法」だからではなく、「人間活動を組織するよい手法」だからですが、多くの人がこのメッセージを見逃しているとダッジ氏は指摘しました。

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in メモ, Posted by logq_fa

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