もし宇宙ロケットの燃料タンクが透明だったら消費される燃料はどんな感じに見えるのか?
宇宙まで飛行して貨物や人員を輸送する宇宙ロケットの打ち上げには、重力に逆らって機体と荷物を宇宙空間まで持っていくために膨大な量の燃料が必要となります。打ち上げで消費される燃料がどのように見えるのかを、4種類の宇宙ロケットの機体を「透明」することでわかりやすく示したムービーが、YouTubeで公開されています。
If Rockets were Transparent - YouTube
ムービーはケネディ宇宙センターの宇宙船発射場に4種類のロケットが並んでいる様子から始まります。ロケットの種類は、左から1967年から1973年にかけてアポロ計画などで使用された使い捨て方式の液体燃料多段式ロケット「サターンV」、NASAが1981年から2011年にかけて135回打ち上げた有人宇宙船の「スペースシャトル」、宇宙輸送業務を手がけるスペースXが2018年から打ち上げている大型ロケットの「ファルコンヘビー」、NASAがスペースシャトルの後継機として開発中の打ち上げロケット「スペース・ローンチ・システム」です。
以下が実際のサターンV
by NASA's Marshall Space Flight Center
スペースシャトル
by NASA Goddard Space Flight Center
ファルコンヘビー
by Daniel Oberhaus
スペース・ローンチ・システムです。なお、スペース・ローンチ・システムは実際に打ち上げられたことはないため、以下の画像は想像図となっています。
by NASA's Marshall Space Flight Center
ムービーでは、燃料タンクの中身は種類ごとに色分けされています。赤色がケロシン系ロケット燃料であり、アメリカで広く使われている「RP-1」。オレンジ色がロケットエンジンの推進剤として使われている「液体水素(LH2)」、水色が液体水素の酸化剤として使用される「液体酸素(LOX)」です。
なお、RP-1を使用しないスペースシャトルとスペース・ローンチ・システムには、液体燃料のほかに固体燃料を用いた補助ロケットが2基搭載されています。これは、両機が使用する液体水素の密度が低いため、巨大になってしまう燃料タンクの重量をサポートするためのブースターだとのこと。
カウントが始まり、4種類のロケットが同時に発射します。スペースシャトルとスペース・ローンチ・システムでは、補助ロケットからも勢いよく炎が噴き出ているだけでなく、ブースターの内部で燃焼する炎も再現されていました。
発射から2分ほど経過すると、スペースシャトルとスペース・ローンチ・システムの補助ロケットが切り離されました。多段式ロケットでは、使い切った燃料タンクやモジュールを捨てることで全体の重量を軽くして、余分な燃料を使わないようにする工夫が施されています。
補助ロケットを切り離したスペースシャトルとスペース・ローンチ・システムのメインエンジンは、液体水素と液体酸素を混合して燃焼し、大量のエネルギーと水を生成します。
発射から2分30秒ほどが経過すると、サターンVが第一段ロケットを、ファルコンヘビーが補助ブースターを切り離しました。
それと同時に、第二段ロケットが噴射を開始して推進を続けます。
サターンVでは第一段ロケットが切り離されてから30秒ほど経過すると、第一段と第二段の接続リングが投棄されます。
そして発射から3分以上が経過したころ、ファルコンヘビーが第一段ロケットを切り離し……
サターンVは緊急脱出用ロケット(LES)を切り離しました。
いずれの機体も、発射時と比較してかなり身軽な状態になっています。
やがてファルコンヘビー本体の外壁が外れ……
中からは赤いテスラ・ロードスターが現れました。これは、2018年の初打ち上げ時に、スペースXとテスラでCEOを務めるイーロン・マスク氏が所有するテスラ・ロードスターをダミーのペイロードとして搭載したことにちなんだもの。
背景が宇宙っぽさを増していく中、次第に燃料タンクの中身は少なくなっていきます。
燃料タンクの中身が残っているにもかかわらずファルコンヘビーの燃焼が停止していますが、これはファルコンヘビーの第二段ロケットが軌道によって停止、着火を複数回繰り返すことが可能なことを表している模様。
そして、ついにスペースシャトルとスペース・ローンチ・システムのエンジン燃焼が終了。
スペースシャトルは燃料タンクを切り離し……
スペース・ローンチ・システムも第二段ロケットを切り離しました。
スペース・ローンチ・システムからは脱出モジュールも切り離され……
非常に身軽な状態に。
そしてサターンVが第二段ロケットを切り離しました。
打ち上げの過程でいずれのロケットも巨大な燃料タンクの中身を消費しつつ余分なモジュールを切り離し、発射時と比べて非常に小さくコンパクトになっていく様子が一目でわかるムービーとなっていました。
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