私財650億円超を費やしたもののキャンセルされた電気自動車プロジェクトについてジェームズ・ダイソンが語る
「吸引力の変わらないただ一つの掃除機」や、羽のない扇風機などで有名なダイソンが、2017年に電気自動車(EV)の生産計画を発表しました。その後、EV開発プロジェクトはキャンセルされたと報じられていたのですが、ダイソンの創業者であるジェームズ・ダイソン本人がインタビューの中で志半ばで断念されることとなったEVプロジェクトについて語っています。
James Dyson interview: how I blew £500m on electric car to rival Tesla | Rich List | The Sunday Times
https://www.thetimes.co.uk/article/james-dyson-interview-electric-car-tesla-tzls09t5m
Dyson finally unveils its canceled electric car | Engadget
https://www.engadget.com/dysons-electric-car-n526-085341772.html
2016年時点で複数の海外メディアから「ダイソンが電気自動車を開発中」と報じられていたのですが、2017年9月にはダイソンが公式に「過激な」EVを生産する計画を発表しました。ジェームズ・ダイソン氏はEVプロジェクトに20億ポンド(当時のレートで約3000億円)の予算を投じ、同社初のEVは2020年に発表すると説明していました。
サイクロン掃除機のダイソンが2020年から「過激な」電気自動車を生産すると発表 - GIGAZINE
しかしその後、2019年10月に従業員宛に送られたメールの中で、ダイソンのEVプロジェクトが終了したことが明かされています。
ダイソンが電気自動車プロジェクトを断念 - GIGAZINE
そして新たに、イギリスの日刊紙・The Timesのインタビューの中で、ダイソン氏は同社のEVプロジェクトがキャンセルされたことを正式に認めました。
インタビューによると、ダイソンで開発されていたEVのコードネームは「N526」で、1度の充電で600マイル(約965km)もの距離を走行可能な7人乗りEVであったそうです。ダイソン氏によると、「2月の氷点下の夜に、高速道路を時速70マイル(時速約110km)で走行しながら、暖房とラジオをつけてもこのパフォーマンスを維持できる」ものだったとのことです。このハイパフォーマンスを支えているのはダイソンが独自開発したソリッドステートバッテリー(全固体電池)です。なお、ダイソンのEVはテスラに対抗すべく開発されていたものであり、テスラのモデルSが1度の充電で走行できる距離は379マイル(約609km)、N526と同じ7人乗りのモデルXの場合は314マイル(約505km)となっており、N526のバッテリー性能の高さは特筆すべきものとなっています。
N526の車体重量は約2.6トンですが、シャーシにアルミニウムを採用しているため、停止した状態からわずか4.8秒で時速100kmまで加速可能。最高速度は時速約200kmです。200kWの電気モーターが2機搭載されており、ブレーキ馬力は536BHP、トルクは480ポンド・フィートです。
EVプロジェクトではプロトタイプのEVも開発されており、ダイソン氏は試乗したことも明かしています。ダイソンのEVに関する特許から、同社の開発するEVは現代のレンジローバーに似た車体になることが予想されていました。
ダイソンの開発するEVのスペックは従来のEVと比べるとかなり野心的なものでした。ダイソン氏はプロジェクトをやむを得ずキャンセルすることとなる前に、私財を5億ポンド(約650億円)も費やしたと語っています。
ダイソン製のEVはプロジェクトの段階でキャンセルされることとなりましたが、ダイソン氏によるとEV開発に携わっていた500以上のチームは既に他の様々なプロジェクトに取り組んでいるとのこと。また、リチウムイオン電池よりも効率的かつコンパクトな同社独自開発の全固体電池を自動車メーカーが利用できるようにする計画も進められているそうです。
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