無料の画像編集ツールでありオープンソースで約17年も開発され続ける「Inkscape」を開発者が語る
無料でダウンロードできるオープンソースの画像編集ソフト「Inkscape」は、開発版として約17年もの間、有志のソフトウェア開発者によって改良され続け、2020年5月1日に一般利用向けの安定版となるVer1.0がリリースされました。プロジェクト立ち上げに関わったブライス・ハリントン氏を始め、Inkscapeの開発に携わってきた人々のインタビューがInkscapeの公式サイトで公開されています。
Roots and Shoots of the Inkscape Project | Inkscape
https://inkscape.org/news/2020/05/04/roots-and-shoots-inkscape-project/
Draw Freely | Inkscape
https://inkscape.org/ja/
Inkscapeは画像編集ソフト「Sodipodi」から派生したソフトウェアとして2003年に誕生しました。Sodipodiの元ソフトウェア開発者でもあるハリントン氏は、Inkscapeについて「私たちがInkscapeを開発し始めてから何年もたちましたが、今でも有志のボランティアによって開発され続けていることが信じられません。プロジェクトを立ち上げたとき、Inkscapeは素晴らしいソフトウェアの卵であるとは思っていましたが、人気が出て、世界中に普及するとは思ってもいませんでした」と語りました。
さらにハリントン氏は、「オープンソースプロジェクトとして運用することで、ユーザーがソフトウェア開発に密接に関与でき、Inkscapeはよりユーザーのニーズに合ったソフトウェアとなりました。そして、世界中のアーティストたちの活動をサポートするため、コミュニティとの強力なパートナーシップを得ることができたのです」ともコメントしています。
Inkscapeは無料でダウンロードできるため、さまざまな分野のユーザーに使用されています。Inkscapeのコミュニティでは、Inkscapeがどんなユーザーに、どんな目的で使用されているかを垣間見ることができます。イラストレーターやCADデザイナーといったツールを利用する人々だけでなく、Inkscapeをよりよいツールにしようと開発に取り組むプログラマーたちの交流も盛んです。
Inkscapeでは、バグの報告や修正も有志のユーザーによって行われています。ニカラグアのグラフィックデザイナーである、ホセ・エステバン・キンタニラ・ラミレス氏はInkscapeのプログラムを調べているときにバグを発見しました。ラミレス氏はInkscapeのコミュニティにバグを報告しようと考えたものの、「プロのプログラマーではないユーザーがバグを報告してもいいのか?」と報告を一度は思いとどまったとのこと。
悩んだ末に、ラミレス氏はコミュニティにバグを報告することにしました。「驚いたことに、数名のユーザーが私のメッセージに答えてくれて、バグや他の話題についても話し合うことができました。私が指摘したバグは修正され、それ以降もずっとInkscapeを使い続けています」とラミレス氏は語っています。その後、ラミレス氏はInkscapeの翻訳チームに加わり、スペイン語版Inkscapeのサポートを行っています。
スペインのデザイナー兼ソフトウェア開発者であるジャビエルツォ・アライサ・セノス氏は「Inkscapeは私にとってドラッグのようなもので、離れることができません。スペインではInkscapeの活動的なコミュニティは規模が小さく、その分開発できることが多いので、チームの一員になれてうれしいです」と語っています。
Inkscapeのコミュニティでは、分野別に多くのチームやチャンネルが存在しています。セノス氏はさまざまなチームやチャンネルと交流を持っており、裏方としてInkscapeを支える重要人物。InkscapeのVer1.0では、パスの丸みを調節するツールや、パスエフェクト選択ダイアログなどの開発を担当しました。
Inkscapeは以下のサイトから無料でダウンロード可能です。
Draw Freely | Inkscape
https://inkscape.org/ja/
また、ソースコードはGitLabで公開されています。
Inkscape / inkscape · GitLab
https://gitlab.com/inkscape/inkscape
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