サイエンス

「ジュラシック・パーク」に登場した肉食恐竜ラプトルのモデルは集団で狩りをしなかった


1993年に公開された「ジュラシック・パーク」は、現代によみがえった恐竜が人間たちに襲いかかるパニックサスペンス映画です。作品に登場した恐竜の中でも、小型肉食恐竜のラプトルは高い知能と集団行動で人間を追い詰める存在として登場しました。しかし、このラプトルのモデルとなった恐竜・デイノニクスが本当は群れで狩猟を行っていなかった可能性を、ウィスコンシン大学の研究チームが示しています。

Ontogenetic dietary shifts in Deinonychus antirrhopus (Theropoda; Dromaeosauridae): Insights into the ecology and social behavior of raptorial dinosaurs through stable isotope analysis - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S003101822030225X

'Jurassic Park' got it wrong: UWO research indicates raptors don't hunt in packs - UW Oshkosh Today University of Wisconsin Oshkosh
https://uwosh.edu/today/84696/jurassic-park-got-it-wrong-uwo-research-indicates-raptors-dont-hunt-in-packs/

ジュラシック・パークで、子どもたちがラプトルに追い詰められるシーンは以下から見ることができます。ラプトルは原作小説では「ヴェロキラプトル」をモデルとした架空の恐竜で、映画では見た目のモデルとしてデイノニクスが採用されています。

Jurassic Park (1993) - Raptors in the Kitchen Scene (9/10) | Movieclips - YouTube


精力的な研究によって恐竜に関する知識は年々更新されています。1993年に公開されたジュラシック・パークでは当時支持されていた学説が反映されたため、ラプトルはトカゲのような肌をしており、一切の体毛をもたないビジュアルとなっていました。しかし、名前の由来となったヴェロキラプトルは2007年にモンゴルで発見された化石によって羽毛におおわれていたことが示されました。また、デイノニクスは証拠となる化石が見つかっていないものの、記事作成時点では系統学的見地から羽毛が生えていたと考えられています。

以下の画像は、全身に羽毛を生やしたヴェロキラプトルの予想図。

by Nobu Tamura

まるで鳥のような見た目をしたデイノニクスの予想図が以下。

by Emily Willoughby

また、映画公開時にはヴェロキラプトルとデイノニクスは同一種と考える説が唱えられていましたが、その後にこの説は否定され、近縁種ではあるものの別の種であるとされています。

さらに、「デイノニクスは、オオカミのように群れることで自分たちよりも大きな生き物を狩っていた」と考えられていたため、この点がジュラシック・パークでのラプトルの描写に色濃く反映されていました。


しかし、ウィスコンシン大学フォックスシティ校の古生物学者でワイス地球科学博物館の館長を務めるジョセフ・フレデリクソン氏は「デイノニクスが群れで狩猟を行っていたということの確かな証拠はありません。恐竜の狩りを直接この目で見るわけにはいかないので、私たちは間接的に彼らの生活行動を定義する必要があります」と述べています。

フレデリクソン氏によれば、恐竜の子孫である鳥やワニが群れで狩りを行うことはなく、自分よりも大きな獲物を狩ることもめったにないとのこと。フレデリクソン氏は、デイノニクスがコモドオオトカゲに似た生活行動をとっていたのではないかと考えました。


オオカミのように群れで狩猟を行う動物の場合、大人が子どもに餌を分け与えるため、大人と子どもで食生活が変化することはほとんどありません。一方、コモドオオトカゲは成長に伴って食生活が変化するという生態です。通常、コモドオオトカゲは鳥やヘビなどのほか、イノシシやヤギなどの大型の哺乳類も食べます。しかし、自分で狩りができない幼少期に限っては、他の動物に食べられないように木の上に隠れ、小さな虫やヤモリなどを食べて過ごします。フレデリクソン氏は、デイノニクスが成長によって食生活が変化するののではないかと考え、1億5000万年前から1億800万年前に北アメリカに住んでいたデイノニクスの歯を調査しました。

by Didier Descouens

歯の化石から動物が食べたものと水源を炭素と水素の同位体から調査した結果、子どもの歯と大人の歯で食べたものが違うことが判明。予想していた通り、成長に伴って食生活が明確に変化している可能性が示唆されました。このことから、デイノニクスが群れで狩猟を行っていた可能性は低いとフレデリクソン氏は論じています。

フレデリクソン氏は「ヴェロキラプトルにも同じようなパターンが見られ、子どもの歯と大人の歯で炭素同位体の値が異なり、違う食べ物を食べていたことが判明しました。これは子どもが大人から餌を分け与えられていなかったことを示しています。つまり、ジュラシック・パークはラプトルの行動について間違って描いていたと考えられます」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1i_yk

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