「ハチドリサイズの恐竜の頭部」が9900万年前の琥珀の中から発見される
天然樹脂が高温・高圧下で硬化して作られる琥珀は宝石として扱われているだけでなく、時にはアンモナイトやトカゲなどの古代生物が内部に閉じ込められていることもあります。中国の研究チームが新たに発表した論文で、「ハチドリと同じくらい小さい恐竜の頭部」が9900万年前の琥珀から発見されたと報告されました。
Hummingbird-sized dinosaur from the Cretaceous period of Myanmar | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2068-4
Tiny bird fossil might be the world’s smallest dinosaur
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00576-6
Trapped in amber, this could be the smallest dinosaur ever found | Live Science
https://www.livescience.com/smallest-dinosaur-of-mesozoic.html
今回報告された琥珀は2016年にミャンマーの鉱山で発見されたものであり、Khaung Ra氏という人物が購入した後、中国の博物館に寄贈されたものだとのこと。以下の画像を見ると、だ円形の琥珀の右側に鳥の頭部に似た恐竜の頭部が埋もれていることがわかります。
琥珀が形成されたのはおよそ9900万年前とのことで、頭部の重さはわずか2グラム。鳥類の中で最小といわれるマメハチドリに匹敵するほど小さなサイズだと研究チームは述べています。クチバシのように長い口には、なんと100本もの歯がズラリと並んでいたとのことで、小型の昆虫などを捕食していたと考えられるとのこと。
中国科学院で古代の脊椎動物について研究しているJingmai O'Connor氏らの研究チームは、ラテン語の「oculus(目)」「dentes(歯)」「aves(鳥)」という単語と、博物館に寄贈したKhaung Ra氏の名前を組み合わせて、この恐竜を「Oculudentavis khaungraae」と名付けました。
以下のムービーでは、O'Connor氏がOculudentavis khaungraaeについて熱く語る様子を見ることができます。
The bird in amber: A tiny skull from the age of dinosaurs - YouTube
「私が初めてこの標本を見た時、完全に圧倒されました」と語るのは……
中国で恐竜などの古代生物を研究するO'Connor氏。
琥珀の中に閉じ込められている恐竜の頭部はまるで鳥のようであり、驚くほど小さなサイズです。
あまりの素晴らしさに、O'Connor氏は同僚に「見てください!最高にクールです!」と、琥珀の恐竜を見せたとのこと。
恐竜といえば、博物館で見るような巨大な化石や骨格標本を思い浮かべる人も多いはずですが……
近年の研究から、巨大な恐竜と同時にとても小さな恐竜も共存していたことが明らかとなっています。
小型の恐竜は化石として残りにくいため、琥珀の中に埋もれている個体の発見は非常に重要だとのこと。琥珀の中に閉じ込められた古代生物は軟組織が残されていることも多く、「まるで昨日死んだかのようです」と、O'Connor氏は述べています。
頭部が発見されたOculudentavis khaungraaeは非常に小さな恐竜であり……
ハチドリに匹敵するサイズ。これほど小さな恐竜を見たことはないとO'Connor氏は語ります。
また、CTスキャンによる分析から、Oculudentavis khaungraaeのアゴには、頭蓋骨と融合した100本もの歯がびっしりと並んでいることもわかっています。
驚くべきことに目のすぐ下あたりまで歯が並んでいるそうで、「これはOculudentavis khaungraaeがどれほど大きく口を開けられたのかを示唆しています」と、O'Connor氏は指摘。
両目は頭部の横についており、目には瞳孔があったことも推測されていることから、Oculudentavis khaungraaeは昼間に活動していたと考えられています。
骨格から頭部を再現してみるとこんな感じ。
頭部の骨格を調査した結果から……
Oculudentavis khaungraaeは小さな昆虫を捕食していたと推測されているとのこと。
大きな恐竜と違い、小さな恐竜は化石に残ることがほとんどないため……
琥珀の中に含まれる痕跡は非常に重要といえます。
今回発見された琥珀には二枚貝によって空けられたとみられる穴があり、Oculudentavis khaungraaeの頭部も少し損傷してしまっているとのこと。しかし、幸いなことにほとんどの部分は無傷ですみました。
O'Connor氏は今後のスキャン技術向上により、琥珀内部の軟組織についても科学的な分析が可能になることを望んでいると語りました。
Oculudentavis khaungraaeが非常に小型である理由について、研究チームは当時のミャンマーが孤立した島であった点が関係しているかもしれないと指摘。小さな島に住む動物は小型化する傾向があるため、Oculudentavis khaungraaeが他の恐竜より小型化した可能性があるとのこと。記事作成時点ではOculudentavis khaungraaeが他の恐竜や初期の鳥とどのような進化的関係にあったのかは不明ですが、骨格の研究などによってより詳細な情報が明らかになると期待されています。
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