サイエンス

太陽系に最も近いブラックホールが地球からわずか1000光年の場所に発見される

by L. Calçada/ESO

ブラックホールは極めて高密度で重力が大きい天体であり、周囲の星を飲み込んで光さえ脱出することができません。ヨーロッパ14カ国およびブラジルが共同で運営するヨーロッパ南天天文台の研究チームが、地球からわずか1000光年の場所にある「太陽系に最も近いブラックホール」を発見したと発表しました。

ESO Instrument Finds Closest Black Hole to Earth | ESO
https://www.eso.org/public/news/eso2007/

Astronomers discover closest black hole to Earth. And you can 'see' it. | Live Science
https://www.livescience.com/closest-black-hole-to-earth-discovered.html

Astronomers Have Found a Black Hole Lurking Just 1,000 Light-Years From Earth
https://www.sciencealert.com/astronomers-have-just-found-a-black-hole-just-1-000-light-years-from-earth

研究チームは当初、2つの恒星が両者の重心の周りを軌道運動している連星に関する研究の一環として、ぼうえんきょう座にある「HR 6819」という連星を観察していました。HR 6819は5等星であり、状況が整えば地球から肉眼で見ることが可能だとのこと。


連星の軌道について分析したところ、連星は軌道に対して斜めの方向に引っぱられているような奇妙な軌道を示しました。そこで研究チームは、チリで運営するラ・シヤ天文台MPG/ESO 2.2-metreという望遠鏡でさらなる観測を行ったそうです。すると、HR 6819の軌道は2つの星が互いの重心の周りを軌道運動しているのではなく、3つの天体が互いの軌道に影響を与えていることが判明。3つ目の天体は少なくとも太陽の4倍の質量があることもわかりましたが、その姿は観測できませんでした。

ヨーロッパ南天天文台の研究者であるThomas Rivinius氏は、「太陽の少なくとも4倍の質量を持つ目に見えない物体は、ブラックホール以外にあり得ません」とコメント。HR 6819は従来知られていたような連星ではなく、実はブラックホールを含む3つの天体からなるものだったと研究チームは報告しました。

by L. Calçada/ESO

これまで知られていた最も太陽系に近いブラックホールは、地球から3300光年離れたいっかくじゅう座X-1でした。ところが、HR 6819は地球からわずか1000光年しか離れていないとのことで、今回発見されたブラックホールは太陽系から最も近いブラックホールということになります。また、研究チームの分析によると、HR 6819のブラックホールは最小で太陽の約4.2倍の質量だそうで、発見された中で最も小さな質量を持つブラックホールになる可能性もあるとのこと。

HR 6819のブラックホールがこれまで発見されてこなかった理由として、ブラックホール自体の質量が小さい上に周囲の天体などを吸収しておらず、検出可能なX線などを放出していなかった点が挙げられます。しかし、今回の発見は「不自然な軌道を持つ星」を発見することにより、激しい活動をしていない未知のブラックホールを発見できる可能性を示唆しています。


Rivinius氏は、「銀河系には数億個ものブラックホールがあるはずですが、私たちはそのごく一部しか知りません。何を探すべきなのかを知ることは、ブラックホールを探す上で私たちに有利な立場を提供します」と述べました。

ブラックホールを含んだ3連星における相互作用を研究することは、ブラックホールや中性子星の衝突が引き起こされるメカニズムなどについて理解する上で重要です。また、2019年に発見された「本来であれば存在できないはず」の巨大な恒星ブラックホールであるLB-1についても、HR 6819のブラックホールが重要なヒントとなるかもしれません。ヨーロッパ南天天文台の研究者であるMarianne Heida氏は、「LB-1もHR 6819のような3連星になる可能性があることに気づきました」と述べ、HR 6819のブラックホールで得られた知見を踏まえて、さらなる観察を行う必要があると主張しています。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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