ブラックホールから取り出した膨大なエネルギーを生活に利用したり爆弾にしたりすることができる

ブラックホールは光さえ脱出することができないほど重力が強く、高密度に大量の質量が存在する天体です。「ブラックホールに吸い込まれてしまうと一巻の終わり」と考えて恐ろしくなることもありますが、そんなブラックホールから大量のエネルギーを取り出して有効利用する方法がある、と日常のさまざまな疑問に科学的・論理的なアプローチで答えるKurzgesagtがYouTubeにムービーを公開しています。
The Black Hole Bomb and Black Hole Civilizations

ブラックホールは宇宙で最強のエネルギーの塊です。

物体や光が近づきすぎれば、ブラックホールに吸い込まれてしまいます。

しかし、ブラックホールからエネルギーを取り出し、有効活用する方法があるとのこと。

光すら抜け出すことができないというブラックホールからエネルギーを取り出す方法とは、一体どういうものなのでしょうか。

ブラックホールからエネルギーを取り出すというアイデアの重要なポイントは、「ブラックホールには超高速で回転しているものがある」とする「カー解」という説です。

大質量の星が死ぬ時、自らの重力に耐えきれずに核がつぶれ、小さなブラックホールとなります。

崩壊する前、星は自転を行っています。そして、宇宙の基本法則によれば、回転している物体が勝手に止まることはありません。

星が持っている回転のエネルギーは、たとえ大きな星から小さなブラックホールになったとしても失われることはないそうです。

回転する物体が小さくなればなるほど、同じ回転エネルギーによる回転速度は速くなります。

よって、カー解によるとブラックホールは、私たちが想像もできないほど高速で回り続けているのです。中には毎秒数百万回も回転するブラックホールもあるとのこと。

回転するブラックホールには事象の地平面と呼ばれる、光でさえも到達できない箇所が存在し……

その中心には、ブラックホールが持つ質量の全てが凝縮された特異点があります。

特異点は密度と重力が無限大となるブラックホールの中心部で、通常は「表面を持たず、無限に小さい点」として説明されます。しかし、このような「点」は「回転する」ことができません。

よって、回転するブラックホールには、点ではなく「リング状特異点」が存在します。リング状特異点は厚みがゼロで表面を持たず、超高速で回転し、ブラックホール全ての質量を含みます。

リング状特異点のあまりに速い回転により、ブラックホールの周囲では時間と空間が歪みます。

それにより、事象の地平面よりも外部に、「エルゴ球」と呼ばれる新たな領域が形成されます。

事象の地平面では時空が完全に壊れていますが、エルゴ球の内部では時空が半分だけ壊れているとのこと。

回転しないブラックホールに吸い込まれるのは、穴に滑り落ちるようなものですが……

回転するブラックホールに吸い込まれるのは、水が渦を巻く排水溝の中に吸い込まれるようなもの。

回転するブラックホールは、エルゴ球の中に入った物質に回転するエネルギーを受け渡します。

そのため、リング状特異点の放つ回転エネルギーは、近づいた物体を非常に速いスピードで押し流すと考えられているそうです。

このエルゴ球から、リング状特異点が放つ回転エネルギーを取り出すことができれば、かなりのエネルギーを得ることができます。このブラックホールから回転エネルギーを取り出す方法を、ペンローズ過程と呼びます。

天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホールは、銀河の多くの星々が何十億年もかけて放出するのと同等のエネルギーを持っているとのこと。

エネルギーを取り出す簡単な方法として、ブラックホールに物体を侵入させるというものがあります。

ブラックホールは外部から入ってきた質量に対して、質量に応じたエネルギーを受け渡すからです。

上手にロケットをエルゴ球に突入させることができれば……

リング状特異点が押し流す方向に流れに大きなエネルギーを得ることができます。

この方法は化学エネルギーを運動エネルギーに変換し、ロケットを宇宙に向けて飛ばすよりも効率がいいとのこと。

例えるならば、ロケットの打ち上げは自力でプールを泳ぐようなものですが、エルゴ球内でロケットが進むのは、流れるプールの中で流れに後押しされつつ泳ぐようなもの。

ブラックホールの回転は非常に高速であり、エルゴ球からロケットが出る時には、ロケットの侵入時よりも大幅に加速されていると考えられています。

ブラックホールはその分、わずかに回転エネルギーを失って回転が遅くなりますが、そうそう簡単にブラックホールが全ての回転エネルギーを失うことはありません。

もう一つ、ブラックホールからエネルギーを取り出す有効な方法があります。

まず、超高速で回転するブラックホールの外側に、大きな鏡を覆うように取り付けます。

一見したところ、巨大な天体を覆って全てのエネルギーを余すことなく回収するダイソン球と似ています。

しかし、ブラックホールは宇宙の他の天体と比較すれば非常に小さく、材料も鏡だけでいいことから、こちらの方が建設は簡単です。

太陽と同質量のブラックホールを厚さ10cmの鏡で覆うには……

大きめの小惑星が持つ金属だけで十分かもしれないとのこと。

鏡でブラックホールを覆ったら、鏡の一部を開けて電磁波をブラックホールに向けて打ち込みます。

電磁波はブラックホールに光速で到達し、ごく一部の電磁波が事象の地平面に吸収されて消失される他は、鏡に反射することを繰り返します。

その際に電磁波がエルゴ球を通るたび、電磁波はブラックホールの回転エネルギーを受けて加速します。

電磁波は鏡とブラックホールの間を跳ね回るたびにエネルギーを増していき、ついにはとてつもないエネルギーを得るのです。

電磁波が持つエネルギーが必要量に達したら再び鏡の一部分を開け、エネルギーを取り出すことが可能です。

この方法が確立できれば、理論上は数兆年にわたって人類がエネルギーに困ることはないとのこと。

また、もしエネルギーを取り出さないままひたすら電磁波を反射させ続ければ……

鏡が砕けるほどのエネルギーを電磁波は得て、やがて爆発するでしょう。

この爆発エネルギーは、生物が作り出しうる中で最大の爆発であるといえます。

記事執筆時点では、ブラックホールからエネルギーを取り出すことは、さまざまな問題が山積みで現実には不可能です。

しかし果てしなく遠い未来において、ゆっくりと死にゆく宇宙の中で人類が生き残る最後の方法として、ブラックホールのエネルギーを取り出しているかもしれません。

太陽を初めとする恒星が死滅し、闇に覆われた宇宙では……

回転するブラックホールは人間が利用できる最後のエネルギー源です。

最後の人類たちは、ブラックホールのすぐそばで暮らしているかもしれません。

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in サイエンス, 動画, Posted by log1h_ik
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