レビュー

題名と前の人が書いた内容から続きを書いていくリレー小説制作ゲーム「じゃれ本」を遊んでみた


50文字ぐらいの短い文章を執筆して次の人へリレーし、みんなで1つの小説を作り上げていくゲームが「じゃれ本」です。シンプルに言えば「リレー小説を書く」だけなのですが、2人目以降は小説の題名と直前の人が書いた内容しかわからないという縛りがあるため、作品は思っているよりも大きな振れ幅で展開していくことになります。

連作ショートショート本 | じゃれ本
https://jarebon.com/


◆外観&準備
「じゃれ本」のパッケージはこんな感じ。


プレイ人数は3~8名、プレイ時間は30分~40分で、対象年齢は10歳以上。


対戦ゲームではなく、みんなで協力して物語を作り上げるゲームなので、プレイの流れは「物語をかく」「めくる」「わたす」「また、かく」と実にシンプル。


1袋につき、ルールブック1つと4冊の「じゃれ本」が入っています。なお、「じゃれ本」は片面が緑色で……


反対側は茶色。


緑色の表紙をめくると、表紙裏に天地逆になった茶色の「題名ワークシート」と、緑色の「1」「2」ページが登場しました。緑と茶色はプレイ時にどちらを使うかを決めますが、中身自体は同じなので、1冊でそれぞれの色を使い2回遊べます。


ゲームの前準備として、ミシン目に沿って、表紙部分以外のページの側面部分を取り除きます。


また、ページ中央にも横にミシン目が走っているので、これもカットします。


最終的に、「1」から「8」までがバラバラにめくれるようになれば準備完了です。



◆遊び方
3~8人と幅広い人数で遊べるゲームですが、今回は4人でプレイします。


まずは、選んだ色の最終ページにある「題名ワークシート」を開きます。このページで、名前の通り、小説の題名を決めていきます。


ワークシート最下部の「1」の欄に名詞を10個書き出します。続いて、「1」に書いた名詞から1つを選んで、その語から思いつくことを5つ「2」の欄に書きます。「2」に書くのは名詞ではなくてOKです。最後に「2」と「1」の言葉を組み合わせて現実にはあり得ないような言葉を作り、その中の1つ、「これだ」というものを「題名」欄に書きます。この事例では、ワークシートを書いた人間は頭の中に「たべるんごのうた」がぐるぐる回っていたのであろうことがうかがえます。ただ、最終的な題名は2つの言葉を組み合わせるので、最初に書き出した10個の名詞の偏りはまったく影響していません。


題名が決まったら執筆フェイズ。1ページあたり2分で小説を書いていきます。目安の印に合わせれば50文字になりますが、文字数や文字の大きさは気にせず、自由に何文字でも書けばOKで、2分たったら次の人に回します。


次の人は小説の続きを書けばOKなのですが、ポイントは2ターン目以降は「パスするときにページをめくる」ということ。つまり、3ページ目を書く人は、1ページ目の展開を知ることができず、題名と2ページ目だけを参考に書かなければなりません。そのため、前の展開と反する内容になることもあります。


また、自分が題名を決めた小説が手元を離れたあとは待ち時間ではなく、別の人が題名を考えて書き進められた小説が回ってくるので、頭を切り替えてまったく別の小説を書く必要があります。4人プレイだと、4作品が同時に生み出されることになります。

1ページの目安である50文字というのは、1ツイートが最大140文字と考えるとかなり少ない分量ですが、「2分」という制限時間が迫ってくる点、話の流れが存在しているという点、そして手書きなので思い出せない漢字は書けないし調べている時間もないという点など、様々な制約から、人によってはかなり苦しめられていました。


今回のプレイで書かれた作品は、例に出た「無限に広がるコロンブス」のほか、「キラキラウイルス」「卵の引金」「パンデモニウム体操はーじまーるよー!!」の4作品。「パンデモニウム」は「万魔殿」と訳されることのある語で、小説やゲームなどにも登場しますが、一方でマンガ「銀魂」ではキャラクターの名前として登場。1人目は「万魔殿」に「パンデモニウム」のルビを振って登場させたのですが、2人目がそのことに触れなかった結果、3人目以降は「パンデモニウムが何か」を自分の知識の中で書くことになり、終盤は人名に変化していました。こうした、意図した流れにならないところも「しゃれ本」の面白いところの1つ。


また、どんな小説が書き上がったか回し読みするのも面白いですが、その際、黙読ではなく、音読した方がよいこともわかりました。これは、黙読だとページが移ったときに「執筆者が違うとこうなるのか」と納得しつつ読めてしまうのですが、音読すると「明らかに今の一文で流れが変わった!」とみんなで盛り上がれます。

今回、実際に書き上がった作品を読み比べて「ほほう、これはなかなか」と意見が一致したのが、以下の「禁じられたワンタン」でした。改行が執筆者切り替わりのタイミングです。

先日、私は二十年ぶりに横浜を訪れた。仕事を済ませて中華街に立ち寄った時、ふと見慣れない古い料理屋を裏路地に見つけた。
店には羽が生えていた。翼のようなものではなく、白くぬり固められたセメントのような―小麦粉の「羽」が生えていたのだ。
意を決して店に入ろうと扉を開けると、中から肉汁が飛び出し、私は店内には入れず数十m後方まで肉汁の濁流に押し流されてしまった。
「熱い」と声を上げる間もなく、押し流された私は、全身に手ひどいやけどを負ってしまった。しかし、どうしてもワンタンがあきらめられない。ここまで来て引けるものか。
中華包丁を取り出し、私はワンタンの皮を切り裂いた。ドバッと熱い肉汁とシャキシャキのニラがあふれ出てくる。うまい。
うまみが体にしみ込んでいく。指の先から、血潮まで。ああ、ぼくは今、この世界に存在しているんだ。
ふと気付くと全身が白くぶよぶよとした体に変わっていくのに気づいた。驚いて己の手に触れると皮がするりとむけ中からそぼろ肉のような物がこぼれおちる。
手からはほのかに小麦の香りがして、白い。己自身がワンタンになったのだと悟った私は、さめざめとスープをこぼして泣いたのち、この場を去る事にした。私はワンタンなのだ。誰かに食べてもらわなくては…


ぜひ、様々な作品を生み出してみてください。

「じゃれ本」4冊入りが公式サイトで税込820円で販売中です。

じゃれ本(4冊入り) | jarebon
https://jarebon.official.ec/items/20583313

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in レビュー,   ゲーム, Posted by logc_nt

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