ハードウェア

WDのNAS向けHDD「WD Red」の記録方式が「RAIDに不向き」な仕様にこっそり変更されていたことが判明


大手HDDメーカーであるWestern Digital(WD)のNAS用HDDシリーズ「WD Red」の記録方式が、モデルチェンジの際にランダムライトアクセスに不向きとされるSMR方式に表記なく変更されており、WD Redシリーズを用いたRAIDの再同期に問題が生じるケースがあるとストレージに関するニュースサイト「Blocks & Files」が報じています。

Western Digital admits 2TB-6TB WD Red NAS drives use shingled magnetic recording – Blocks and Files
https://blocksandfiles.com/2020/04/14/wd-red-nas-drives-shingled-magnetic-recording/

Seagate 'submarines' SMR into 3 Barracuda drives and a Desktop HDD – Blocks and Files
https://blocksandfiles.com/2020/04/15/seagate-2-4-and-8tb-barracuda-and-desktop-hdd-smr/

Shingled hard drives have non-shingled zones for caching writes – Blocks and Files
https://blocksandfiles.com/2020/04/15/shingled-drives-have-non-shingled-zones-for-caching-writes/

SMRはトラックを重ね合わせてデータを記録する技術で、HDD容量を増大させられる代わりにデータの書き換えが非効率であり、SMRを採用したHDDは頻繁にデータを書き換える用途には適していないとされています。SMRについては、以下の記事を読むとその仕組みがよくわかります。

ついに容量5TBのハードディスクが2014年に登場、2020年には20TBへ - GIGAZINE


ある日、ネットワーク管理者のアラン・ブラウン氏がWD製のHDD「WD40EFAX」をRAIDアレイに追加しようとしたところ、エラーが発生しHDDをRAIDアレイに追加することができなかったとのこと。NASメーカー「Synology」のフォーラムにも2019年に同様の問題が報告されていました。

ブラウン氏は問題の原因がSMRにあると推測。SMRではランダムライトアクセスに関する問題への対応として、プラッタの外周部にCMRで記録するキャッシュ領域を設け、HDDがアイドル状態時にキャッシュ領域から通常の領域へデータを書き込む仕組みを採用しています。数十GBから数百GBのデータを書き込む際は問題になりませんが、RAIDの再同期など大量のデータを書き込む場合は、キャッシュ領域からデータがあふれ、書き込みに問題が生じる場合があるとのこと。

過去の報告例で、WDのサポートは「SMRとCMRのどちらを採用しているかは答えられない」と回答していたので、ブラウン氏はWDに直接メールで問い合わせてみたとのこと。すると「WDの20TBのHDD以外は、CMRに基づいている」とWDは回答。しかし、ブラウン氏がSynologyの公式互換性リストを確認してみると、WD製の6TBのHDDがSMRを採用していると表記されていました。


ブラウン氏やSynologyのフォーラムなどの情報をまとめ、Blocks & FilesがWDに報告したところ、WDから「現在は、WD Redシリーズの2TBから6TBのモデルには、SMRが採用されている」という回答が得られたとのこと。WD Redシリーズの前モデルはCMRを採用していましたが、最新モデルではSMRを採用していたことが判明しました。WDの公式ページには「WD RedシリーズはハイパフォーマンスなNASストレージを構築する顧客のためのソリューションを提供する」と記載されていますが、WD Redシリーズの一部HDDの記録方式がSMRに変更されていた事実は、WDの公式スペックシートには記されていなかったそうです。

by Chris McClanahan

WDのテストでは、SMRによるRAID再同期に関する問題は見つからなかったとのこと。WDはBlocks & Filesの報告に対し「個々の状況に応じて、より詳細な情報が必要です」とコメントしています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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