サイエンス

史上初の太陽系外から飛来した恒星間天体で地球外生命体の宇宙船説まで飛び出した「オウムアムア」の不自然に長細い形状の理由が判明


2017年10月19日に発見された「オウムアムア」は、史上初の太陽系外から飛来したことが確認された恒星間天体です。これまでの観測データから葉巻のような細長い異様な形状をしていることが明らかになっており、太陽系の小惑星や彗星では見られない形状であることから、「地球外生命体の宇宙船なのでは?」という意見まで飛び出していました。そんなオウムアムアの不自然に細長い形状を説明する新しい説が発表されています。

Tidal fragmentation as the origin of 1I/2017 U1 (‘Oumuamua) | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-020-1065-8


New formation theory explains the mysterious interstellar object 'Oumuamua
https://phys.org/news/2020-04-formation-theory-mysterious-interstellar-oumuamua.html

New origin story of 'Oumuamua interstellar visitor does not involve aliens | Live Science
https://www.livescience.com/interstellar-object-oumuamua-origins-tidal-disruption.html

オウムアムアを発見したのはハワイ大学・天文学研究所(IfA)の博士研究員であるRob Weryk氏。その奇妙な軌道から太陽系に存在する小惑星や彗星ではないことが明らかになり、史上初の太陽系外から飛来した天体であると確認されています。なお、発見当初は「A/2017 U1」と呼ばれていたオウムアムアを発見した際の詳細については以下の記事にまとめられており、研究者たちの驚きや喜びの様子が伝わってくるはずです。

「我々は数十年間、この日を待っていた」、太陽系の外から飛来したと考えられる謎の天体を確認 - GIGAZINE


その後の調査により、オウムアムアは葉巻型の細長い形状であり、表面は「やや赤みを帯びた灰色」をしていること、そして水や氷はなく、岩石や金属でできた密度の高い天体であることが明らかになっていました。さらに、オウムアムアから観測された低周波に基づき「知的生命体がオウムアムアの背後に存在する」というウワサが流れ、より広く世間から注目を集めることとなります。

ただし、地球外生命体の宇宙船説については研究者も「可能性は極めて低い」と結論付けていました。

太陽系外から飛来した謎の天体「オウムアムア」は地球外生命体が作った宇宙船なのか? - GIGAZINE

by European Southern Observatory / M. Kornmesser

2020年4月13日に科学誌のNature Astronomy上で公開された最新の研究では、「オウムアムアはどのように形成され、どこからやって来たのか?」という謎に対する世界で最初の包括的な答えを提唱しています。論文を記したのは中国科学院の国立天文台で働くユン・チャン氏と、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の天文学と天体物理学の名誉教授であるダグラス・N・C・リン氏で、2人はオウムアムアの特徴的な形状は「潮汐力」によるものであると説明しています。

2人はコンピューターシミュレーションを用いてオウムアムアの形成理論をシミュレートしており、そこからオウムアムアの元となった母天体に、潮汐力がかかることで細長い葉巻のような形状が成型されたと説明。アリン氏は「オウムアムアのような恒星間天体は、恒星と(恒星間天体の)母天体が接近した際に潮汐力の影響で断片化した天体で、その後、星間空間にはじき出されたものと推測しています」と語っています。


チャン氏は「オウムアムアは太陽系の天体とはまったく異なるものです。乾燥した表面、異常に細長い形状、そして不可解な動きといった特徴から、地球外生命体の宇宙船ではないかと疑問を抱く科学者さえいました。オウムアムアは本当に神秘的な形状をした天体ですが、その色や電波放射がないことから、自然物であることは明らかです」と語り、オウムアムアが地球外生命体の宇宙船であるという説を改めて否定しています。

さらに、リン氏は「我々の目的は、広く理解されている物理的現象に基づき、すべての明らかになっている手がかりをつなぎ合わせることができるような包括的な理論を考え出すことです」と語り、世界初のオウムアムアに関する包括的な形成理論を発表できたことを誇らしげに語りました。


小型の天体が大質量の天体の近くを通過する際、潮汐力により小天体の表面を引き裂くことがあります。これは1994年に木星に衝突したことで有名な彗星の「シューメーカー・レヴィ第9彗星」で起きた現象と、理論上は同じ。オウムアムアの母天体も何かしらの大質量の天体近くを通過した際に、現在のオウムアムアが形成されたとチャン氏とリン氏は説明しているわけです。

2人はこの説を確かめるために、高解像度のコンピューターシミュレーションを行い、惑星付近を通過する天体の構造ダイナミクスをモデル化。シミュレーションの結果、天体がオウムアムアのような非常に細長い破片に分裂し、星間空間に排出されることを発見しています。加えて、チャン氏は「潮汐力が引き起こす天体の破壊プロセス時に発生する熱の拡散プロセスは、天体上の大量の揮発性物質を消費します。これがオウムアムアの表面の色や、水分の欠如を説明する論理的な仮説となります」とも述べました。

なお、シミュレーションの結果から、長周期彗星星周円盤スーパーアースといった天体から「オウムアムアサイズの天体の破片」が形成される可能性があることも明らかになっています。

チャン氏は自身の論文について、「オウムアムアの多数の推定値をサポートしています。オウムアムアのような星間天体はハビタブルゾーンを通過する可能性があるため、生命を生み出すことができる物質(パンスペルミア説)を運ぶ可能性もあります。オウムアムアの研究は非常に新しい分野であり、星間天体は惑星系がどのように形成され、進化するのかについての重要な手がかりを提供する可能性もあります」と語っています。

加えて、リン氏はオウムアムアは太陽系外から飛来した珍しい天体であるものの、宇宙空間に存在する恒星間天体の数はもっと多いはずであるとして、今後より多くの恒星間天体が発見されることを期待しています。なお、既に観測史上2例目となる恒星間天体「ボリソフ彗星」の撮影にハッブル宇宙望遠鏡が成功しています。

観測史上2例目の「恒星間天体」の撮影にハッブル宇宙望遠鏡が成功 - GIGAZINE

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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