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新型コロナウイルス感染症の流行と家賃の高騰のダブルパンチでホームレスが増加するリスクが高まっている


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受けて子どもの学校が休校し、会社や仕事を休まざるを得なかった保護者に対する休業補助金の受付を、2020年3月18日から厚生労働省が開始しました。この制度でのフリーランスへの支給額が日額4100円であることが議論を呼んでいますが、同様の議論は海外でも存在し、オーストラリアでは保障のない「カジュアル労働者」に分類される人々がホームレスに陥る可能性が高いとして問題視されています。

Coronavirus puts casual workers at risk of homelessness unless they get more supporthttps://theconversation.com/coronavirus-puts-casual-workers-at-risk-of-homelessness-unless-they-get-more-support-133782

オーストラリアの雇用形態は「フルタイム」「パートタイム」「カジュアル」の3つに分けられます。このうち「カジュアル労働者」は勤務時間が不規則で時間数の保障もなく、フルタイムやパートタイムのような年次休暇や有給休暇もないのですが、そのような不利益を穴埋めする意味で最低賃金がほか2つの形態よりも25%高く設定されています。


しかし、カジュアル労働者の多くはカフェやレストランなどで働いていることから、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、その生活があやぶまれています。特に19~30歳の、賃金による可処分所得が週600オーストラリアドル(約3万9000円)、あるいは収入と手当をあわせて600オーストラリアドルの以下の人々は、ホームレスになってしまう可能性が高いとのこと。

これには、メルボルンやシドニーというオーストラリア都市部の家賃が高騰しているという問題も関わっています。以下の図はシドニーとメルボルンという2都市で暮らす人々の可処分所得がいかに家賃に圧迫されているのかを示す図。青色・オレンジ・赤色の順に、収入における家賃の割合が高くなります。


例えば一番上の列は、カジュアル労働による週あたりの収入が600オーストラリアドル(約3万8600円)、賃金以外も含めた個人所得が604オーストラリアドル(約3万8900円)という人のケースが示されています。シドニーの平均である家賃520オーストラリアドル(約3万3400円)の1室に2人で住んでいる場合、家賃が収入を占める割合は43%で、週あたりの可処分所得は344オーストラリアドル(2万2100円)となります。一方、同じシドニー在住でも495オーストラリアドル(約3万1900円)の部屋に3人で住んでいる場合はこの割合が27%と少なくなり、家賃以外のことにより多くのお金を割けるようになります。


しかし、1部屋2人で住んでいても、週あたりに受け取る賃金が200オーストラリアドル(約1万2900円)、失業手当「ニュースタート」が198オーストラリアドル(約1万2700円)、もろもろを合わせた個人所得が444オーストラリアドル(約2万8600円)という状態になると、家賃が収入を占める割合が59%を越え、家賃を払った後にはわずか66オーストラリアドル(約4200円)しか残りません。カジュアル労働者が働けなくなるとこのような状況に陥り、生活ができずに家を引き払うという方法しかなくなると懸念されているわけです。


オーストラリアでは約650万人の低所得者に対し、3月31日より750オーストラリアドル(約4万8200円)の1回きりの給付が行われる予定ですが、この対象者にカジュアル労働者は含まれていません。カジュアル労働者の地位が危うくなるという問題自体は認識されていますが、オーストラリア政府は2020年3月10日付けで「カジュアル労働者は他の2形態よりも時給が高いため、蓄えがあるはずだ」としてすぐには問題の解決策を出さないことを述べました。

Australian government won't 'jump to a solution' to help casual workers in coronavirus crisis | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2020/mar/10/australian-government-warned-not-to-drag-its-feet-on-help-for-casual-workers-in-coronavirus-crisis

これに対しオーストラリア産業グループは政府に対し、カジュアル労働者を含め、職を失ったり働けなくなり困窮状態にある人に向けた迅速な支援を求めています。

Australian government plans coronavirus 'safety net' package as fresh rate cut tipped | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2020/mar/19/australian-government-plans-coronavirus-safety-net-package-as-fresh-rate-cut-tipped

オーストラリアでは労働者の4人に1人が「カジュアル」に分類されますが、もちろん、カジュアル労働者全員が低所得者というわけではありません。

オーストラリア統計局によると、カジュアル労働者全体のうち、蓄えが2400オーストラリアドル(約15万4400円)以上の人々は34.6%。600~2399オーストラリアドル(約3万8600円~15万4400円)の人は26.6%で、600オーストラリアドル未満の人は27.4%、負債を抱えている人は11.5%とのこと。


新型コロナウイルス感染症の流行でカジュアル労働者が職を失った場合、ジョブシーカーという経済的支援を受けることができますが、これはニュースタートと同額で、家賃補助の平均額を含めて、受給者が週あたりに受け取れる額は326オーストラリアドル(約2万1000円)となっています。ニュースタートは兼ねてから「経済的支援なのに家賃の上昇に追いついていない」と指摘があり、記事作成時点での支援ではカジュアル労働者が家賃を払い続けることは難しいと考えられています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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