ハードウェア

MRIスキャンを10倍高速にする「FastMRI」がMRI画像の質を劇的に向上させる手法を公開


FacebookのAI研究チーム「FAIR」とニューヨーク大学ランゴーン医療センターは、AIを活用することでMRIスキャンの速度を10倍高速にし、患者の負担を軽減することを目指すプロジェクト「FastMRI」を進めています。研究チームは新たに、FastMRIの欠点を改善し、既存のMRIスキャン画像の質さえも向上できる可能性のある技術を発表しました。

[2001.08699] MRI Banding Removal via Adversarial Training
https://arxiv.org/abs/2001.08699

FastMRI leverages adversarial learning to remove image artifacts
https://ai.facebook.com/blog/fastmri-leverages-adversarial-learning-to-remove-image-artifacts/


FastMRIに関しては既に研究結果が公開されているほか、より広範なコミュニティがFastMRIに携われるようにGitHubで基準モデルを構築するためのコードデータセットも公開されています。これらに引き続き、2020年2月25日付で新たに研究チームはディープラーニングを使ってFastMRIの問題を解決し、かつMRIスキャン画像全体の品質を向上させる技術を発表しました。

研究チームによると、ディープラーニングを用いてローデータから正確なMRIスキャンを生み出すための課題の1つは、スキャン画像に入った余分なスジなどにあるとのこと。MRIスキャン画像の「ノイズ」ともいえるこのスジは、訓練を積んだ専門家にとっては明白な存在ですが、素人は容易に見分けることができません。ニューヨーク大学ランゴーン医療センターのマイケル・レヒト氏は「高速化されたMRIスキャン画像について評価を行っている時に、水平方向に入った人工的なスジが画像の質を著しく落とし、病気をあいまいにする可能性があることに気づきました」と語っています。


この問題に対処するため、研究チームは敵対的学習を用いて「MRIスキャンからローデータを取得し、人工的なスジの入らない正確なMRI画像を生成する」というディープラーニングモデルを作成しました。

敵対的学習はしばしば「紙幣の偽造者と警察の関係」に例えられます。つまり、偽造者はできるだけ本物に近い偽札を生み出し、警察はそれが本物か偽物かを判断しますが、警察の判断能力が上がれば、その目をだまそうと偽造者の技術も上がっていく……という形に似た仕組みといえます。fastMRIの場合、研究チームは敵対的学習のゴールを「スジのパターンの指向を予測すること」としたとのこと。このとき、敵対モデルとMRI画像の再構築モデルは同時に訓練されたため、スジが消えるまで再構築モデルが改善されると共に、敵対モデルのスジを見抜く精度も継続的に改善されました。


以下の画像は左が通常のMRIスキャン画像で、真ん中がAIで高速化されたMRIスキャン画像、右側が敵対的学習によって生み出された画像です。右側の画像は余分な斜線が消え、よりクリアな画像になっていることがわかります。


AIで高速化されたMRIでは人工的なスジが大きな課題となっているため、今回発表された手法は、FastMRIを臨床現場で使えるようにする一歩となる可能性があるとのこと。また最先端のMRIスキャナ「3 Tesla MRI」も人工的なスジを作りやすいという傾向が報告されているため、今回の技術が機能向上に役立つ可能性があると研究チームはみています。

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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