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大麻を使用すると「偽の記憶」が作られてしまい犯罪捜査における「信用できない証人」になる可能性がある


近年では世界的に大麻を解禁する風潮が強まっており、アメリカ・カリフォルニア州などではオシャレな店舗で合法的に大麻を入手することができます。そんな中、オランダやアメリカの研究者らが実際に大麻を使用した被験者を対象に行った実験によって、「人は大麻でハイになっている最中に『偽の記憶』を作り出してしまいやすい」と判明しました。

Cannabis increases susceptibility to false memory | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2020/02/04/1920162117

Getting high on cannabis makes people vulnerable to 'false memories' | Live Science
https://www.livescience.com/cannabis-use-linked-to-false-memories.html

オランダのマーストリヒト大学で神経心理学や精神薬理学を研究するLilian Kloft氏は、大麻の使用がより一般的になると、刑事事件を捜査する当局が「大麻の使用が人の記憶にどのように影響するのか」を理解することが重要になると指摘。「大麻はアルコールやニコチンといった物質に次いで、世界中で広く使用されている薬物です。証言に基づいた捜査方針を形成するにあたり、捜査当局は麻薬が証人の記憶、報告にどのように影響するのかを知る必要があります」と、Kloft氏は科学系メディアのLive Scienceにメールで語りました。


Kloft氏らの研究チームは、大麻でハイになった人と通常の人で記憶にどのような違いがあるのかを調べるため、オランダで64人の被験者を募集して実験を行いました。1つ目の実験ではDRMパラグラムという単語記憶テストを、半数の被験者は大麻でハイになった状態で、もう半数が大麻を服用していない状態で実施したとのこと。

DRMパラグラムとは、まず最初に「疲れた」「枕」「ベッド」「いびき」といった一定の関連性を持つ単語のリストを記憶してもらい、その後で別の単語リストをから最初のリストにあった単語を探してもらうというもの。2つ目の単語リストには、最初のリストとは全く関連のない単語だけでなく、最初のリストにあった単語と関連性の高い「ルアー」と呼ばれる単語が含まれています。たとえば、最初のリストに「枕」「ベッド」など睡眠に関連する単語が含まれていた場合、2つ目のリストには「昼寝」「目覚まし時計」といった単語がルアーとして含まれる可能性があります。

実験の結果、大麻でハイになっている人も通常の人も、「ルアー」の単語を「最初のリストにあった」と申告しやすいことが判明しました。それだけでなく、大麻でハイになっている人は「トマト」のように最初のリストとは全く関係ない単語も、「最初のリストにあった」と証言しやすかったそうです。


さらに研究チームは2つ目の実験で、実際の犯罪捜査により近い条件で大麻の影響を調査するため、「VR空間で架空の事件の発生現場を再現し、被験者に見てもらう」という実験を行いました。VRシミュレーションでは駅構内でのケンカ、飲食店での置き引きといった事件が再現され、被験者の半数はVRヘッドセットを装着する前に大麻を服用し、残りの半数は大麻を服用せずに架空の事件を目撃しました。

VRシミュレーションの直後に行われた聞き取り調査では、大麻でハイになっていた人もそうでない人も、どちらも同程度の詳細さで証言を行いました。しかし、インタビュアーがわざとVRのシミュレーションには登場しなかった「黒いコートの男」や、「ケンカの当事者はナイフで武装していた」といった「偽の情報」を含んだ質問を行った場合、大麻でハイになっていた人は実際にその場面を見ていないにもかかわらず、「自分はその光景を見た」と答えがちだったとのこと。

Kloft氏は、「大麻の影響下にある人は、本来起こった出来事とは関係のないものについて、誤った記憶を証言するリスクが高いことが示されました」「大麻でハイになった人々は、記憶が不確かな出来事について『はい』と答えがちなバイアスがあるように見えます。このバイアスにより、大麻でハイになった人はランダムで不確かな証言者になってしまいます」と述べています。


大麻を使っている人は、実際には知らないはずの情報や発生しなかったイベントについての断片を「思い出す」ことにより、刑事事件の捜査を間違った方向に向かわせてしまう可能性があります。たとえば、会社の従業員の多くが出席した会議において、本当はいなかったはずの従業員について「参加していた」と証言するかもしれません。また、「警察は黒い服の男が犯人だとみているらしい」といった外部の情報を耳にした場合、「犯行現場の近くで黒い服の男を見たかもしれない」と証言する可能性もあるとのこと。

研究の共著者であり、カリフォルニア大学アーバイン校ロースクールで心理学および法学の教授を務めるエリザベス・ロフタス氏は、小さな子どもや精神障害を持つ人など、特定の証人は証言の信用度が低いとして特別な注意を払う必要があると指摘。「おそらく、大麻でハイになった証人は信用度の低いグループに入るべきでしょう」と、ロフタス氏は述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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