太陽光発電のみで稼働する「地球に優しいウェブサーバー」はどんな構成なのか?
by Diego Marmolejo
太陽光は代表的な再生可能エネルギーであり、世界最大級のバッテリーを備えた巨大太陽光発電施設の建設開始や化石燃料と置き換え可能でコスト削減も望める太陽光発電の新技術の開発など、太陽光のエネルギーを利用し環境に配慮する取り組みは日々拡大しています。その一方、インターネットの普及によって二酸化炭素を排出するデータセンターなどが増加していくのも事実。そうしたインターネットによる環境への影響を取り上げるLOW-TECH MAGAZINEでは、太陽光発電による電力のみでウェブサーバーを維持し、ウェブサイトを運営しています。
How Sustainable is a Solar Powered Website? - LOW-TECH MAGAZINE
https://www.lowtechmagazine.com/2020/01/how-sustainable-is-a-solar-powered-website.html
LOW←TECH MAGAZINE
https://solar.lowtechmagazine.com/2018/09/how-to-build-a-lowtech-website.html
LOW-TECH MAGAZINEでは2018年9月から太陽光発電による電力でウェブサーバーを稼働させており、1年間でおおよそ80万ほどのユニークユーザーがウェブサイトを訪れたとのこと。そのウェブサーバーの構成を簡略化して表したものが以下で、Olimexのボードを使ったサーバー本体、鉛蓄電池のバッテリー、ソーラーパネル、制御装置が基本的な構成です。
バッテリーは最低でも、ソーラーパネルから電力が供給されない夜間にサーバーを稼働させられるだけの容量が必要です。また、天候が悪い日やバッテリーの経年劣化も考慮に入れた上で、バッテリーの大きさを決定する必要があるとのこと。
バッテリー容量の検証のために、1年間良好な天候のもとでサーバーを動作させ、バッテリーから消費した電力量を昼と夜の長さとともに記録したものがこれ。1時間あたりのサーバーの平均消費電力は1.97Wであり、夜の時間が短い6月は1日あたりのバッテリー電力消費が17.4Whで済んでいますが、夜の時間が長い12月はバッテリーから29.1Whもの電力を消費しています。
バッテリーとして使用している鉛蓄電池は性質上、充電量が総容量の半分以下になるのは望ましくありません。サーバーの稼働率100%を目指すため、実質的に84Whの電力が使用可能な168Whの容量を持つバッテリーを使用してみることに。理論上は約2日間バッテリーのみで動作できる構成であり、実際に1ヶ月間にわたり100%の稼働率を達成できたそうです。夜はサーバーをオフラインにするアイデアも検討しましたが、LOW-TECH MAGAZINEの責任者がアメリカとヨーロッパにいるため、時差を考え断念したとのこと。
サーバーの稼働率はバッテリーの容量だけでなく、ソーラーパネルの大きさによっても左右されます。
大きなソーラーパネルは発電量が大きいため、効率よくバッテリーを充電できます。ソーラーパネルの大きさとバッテリー容量の間の満充電にかかる時間の関係がこれ。理論上は、5Wのソーラーパネルでも15.6Whのバッテリーを2時間半で充電できるので、夜も少しの間はサーバーを稼働させることができます。しかし、いつも天候に恵まれるわけではないことを考慮に入れると、夜に使用する分の電力を昼間に充電するほどの発電能力はなく、太陽光が降り注ぐ間しかサーバーを稼働させられないのが実情です。
バッテリーやソーラーパネルのエネルギーロスやサーバーの維持にかかる電力をすべて合算し、サーバー全体が消費するエネルギー量を構成別にまとめた結果が以下。エネルギー消費とサーバーの稼働率のバランスを考え、現在のサーバー構成は50Wのソーラーパネルと86.4Whのバッテリーを使用しているそうですが、95-98%の稼働率でウェブサイトを運用できているとのこと。
実際に太陽光発電のみで運営されているウェブサイトは下記からアクセスできます。
LOW←TECH MAGAZINE
https://solar.lowtechmagazine.com/2018/09/how-to-build-a-lowtech-website.html
ページ上部には「太陽光発電により稼働しているので、時々オフラインになります」と注意書きされています。
太陽光発電により運用されているウェブサイトのページは、通常のウェブサイトのページよりシンプルなデザインを採用し動的なコンテンツを排除することで、サーバーの消費電力を抑えているとのこと。ページにはサーバーのバッテリー残量が表示されており、残量によってページの色が分かれています。
インターネットはますます電力を消費するようになっており、データセンターを再生可能エネルギーで稼働させるだけでは環境対策は不十分とのこと。安定的な電力供給が難しい再生可能エネルギーとインターネットをうまく共存させるためには、インターネットが常にオンラインでなければならないという考えを見直す必要があるとLOW-TECH MAGAZINEは述べています。
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