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過去5000年の歴史から分かる「2020年代の人類を襲う悪い出来事」とは?

by Comfreak

ビッグバンから現代まで」という非常に長い時間枠で人間の存在を探求する新しい学問分野を「ビッグヒストリー」と呼びます。そんなビッグヒストリーの研究者であるデイビッド・ベイカー氏が、過去5000年の間に勃興を繰り返した国々や文明の分析から導き出される、2020年代に発生する出来事をまとめています。

History repeats itself. That's bad news for the 2020s
https://theconversation.com/history-repeats-itself-thats-bad-news-for-the-2020s-127116

◆繁栄と衰退のサイクル
ベイカー氏がビッグヒストリーの研究に用いているのが、人間社会を構成する社会的勢力をモデル化して、歴史を科学的に分析するクリオダイナミクス(歴史動力学)です。クリオダイナミクスを使うと、過去に人類が経験した文明の「繁栄と衰退のサイクル」をモデル化することができるとのこと。

「繁栄と衰退のサイクル」の好例が古代ローマです。古代ローマは第二次ポエニ戦争が終息した紀元前201年ごろから成長と繁栄の時代を迎えますが、当初は貧富の差が小さく、エリートの数もわずかでした。しかし、時と共に古代ローマの人口が増加すると、土地を手放さなければならなくなる小作農が増加し、農地は多数の奴隷を抱えたエリートが運営するプランテーションに集約されていきます。こうして、古代ローマ社会における貧富の差はますます拡大し、大規模な内戦や奴隷の反乱が頻発するようになりました。

長い戦乱の時代を過ごした古代ローマですが、紀元前30年ごろにアウグストゥスがローマを平定し、共和制を終わらせると同時に自ら初代皇帝に即位すると、古代ローマは再び繁栄の時代を迎えることとなります。

by Cristina Gottardi

◆グレート・アクセラレーションとエリートの増加
ベイカー氏によると、近年の人類社会には良くない兆候が2つ見られるとのこと。そのうちの1つが「前世代が経験した成長の時代の終わり」です。1945年ごろから、人類は過去に例を見ないほどの急成長を遂げており、人口の爆発的な増加や加速度的な経済成長といった人類の活動の増大は「グレート・アクセラレーション」と呼ばれています。しかし、ベイカー氏は「近年では、至るところで賃金上昇の停滞、格差の拡大、裕福なエリートによる権力争いが見られます」と指摘し、成長を続けてきた人類社会が壁に直面しつつあることを示唆しました。

もう1つの悪い兆候が、「エリートの増加」です。ベイカー氏は「歴史を振り返ると、エリートが過剰に増加すると経済的・環境的な危機の時代が到来し、その後に社会政治的な不安定性と暴力の時代が訪れることが多いです」と指摘しました。

by Peter H

◆分裂の時代と「トリガーイベント」
ベイカー氏はさらに、2020年代はかつてない分裂の時代だとも指摘しています。例えば、アメリカやオーストラリアでは与野党が激しく対立する政治的分裂が続いていますが、ほかにも「ブラジルのジャイール・メシアス・ボルソナーロ大統領による政治的二極化」「インドにおける草の根会議派インド人民党の暴力的な対立」「多くの紛争をかかえる中国」など、人々の分裂や対立は枚挙にいとまがありません。

ベイカー氏によると、こうした状況下における衰退期は数十年単位にわたり持続するとのことですが、ものごとの転換点となる「トリガーイベント」が状況を一気に悪化させることもあります。例えば、12世紀のヨーロッパでは、生活水準の向上と人口の増加が見られましたが、その後に発生した大飢饉ペストの大流行という2つのトリガーイベントにより、非常に不安定な時代に突入しました。

ベイカー氏の予測モデルでは、トリガーイベントの後に到来する「恐慌フェーズ」では、世界人口の20%が命を落としてしまうとのこと。国連の推計では、2019年時点の世界の人口はおよそ77億人なので、約15億人ほどが犠牲になる計算です。

by ArtTower

◆技術的ブレークスルー
「繁栄と衰退」がこれまで何度も起きていると考えると、暗い未来は避けられないように感じますが、サイクルの歯止めとなる出来事も存在します。それが、「技術的ブレークスルー」です。例えば、11世紀半ばのヨーロッパでは、新しい土地開発の技法と農法が開発されたおかげで生産性が劇的に向上し、12世紀の繁栄の土壌を形成しました。

21世紀におけるブレークスルーは、たとえば安価なクリーンエネルギーを大量に供給できる核融合技術などが考えられるとのこと。もっとも、ベイカー氏は核融合発電が2020年代中に普及する可能性は低いとしています。


核融合分野では、世界35カ国が建造プロジェクトに参加する国際熱核融合実験炉(ITER)が2025年に稼働開始を予定していますが、あくまで実験用の核融合炉だと位置づけられています。

世界初となる商業規模の核融合炉が2025年に稼働を始める予定、日本を含む35カ国が協力 - GIGAZINE

by IAEA Imagebank

中国の「人工太陽」は、2020年中の運用開始が予定されています。

2億度のプラズマを生み出せる核融合炉「人工太陽」が2020年に稼働開始する予定 - GIGAZINE

by NASA Goddard Space Flight Center

ベイカー氏は2020年代の予測を総括して「環境危機・疫病・大不況などのショックが暴力の時代を招くトリガーイベントの発生率は『低~中程度』で、技術的ブレークスルーが発生する確率は『極めて低い』です」と述べて、2020年代の見通しは暗いものとの見方を示しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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