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世界初となる商業規模の核融合炉が2025年に稼働を始める予定、日本を含む35カ国が協力

by IAEA Imagebank

国際熱核融合実験炉(ITER)とは、核融合反応を利用した発電を行う核融合炉を実現することを目的とした、国際的な実験施設です。ITERは核融合炉の稼働に向けたマイルストーンを着実に達成していると発表し、6年半後の2025年に核融合炉の初稼働が行われる見込みだと述べています。

World's Largest Nuclear Fusion Experiment Clears Milestone - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/worlds-largest-nuclear-fusion-experiment-clears-milestone/

2019年7月23日、南フランスのカダラッシュにあるITERの建設現場において、協力する各国高官らが出席した部品の受け渡し式が行われました。ITERには日本に加えてEU各国やアメリカ、ロシア、中国、韓国、インドなど35カ国が参加しており、核融合炉の実現に向けて協力体制が取られています。

ITERが目指す核融合炉は原子力発電と同様に二酸化炭素の放出量が少なく、原子力発電よりも高レベル放射性廃棄物の排出量も減るなどの利点があります。核融合炉による電力発電が進めば化石燃料の必要性が減少し、間欠性や信頼性の欠如が問題視されている再生可能エネルギーによる発電を補うことが可能です。

by Pixabay

当局者によると、ITERの核融合炉はこれまでに世界中で製造された、どのような機械よりも複雑なものとなる見込み。ITERの核融合炉はトカマク型という方式を採用しており、超高温のプラズマを電磁石によって発生させた強力な磁場で閉じ込めるという仕組みです。

プラズマの温度は摂氏1億5000万度にも達し、この温度は太陽核の中心より10倍も高い温度となります。このプラズマを閉じ込めるために世界最大の電磁石が必要であり、さらにそれらを収容する巨大な炉壁などが必要となるとのこと。

ITERでは近年、核融合を収納するための断熱構造を持った装置であるクライオスタットの土台や下部シリンダーなどが設置され、着々と建造が進んでいます。ITER関係者は「インドで製造されたITERクライオスタットは1万6000立方メートルにもなります」「直径と高さはいずれも約30mであり、重さは3850トンです。クライオスタットは土台、下部シリンダー、上部シリンダー、上ブタという4つの主要セクションからなっています」と述べています。

by Bohdan Melekh

当局者によるとITERプロジェクトは記事作成時点で65%が完了しているそうで、広報担当者のSabina Griffith氏は世界初の商業規模の核融合炉プロジェクトが、2025年に稼働を始めるとコメントしました。しかし、2025年の時点では本格的な発電開始には至らず、三重水素を用いて施設をフルに稼働するには2025年からさらに10年かかるだろうとのこと。

今後もITERの建造は順調に進む見込みであり、重要部品であるポロイダルフィールドコイルがヨーロッパの貢献のもと中国から、真空容器が韓国から、トロイダルフィールドコイルが日本とヨーロッパから届くとのこと。部品の到着を待って、2020年春より本格的な組み立てが始まる予定です。

by SNC Engage

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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