サイエンス

核融合エネルギーの開発は今後どのように進んでいくのか?


かつて「実現不可能」と言われていた核融合エネルギーを利用した発電が、現実味を帯びてきています。今後数十年のうちに商用化が見込まれる核融合エネルギーですが、実際にはどのくらいのタイムスパンで研究が進んでいるのか、そもそもどのような研究が存在するのかを、natureが解説しています。

The chase for fusion energy
https://www.nature.com/immersive/d41586-021-03401-w/index.html

一般的な発電方法として、主に火力発電や原子力発電などが利用されていますが、気候変動の原因となったり環境汚染が問題になったりと、いずれも大きな欠点を抱えています。太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーの利用も増加しているものの、例えば太陽光は常に使えるエネルギー源ではないため、「安定したエネルギー供給ができない」といった課題が残っています。

上記のような背景から、エネルギー問題を解決する可能性があるものとして注目されているのが「核融合エネルギー」です。核融合エネルギーはかつて「実現不可能」と言われていましたが、技術の進歩により現実味を帯びてきました。これに伴い、国家機関だけでなく民間企業による開発も行われ、記事作成時点では世界30社以上の民間企業が核融合エネルギー開発に取り組んでいるとのこと。一方で「今後10年以内に核融合エネルギーの商業化が実現する」といった企業の見通しは投資家から資金を集めることを目的としており、民間企業に属さない研究者は「楽観的すぎる考え」だと評しています。


核融合の研究自体は1900年前半に始まったものであり、新しいものではありません。1950年代には核融合を利用した水素爆弾が発明され、それ以降、研究者は核融合をよりよく制御することでエネルギー生成を可能にする方法を追い求めてきました。

既存の原子力発電所はウランのような重い原子の「核分裂」を利用していますが、核融合エネルギーはその名の通り、水素のような軽い原子の原子核同士を高温・高圧の環境にさらすことで融合させエネルギーを取り出します。一般的なのは、水素の同位体である重水素(D)と三重水素(T)の原子核を融合させる方法。このとき、短命な中性子の形でいくらかの放射能が発生しますが、原子力発電のような長寿命の放射性廃棄物は生まれないため、核融合エネルギーは安全かつ環境への影響が小さいと言われています。


核融合エネルギーを実現するための大きな課題は、「太陽の中心よりも高い約1億ケルビンという温度で核融合により発生した帯電プラズマを反応器内にとどめる」という点にあります。多くの研究者は磁場を使ってプラズマを反応器内にとどめていますが、エネルギーを抽出するのに十分なほどプラズマをとどめることは至難の技といわれています。これらの実験は非常に大規模な施設と大量の資金が必要であるため、核融合エネルギー研究は必然的に国家プロジェクトが中心です。国際協力によって核融合エネルギーの実現を研究するITERが代表的なプロジェクトですが、ITERは最初の試運転が2025年、完全なD-T融合は少なくとも2035年になるとみられています。

世界初となる商業規模の核融合炉が2025年に稼働を始める予定、日本を含む35カ国が協力 - GIGAZINE


核融合エネルギーへの注目が高まり民間企業が関わることで得られた利点の1つは、核融合エネルギーへのアプローチが多様化したことにあります。もともと核融合エネルギーは「トカマク型」と呼ばれる方法が一般的でした。これは強力な超伝導磁石を使用してプラズマをリング状のコンテナに閉じ込めるもので、ITERでも採用されています。


一方、イギリスのTokamak Energyは、より小型の球状トカマク装置を開発することに成功。


TAE Technologiesは直線型のリアクターを開発。これはビーム駆動型の磁場反転配置を使用しています。


Amazonのジェフ・ベゾスCEOが投資するGeneral Fusion磁化標的核融合を採用したリアクターを開発しています。


また、ねじれたコイルを周回させて閉じ込め磁場を作るヘリカル型というものもあります。ヘリカル型は1950年代から考案されていたもので、プラズマを記述する方程式の解が複雑すぎるとして当時は注目されなかったのですが、スーパーコンピューターが利用可能になりアイデアが再検討されたというもの。現代では「プラズマの閉じ込めが容易である」という利点からドイツのヴェンデルシュタイン7-Xが採用されています。


国家協力によって成り立つITERに比べ、民間企業が開発する原子炉は小規模かつより安価なものになるという点に利するところがあります。一方で、ITERに比べて「より迅速な商業化」に力点を置いていることもあり、失敗のリスクも大きくなるとのこと。以下がITERおよび民間企業が計画する原子炉の開発プロセスで、紫色が民間企業、水色がITERを表しています。ITERの実際の稼働が2035年以降とされている一方、民間企業の多くは2035年までの商業化を目指しています。


民間企業と国家プロジェクトの双方が並んで進行することで、双方に利益が期待できます。国家プロジェクトは民間企業から研究・開発の情報を得ることができ、一方で民間企業も国家プロジェクトを基盤として技術を構築したり、政府からの支援を受けたりすることが可能であるためです。COVID-19のワクチン開発と同様に、官民がパートナーシップを結ぶことが前進の鍵だと考えられています。

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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