核融合発電所を15年以内に実現することを目指すMITの新たな研究がスタート
人間の生活に必要なエネルギーは、2018年現在、主に火力発電と原子力発電によって生み出されていますが、新たな発電技術として核融合のエネルギーを利用する「核融合発電」が研究されています。核融合発電について、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)が新たなフェーズに入ったことを発表しており、15年以内の実現を目指しているとのことです。
MIT and newly formed company launch novel approach to fusion power | MIT News
http://news.mit.edu/2018/mit-newly-formed-company-launch-novel-approach-fusion-power-0309
核融合発電は、事実上無限のエネルギーを持つ「太陽」に着目し、太陽内部で起こる核融合反応の仕組みを発電に利用するもの。「核」というと原子力発電を連想しますが、核融合発電は放射能問題も少なく、安全でクリーンなエネルギーになり得るとして注目されています。MITは核融合発電の研究を続ける施設の1つでしたが、2016年に政府からの資金援助が打ち切られたことが報じられました。
核融合発電の詳しい仕組みは以下の記事から読むことができます。
究極のエネルギー源「核融合エネルギー」を人類は実用化することができるのか? - GIGAZINE
しかし、新たな発表で、MITの研究者らはCommonwealth Fusion Systems(CFS)という民間企業と協力することを発表。3000万ドル(約32億円)の資金を受けた新たな計画が急速に進められており、次の15年で核融合エネルギーを実用化できる可能性が示されています。
研究チームの最終目標は、トラックに搭載できるくらいコンパクトでありながら1億ワットのエネルギーを生み出すトカマク型の原子炉を作ることだとのこと。しかし、このような原子炉を作るにはまず「世界で最も強力な超伝導電磁石」を開発する必要があり、MITはCFSから資金援助を受け、次の3年でこの第一段階を完了させる見込みです。
「発展的な超伝導電磁石の存在は、安全で炭素排出のない未来のエネルギーの可能性を、現実的なものにします」とMITの代表であるL. Rafael Reif氏は語りました。
MITの研究者らが開発しようとしているのは、イットリウム系超伝導体と呼ばれる素材から作られる、既存の4倍強力な超伝導電磁石。研究者らは、Sparcと呼ばれる原子炉のプロトタイプにこの超伝導電磁石を適用すれば、安全で継続可能な炭素排出ゼロのエネルギーを、小さな街をカバーできるほどの規模で生み出せると考えています。
そして計画通りにSparcが動けば、2倍の規模に拡大し、商業的に利用することを視野に入れている模様。このような世界初の核融合施設は15年以内の開発が見込まれているそうです。
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