核融合実験炉「ヴェンデルシュタイン 7-X」が高温・高密度プラズマの世界記録を達成
by Max-Planck-Institut für Plasmaphysik
マックスプランク・プラズマ物理学研究所が開発するヘリカル型核融合実験炉「Wendelstein 7-X(ヴェンデルシュタイン7-X)」が、より高温でより高密度のプラズマ生成し、より長いパルス長を実現した点でテラレーター型核融合炉の世界記録を達成しました。究極の発電技術である核融合発電の実現に向けて、とても良好なスタートを切ったとのことです。
Magnetic configuration effects on the Wendelstein 7-X stellarator | Nature Physics
https://www.nature.com/articles/s41567-018-0141-9
Wendelstein 7-X achieves world record | Max-Planck-Institut für Plasmaphysik
http://www.ipp.mpg.de/4413312/04_18
2015年・2016年の最初の試験フェーズを経た後、ヴェンデルシュタイン7-Xのプラズマ容器の内壁に「グラファイトタイル」による保護壁が設置されました。この被膜によって、より高温で長時間のプラズマ放電が可能になりました。タイルで覆われた内壁はねじれ構造を持つことで、プラズマリングの端の衝突を避けることで保護力が高まっているとのこと。
初期フェーズでは最大6秒だったパルス長は、現時点で最大26秒にまで延長されており、75メガジュールの熱エネルギーをプラズマに供給できているとのこと。長時間のプラズマ生成はダイバータがなかった初期フェーズに比べて18倍も高い熱エネルギーを供給できており、高いプラズマ密度の実現の前提条件が整いつつあります。この結果についてトーマス・サン・ペデルセン博士は、「保護壁の改良の結果は、非常に肯定的なものです」と述べています。
そして、好条件のプラズマ生成によって、イオン温度は4000万度、イオン密度は1立方メートルあたり8000京(0.8×10の20乗)個で、核融合積としては600じょ(6×10の26乗)℃・s/m³の世界記録を達成。ベデルセン博士によると、ヴェンデルシュタイン7-Xのサイズの装置によって現実的な条件下で達成される結果としては素晴らしく価値の高いレベルだそうです。
ヴェンデルシュタイン7-Xについては2015年12月から2016年3月までの初期フェーズの実験データの評価が完了したことで、「最適化」策が効果を発揮することが証明されたとのこと。今後はより高い加熱力と高いプラズマ圧力の下での実験で、より正確かつ系統的な評価が行われる予定です。
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