安価でコンパクトな核融合反応器をMITが考案し、10年以内の実用化に期待

「石油は40年で枯渇する」というのと同じくらいまことしやかに語られる「核融合炉は30年で完成する」という"格言"があります。なかなか完成しない核融合炉ですが、MITの科学者が10年以内に実用化できる新しい反応器「ARC」を考案しました。
ARC: A compact, high-field, fusion nuclear science facility and demonstration power plant with demountable magnets
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0920379615302337
New design could finally help to bring fusion power closer to reality
http://phys.org/news/2015-08-fusion-power-closer-reality.html
MITのD.G.ホワイト博士らの研究チームは、高磁場コイルを使ってプラズマを制御することで、従来のトカマク型の反応器を大幅にコンパクト化した新型の「ARC」反応器を考案しました。なお、ARCとは「affordable(安価)」「robust(頑丈)」「compact(コンパクト)」の頭文字をとったものです。

ARC反応器はREBa2Cu3Oy(REBCO)超伝導体テープを用いることで高い磁場を発生させるコイルを持ち、従来のトカマク型反応器に比べて大幅に小さい反応器内で核融合反応を起こすことが可能。コンパクト化によるメリットは、システム構築費用自体を大きく抑えるという省コスト化だけでなく、設計の自由度を高め、核融合炉の実用化に向けた開発スピードを大幅に高めると考えられています。
また、「新開発の超伝導体テープで作られたコイルは、高い磁場を発生させられることから、標準的なトカマク型核融合炉に比べて10倍の発電量が可能である」とARC開発チームのB.N.ソルボム氏は述べています。
超伝導体テープを持つ、ARC開発チームのソルボム氏。

また、ARC反応器には核融合チャンバーを取り囲む固体ブランケットを循環させて容易に交換可能な液体に置き換える冷却システムがあるため、熱で過酷な環境にさらされて交換費用のかかる固体ブランケットの交換作業を排除できるという利点もあるとのこと。
ARC反応器は半径3.3メートルの磁場内で500MWの核融合エネルギーを発生させられるように設計されており、現在フランスで建設中の国際熱核融合実験炉「ITER」に比べて直径のサイズが半分のARC反応器は、同じ電力をより少ない費用と開発時間で達成できるだろうとMITのARC開発チームは考えています。
ARC反応器の開発は、よりデザインを洗練させ技術的な詳細を詰める段階であり、すでに政府関係機関や個人投資家から資金を集めるという次のステップに入っているとのことで、夢の発電手段である核融合炉の10年内の実現のために、今後の開発動向が注目されそうです。
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