Bluetoothの次世代音声規格「Bluetooth LE Audio」が発表される、低電力で高品質ながら複数機器での再生も可能に

by Jaz King

近距離無線通信規格のBluetoothを管理するBluetooth SIGが、オーディオ機器の接続通信規格であるBluetooth Audioの次世代規格として「Bluetooth LE Audio」を、世界最大級の技術見本市であるCES 2020で発表しました。

LE Audio | Bluetooth Technology Website
https://www.bluetooth.com/learn-about-bluetooth/bluetooth-technology/le-audio/

CES 2020: Bluetooth SIG Announces LE Audio Standard: New Baseline For Next Decade
https://www.anandtech.com/show/15349/bluetooth-sig-announces-le-audio-standard-new-baseline-for-next-decade

Bluetooth LE Audioは、Bluetoothの低消費電力通信モードであるBluetooth Low Energy(LE)を使った規格です。新しいオーディオコーデックであるLow Complexity Communications Codec(LC3)を採用することで、Bluetooth LE Audioは従来と比較して低ビットレート時でも音質が向上するとBluetooth SIGは述べています。また、Bluetooth LE Audioは電力消費も抑えられるため、製品のバッテリー寿命をより長くしたり、バッテリーを小型化したりすることが望めるとのこと。

そして、Bluetooth LE Audioの大きな特徴の一つが、「マルチストリームオーディオを可能にする」という点です。

従来のBluetooth接続では、音源を再生するスマートフォンなどのオーディオソースデバイスには、イヤホンやスピーカーなどのオーディオシンクデバイスは1つしか紐付けられません。そのため、左右分離型の完全ワイヤレスイヤホンでは、「デバイスとBluetoothで接続した片方がもう片方に信号を中継する」という方式が採用されていました。

しかしBluetooth LE Audioが導入されれば、左右のイヤホンに独立して信号を伝えることができるようになるので、ラグが軽減され、ワイヤレスイヤホンからの音声アシスタントサービスの利用もよりシームレスなものになるとのこと。

by vinny1987

また、Bluetooth LE Audioでオーディオソースデバイスが接続できるオーディオシンクデバイス数に制限はないとのこと。そのため、スピーカーやイヤホンを変更する度に接続設定を行うことなく、スムーズに切り替えが可能になり、スマートフォンの音楽を家族や友人と共有することが可能になります。また、空港やバー、ジム、映画館などの公共施設でBluetooth LE Audioによるオーディオ共有を行うことで、難聴者のサポートや複数言語音声の提供が可能になると期待できます。

by pb826

さらにBluetooth SIGは、Bluetooth LE Audioの低消費電力・高品質・マルチストリームオーディオによって補聴器が大きく進化すると述べています。Bluetooth技術の登場により、現代の補聴器は非常にコンパクトでスマートなものとなりましたが、Bluetooth LE Audioを導入することで、補聴器のさらなる小型化や音質向上を図ることが可能となります。

Bluetooth SIGは「Bluetooth LE Audioを定義するBluetooth仕様は2020年前半にリリースされる」とコメント。また、「2021年後半から2022年にはBluetooth LE Audioをサポートする製品が市場に出回るだろう」とBluetooth SIGは予想しています。