ドローンで災害救助要請を自動認識する「DroneAid」の仕組みが画期的
By Mitch Nielsen
ドローンはヘリコプターや衛星と異なり、安価ですばやく航空写真やムービーを撮影できることから、災害救助などの場面で重要な役割を果たすツールとなりつつあります。そんなドローンを使用して、ドローンによって撮影されたムービーから、被災者のSOSメッセージを認識する「DroneAid」のオープンソースライブラリをIBMが公開しています。
Automate post-disaster checks and foster offline communication – IBM Developer
https://developer.ibm.com/patterns/automate-post-disaster-checks-and-foster-offline-communication/
DroneAid/README.md at master · Code-and-Response/DroneAid · GitHub
https://github.com/Code-and-Response/DroneAid/blob/master/README.md
◆DroneAidとは?
IBMによって公開されたDroneAidは、航空写真から検出したSOSメッセージを表すシンボルを認識します。DroneAidはオープンソースの画像注釈ツール、Cloud Annotationを使用して視覚認識の学習を行い、オブジェクト検出機能を使用して「SOS」などのシンボルを識別します。
記事作成時点でDroneAidが認識するシンボルは以下の画像の通り。被災者は、以下のシンボルキットを使用するか、チョークなどで地面や紙に各シンボルを描くことで助けを求めることができます。記号は国連人道問題調整事務所(OCHA)が提供するアイコンを参考に作られています。
SOSと書かれたシンボルは、重傷者がいる場合など、すぐに助けを必要としている場合に使うシンボルです。
大きな被害がなく、被災者が全員生存しており特に助けが必要ない場合は以下のシンボルを使用します。
水滴のシンボルは水不足を伝えるためのものです。
麦のような絵が描かれたシンボルは、食料不足を伝えるためのシンボルです。
以下のシンボルは、建物の倒壊で被災者が避難する場所がなくなるなど、避難所が必要であることを示します
救急箱は、被災地域に負傷している人がおり、応急処置を必要としていることを伝えるシンボル。
赤ん坊のような絵が描かれたシンボルは被災地域に幼い子どもがいるという意味。
杖をつく人物が描かれたシンボルは被災地域に老人がいることを表します。
ドローンによって撮影されたSOSメッセージを含むムービーは、PC側のウェブアプリがストリーミングでキャプチャし、キャプチャ画像から得られたSOSメッセージをウェブアプリで集計するという仕組みになっています。
◆DroneAidが誕生したきっかけ
DroneAidが生まれた経緯についてを、開発者であるペドロ・クルーズ氏が以下のムービーで語っています。クルーズ氏はプエルトリコで行われたCall for Codeのハッカソンで、DroneAidを開発したことにより優勝した人物です。
Call for Code: Introducing DroneAid, Puerto Rico hackathon winner - YouTube
クルーズ氏は、2017年9月に発生したハリケーン・マリアでの経験からDroneAidのアイデアを思いついたとのこと。クルーズ氏はハリケーン・マリアが去った後、祖母の生存を確認するため祖母の家を訪ねようとしたところ、ハリケーンの被害で道が通れなくなっていることに気がつきました。
クルーズ氏は、自身が所有していたドローンを祖母の家まで飛ばし、幸いにも祖母の無事を確認することができました。しかし、その道中で、クルーズ氏は各地で水や食料を求めるSOSメッセージを発見しました。スペイン語で「AGUA」は「水」、「COMIDA」は「食料」を意味しています。
被災者のSOSメッセージを見て、クルーズ氏は、光学文字認識によってドローンでSOSメッセージを自動認識するアイデアを考えました。手書き文字を正確に検出することは難しいため、SOSメッセージを標準化して汎用言語となるようなシンボルを考案したとのこと。
クルーズ氏は、マットのようなものにプリント、または手描きしたシンボルを、災害時に道路や屋根などに置いてもらうことを想定しています。マットの左側にはシンボル、右側には世帯や地域に住む人の数が書かれています。
クルーズ氏は、「地域の住民がDroneAid用のマットを持つことが標準化されるよう、災害が起きる前にシンボルの意味やマットの使い方を市民に公開したいと考えています」と語っています。
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